熱心なメタルファンとして知られるジャズピアニストの西山瞳さんによる連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。今回は、メタルをルーツに持ちながらプロのジャズメンとして活動する方々にインタビューをする人気企画の第3弾です。輝かしい受賞歴やJ-Popシーンでの活躍でも知られるギタリストの鈴木直人さんが、激動の音楽人生を語ってくれました。 *Mikiki編集部

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鈴木直人

今月は、メタルを通過してプロで活躍するジャズミュージシャンへのインタビュー、3回目です。

今回は、ギタリストの鈴木直人さん。
プロとしてのキャリアの初期に〈ギブソン・ジャズ・ギター・コンテスト〉で優勝という経歴をお持ちですが、ジャズ以前にギターそのものの格好良さが飛び越えてきて、メタルのギターを聴く時と同じワクワク感を持って聴いてしまう、本当に素晴らしいギタリストです。最初に演奏を聴いたのは、名古屋のフェスで徳田雄一郎RALYZZ DIGのバンドメンバーとして。なんだかんだで、ライブハウスやフェスですれ違いはするのですが、共演はまだありません。なんというか、ギターヒーローとして聴いていたい……。
そんな明らかにメタルを通過している演奏をしている鈴木さんに、〈どういう経緯でジャズのプロミュージシャンになったんですか?〉と訊いてみました。


 

ピアノ、バイオリン、ドラムから楽器屋で速弾きを目撃しギターへ

――楽器を始めたきっかけは?

「ギターは中学1年の時からなんだけど、母親がピアノの先生で、4歳の頃から無理やりピアノをやらされていて。そんなに好きじゃなかったけど、結局ショパンぐらいまで弾けるようになったから、結構長く、嫌々ながらちゃんとやってたところがあった。

あとは、バイオリンを見せられたのがきっかけで弾いてみたくなって、バイオリンを1年生から4年生の間にやってたよ。

父親の方はサラリーマンなんだけど、昔からフュージョンマニアで、ドラム、ベース、ギター、ピアノ、作曲、全部独学でやっていて、『ジャズライフ』(雑誌)のバンドコンテストで79年か80年に優勝してたりするの。会社でも軽音楽部を主宰していて、自分もそこに呼ばれてバイオリンを弾かされて、マハヴィシュヌ・オーケストラとかをやらされたりしてた、小4で(笑)。結構好きだったよ。

父親が家で聴く音楽は、ポップス以外ではパット・メセニー、チック・コリアとかハービー・ハンコック、マイケル・ブレッカーとか。その辺の音楽が常にかかっていて、俺に聴かせるつもりじゃないんだけど、俺も好きで聴いていたんだよね。メセニーの『American Garage』(80年)とか、すごい印象残ってる」

パット・メセニー・グループの80年作『American Garage』収録曲“Airstream”

――そこからどういう経緯でギターを弾くことになったのですか?

「ギターを弾く前に、ドラムを叩くきっかけがあって。小学校は公立だったけどドラムセットが置いてあって、6年生の時に触りに行ったら、音楽の先生が昼休みに8ビートを教えてくれたんだよね。その流れで、ラッキーなことに中学に軽音楽部があって、ビートルズとかバンドっぽいこともやってたから、そこに入ったの。

一緒に入った友達がエレキギターをやりたいって言って、〈買おうぜ〉ってことになって、立川の楽器屋に俺の親父と3人で行ったのね。そうしたら、店員の兄ちゃんが、突然小さいアンプでギュインギュインに歪ませた爆音で、ダカダカダカダカダって速弾きをやって見せてくれて、超ビックリして、〈かっけえ!〉ってなって。それが目覚め」

――そういう音楽は、お家ではかかってなかったんですか?

「メタルは聴いてなかった。スクェア(T-SQUARE)とかカシオペアは親父が聴いてたけど、わりとまろやかな歪みがエレキギターの音だと思ってたから、店員の兄ちゃんの演奏に超びっくりしたんだよ。低い音だし。それで〈絶対買う! このアンプとこのギターがいい!〉って言ってね」

 

「ヤング・ギター」に載ってるフレーズを片っ端から練習した

――最初はどういうものを演奏していたのですか?

「BOØWYとかZIGGYとかJUN SKY WALKER(S)から入って、そのうちヤンキーの先輩たちがどんどんガンズ(・アンド・ローゼズ)とかのCDを貸してくれたの。

最初に軽音楽部でやってたのは、ヨーロッパの『Out Of This World』(88年、『The Final Countdown』の次の作品)。キー・マルセロ(ギター)が格好良くて、超上手くてさ。

ヨーロッパの88年作『Out Of This World』収録曲“Superstitious”

あとはミスター・ビッグのファーストアルバム『Mr. Big』(89年)。先輩たちが“Addicted To That Rush”とかを聴いていて、〈なんじゃこりゃ〉って興味を持って。ガンズとモトリー・クルーのCDも貸してもらって、それで大分弾けるようになった。

ミスター・ビッグの89年作『Mr. Big』収録曲“Addicted To That Rush”

中1の終わりに〈3年生を送る会で演奏していい〉って機会があって、その時に“Sweet Child O’ Mine”(87年、ガンズ・アンド・ローゼズ)は全部弾いたな」

ガンズ・アンド・ローゼズの87年作『Appetite For Destruction』収録曲“Sweet Child O’ Mine”

――今までインタビューした人は皆、最初の感触として〈意外と弾けた〉っていう記憶があるのが共通しています。

「なるほどね。自分の場合、一緒に買った友達がいたんだけど、俺の方がどんどん弾けるようになっていくから、〈向いているかも〉って思っちゃった。先輩で上手い人もどんどん抜いていった実感があって、それは大きなモチベーションになったかもしれない」

――その頃、どんな練習してたんですか。

「たぶん、自分の成長とギターの技術の向上において、『ヤング・ギター』(雑誌)がとても大事だったと思う。すごく練習したのが、『ヤング・ギター』に沢山載っているフレーズ。細かく断片的に色んなフレーズが載ってるから、それを片っ端から練習して。ゆっくりしたテンポでスウィープピッキングをするとか、それを3日間やり続けて3日目にやっと見えてくるみたいな、そんなことをやったりしてたな」

――クラシックをやっていたおかげで、譜面も読めるでしょうし、すでに練習自体に慣れていたんでしょうか。

「当時の譜面ってタブ譜も音符も間違っていることが結構あって、〈このフレーズは絶対こんな運指では弾けない〉っていうのがあったから、それを突き止めて弾くのも趣味みたいになってた。〈譜面を読む〉っていうよりは、耳コピと楽譜でぼんやり、みたいなバランスで。

『ヤング・ギター』は、ミュージシャン本人のインタビューとか写真と解説がついているから、信憑性があるでしょ。〈難しいから無理〉って思うけど、〈本人が弾いてるから練習してやらなきゃ〉って思ってやってたよ」

 

師 鈴木よしひさとの出会い

――高校の頃はどうでした?

「私立の男子校に入学して、一から友達を作らないといけなくて、入学してすぐギターを弾いてる子を3人ぐらい、〈バンドやろうぜ〉って仲間にしたのね。それでリハーサルを始めて。

ある時、学校の講堂の扉を開けたら、すごく速いフレーズが聞こえてきたの。〈これ何? 音が滑らかできれいだからキーボード?〉と思って入っていったら、先輩がギターで速弾きしてて、〈これはやばい〉と思った。それをきっかけに、その先輩とレーサーXのコピーバンドを始めたの、ボーカルとベースとドラムを見つけて。

で、その先輩がヤマハの教室(ヤマハポピュラーミュージックスクール)で習ってるっていうので、ヤマハに行ってみたら、鈴木よしひささん(ジャズギタリスト、ポリパフォーマンスで有名)がいたんだよ。この出会いは本当にラッキーだったと思う。色々と習うことができて、ジャズフュージョンの扉まで開けられたのは、よしひささんのおかげ。

メタルはそのまま続行してやり続けてたし、レーサーXのコピーバンドでライブハウスでもライブはやってたよ」

――その頃、周囲はメタルって聴いてました?

「高校には長渕(剛)にハマってるやつとかパンク系しかいないと思ってたんだけど、レーサーXを一緒にやってた先輩の周囲はゴリゴリのメタラーばっかで、パンテラとかを教えてもらって、〈やべえ!〉ってなったんだよ。

それこそ1年生の時、学園祭のオーディションの時は皆ミスター・ビッグとかを結構ソフトな感じでやってたのに、本番になったら照明と音響をガチで入れてて、照明フラッシュ状態の中ツーバスで〈ダカダカ!〉、やばいボーカルの人たちが〈ウワーー〉ってデス系で歌ってて、〈これは!〉と思って、空手部から軽音に転部したんだよね」

――(笑)。同時に習っていた鈴木よしひささんのレッスンのことを聞かせて下さい。

「15歳から20歳ぐらいまで習ってたんだけど、自由に弾けることが憧れで、アドリブを習いたかったんだよね。よしひささんがその時に練習してるもの――“Falling Grace”とか“Giant Steps”とかの譜面をいきなり渡されて。突然カウントを出されても弾けなかったし、〈お前、こんなのをすぐ弾けないとプロになれねえぞ〉って言われたりしてたね。ギターデュオ形式でセッションみたいなことを、週1回ずっとやってた。ちゃんとスケールとかコードの話もしてくれて。レッスンに行かなくなってからも、一緒にライブをさせてもらったりしてたよ」

 

オルタナの勃興とドラマーとしての活躍、本気で取り組んでいた〈走り屋〉

――即興音楽への興味は、どこが入り口だったんでしょう。

「ジャムるのは、ギターを持っている友達同士でやりあってたよ。コードチェンジはない状態で、ペンタトニック(スケール)とかブルースフィーリングのあるフレーズとかを沢山使いまわして組み合わせて、コピペみたいな感じで弾いて。

その後、ヤマハの専門学校に行って、理論を教えてくれる先生もいたから、その人の授業でちゃんと勉強した」

――ジャズでライブをするようになるまでには、まだもう少しエピソードがある感じですか。

「まだある。

ヤマハ音楽院に入った時に、ロックシーンはヘヴィメタル/ハードロックが一気に終わっちゃったタイミングで。自分はニルヴァーナとかレッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)も好きだったし、アリス・イン・チェインズとかサウンドガーデンとか好きなバンドはそのまま沢山残ってて、レディオヘッドも超好きだったんだけど、ヤマハ音楽院全体がオルタナティブロックブームになったんだよね。で、ギターが技術じゃなくてアイデア勝負になって、〈いかに今まで皆が聴いたことのない音を出すか〉って方向に向いていたから、〈それは俺じゃない方がいいな〉って思って。

だから、面白いギタリストを捕まえて、自分はドラムを叩いてたんだよ。俺はギター科だったけどドラムも結構上手かったからドラムでバンドを結成して、それで10年ぐらい、30歳ぐらいまで活動してたの。ラップボーカルとベースとツインギターとドラムで、ミクスチャー的な音楽性で、ゴリゴリしてる曲はそんなに多くなくて。それはLiquidFunkっていうバンドなんだけど、インディーズで2枚CDを出して、イベントで勝ち上がってZeppで演奏したこともある」

LiquidFunkの2009年作『FuturePlayer』収録曲“バンドサウンドとマイカフォン”

――ギターは全然弾いてなかったんですか?

「時々、ツアーやレコーディングとかサポートの仕事があれば弾いてた。それぐらいしかやってなかったかな。ドラムはジャズじゃないし、ポップスとかロックの流れでずっと続けてたって感じかな。

実は25、26歳までの間、車をチューンナップして峠で走るっていう走り屋も本気でやってたの、かなりガチで。けど、〈やめなきゃ〉と思ったタイミングがあって。修理でお世話になってた町工場がレースにも参加していて、〈シートが空いてるから、お前乗るか?〉って言われた時に、我に帰ったんだよね。〈いやいや、レーサーとして基礎的なトレーニングを積んだり教育を受けたわけじゃないし、こんな程度でプロのレーサーになって挫折するのは目に見えてるし、俺、何やってるんだろう〉って、やっとその時になって思って。

その点、ギターは専門学校まで出てるし、音楽の基礎的な素養もあるから、〈ちゃんとミュージシャンをやらなきゃ〉って思って、〈ギブソン・ジャズ・ギター・コンテスト〉に出たの。それが2004年。

20代は車にかけたエネルギーが多くて、ミュージシャンの皆がセッションに行ったり修行してた時間は全て奥多摩の峠に行ってたから、精神的には音楽は一旦休止状態だったんだよね。メタルに興奮していた時は熱中して練習していたけど、それが世間としては終わってしまったことで、自分もその影響で情熱的になれるものがなくなって、音楽に対して真剣に心が躍る状態になってなかったというか。それが、徐々に仕事として戻ってきて、そこからまたジャズで格好良いギタリストを発見して研究し始めて」

 

ビレリ・ラグレーン、フランク・ギャンバレとアラン・ホールズワース、スコット・ヘンダーソン……

――当時、ジャズギタリストとして、凄いと思ったギタリストはどんな感じでした?

「対バンで仲良くなった子がラッパーとしてメジャーデビューしたんだけど、トラックはジャズの方がいいってことで、それでジャズ系の仲間を集めてジプシースウィングみたいなものとかを研究してやってみたりしたの。そこで、ビレリ・ラグレーンにたどり着いて、掘り下げれば掘り下げるほどアルバムごとに(音楽性が)全く違うから、〈やべえ、なんでも弾けるのか、この人〉ってびっくりして。

ビレリ・ラグレーンのライブ動画

それ以前にも伏線はあって、中学2年の時に親父に〈お前、ギターをやるんだったらこれを聴け〉って渡されたのが、フランク・ギャンバレとアラン・ホールズワースのMVPのアルバムで。〈一生弾ける気がしない〉って思ったね。

MVP(マーク・バーニー・プロジェクト)の90年作『Truth In Shredding』収録曲“Humpty Dumpty”

あとはチック・コリア・エレクトリック・バンドのスコット・ヘンダーソンが好きで、今でも大好き。トライバル・テックとかね。

チック・コリア・エレクトリック・バンドの86年のライブ動画

トライバル・テックの95年のライブ動画。トライバル・テックはスコット・ヘンダーソンとベーシストのゲイリー・ウィリスが84年に結成したフュージョンバンド

以前、『ギター・マガジン』で〈パット・メセニーをどう思いますか?〉って50人ぐらいに訊くインタビュー企画があったんだけど、スコット・ヘンダーソンが〈メセニーが好きか嫌いか、yes or noで訊かれたら、答えはnoだ。なぜならば、ハッピーすぎるから。俺はもっとダークでエッジの効いたサウンドが好きなんだ〉って言ってて、〈わかる!〉って思ったな」

――わははは(笑)。私もトライバル・テックは好きでよく聴いていました。

「ガンズの悪さとか、メガデスの悪さとか、同じものをスコット・ヘンダーソンには感じてて、そういうのが俺は好きなんだなって思う。

ジャズは、ジャンル的にどうしてもハーモニーもリズムも複雑でロジカルになってしまうけど、自分にとってそれはあまり問題じゃない。聴き手としては全体のイメージで聴いているんだよね。弾けなきゃいけないんだけど、難しさは優先ではないんだよ」

 

鈴木直人がジャズリスナーにお勧めするメタル

――鈴木さんの演奏を聴いていて、ジャズギタリストという以前にギタリストとしてとっても魅力的で楽しいと感じるのは、そういうところが理由なんでしょうね。それでは、この質問は毎回訊いているのですが、鈴木さんの視点で、ジャズリスナーにお勧めするメタルのアルバムを教えてもらえますか。

「(即答で)メガデスの『Rust In Peace』(90年)。

中2の時、MTVとかスペースシャワーでひたすら“Holy Wars(... The Punishment Due)”が流れてて、〈すげー〉って思ってたの。

メガデスの90年作『Rust In Peace』収録曲“Holy Wars... The Punishment Due”

マーティ・フリードマンは当時確か27歳か28歳だと思うけど、大人になって聴くと、ソロが5拍子をまたいだり、マイナー(キー)なのにメジャーサードを弾いたりとか、格好良いことしかやってないって気付くんだよ。27歳のメタルのギタリストがこういうアイデアを持ってたっていう耳で、聴いてみてほしい。今、コンテンポラリーなジャズギタリストがやってることなんて、90年代にメタルの若者がやってたんだよって。

メタルの人って同じ弦で2、3音をデケデケやることが多いけど、トライアド(3和音)とかコードトーンを沢山使ってるから、跳躍が多くて(音が)広がってるんだよね。ジャズギターを志す人にも、あの頃のマーティ・フリードマンを聴いてほしいと思う。

それから、滅茶苦茶好きなのはパンテラ 。『脳殺(Far Beyond Driven)』(94年)、ドリルが刺さってるやつね」

パンテラの94年作『Far Beyond Driven』収録曲“I’m Broken”

――あのギザギザ刺さる攻撃的なギターのサウンドって、格好良いですよね。私も高校の時、よく聴いてました。

「中域を少しカットしてるけど、メタリカよりちょっと高めのところをカットしてるみたいで、音がより冷たくなるというか、ずっしりするよね」

――そういえば以前、ヌーノ・ベッテンコート目当てで2017年のジェネレーション・アックスのライブを聴きに行ったって言ってましたね。

「ヌーノ・ベッテンコートは、すごく好きだった。エクストリームのセカンド(90年作『Pornograffitti』)にハマって。サウンドが素晴らしいんだよね。あと、『III Sides To Every Story』(92年)も。ストリングスとかホーンが沢山入ってて、よく聴いたな。

それこそ、ジェネレーション・アックスを観に行った時は、ヌーノのディナーショー状態で感動したよ。エクストリームの名ギターソロ集みたいな感じで、全てが完璧すぎた。作られたギターソロのクォリティーも素晴らしいし、完全に弾きこなしているし、余裕で無茶苦茶難しいことを飄々と走り回りながらやってて、〈みんな楽しんでるかい!〉みたいな。アコギでソロを弾いた曲もあったし」

――やってましたね。私も行きました。ヌーノは〈大変〉とか言いながらアニマルズ・アズ・リーダーズの“Physical Education”(2014年)を弾いてましたよね。

「〈変拍子とかわかんない、4(拍子)以上は数えられない〉とか言って弾き始めたけど、全然できてたよね。ヌーノはエクストリームのギターソロで、ポリリズム的なアプローチとかを結構前からやってたしね。

アニマルズ・アズ・リーダーズの2014年作『The Joy Of Motion』収録曲“Physical Education”

ジェネレーション・アックスを観て思ったけど、ヌーノは明らかに他の出演者よりパフォーマーとして超越していて、本当にステージに立つべき人なんだなって。歌もいいし、見た目もいいし、走り回ってるし、圧倒的に上手だし」

――ヌーノの演奏で好きなものってありますか?

「衝撃だったのは、(エクストリームの)“Get The Funk Out”(90年)かな。あの頃のLAメタルは8ビートばっかりで、速くても遅くても8ビートしかなかった時期に、16ビートとかファンキーな曲でエクストリームが出てきたんだよね。ギターは結構歪んでるのに重ねても大丈夫な音色の作り方で、7th(コード)とかが入ってて、格好良いリフがあって。

エクストリームの90年作『Pornograffitti』収録曲“Get The Funk Out”

レーサーXも格好良かったなあ。コピーする以外でも好きで聴いてた。“Motor Man”(87年)とか。これもお勧めしておこうかなあ。イントロが超格好良い。ポール・ギルバートは手堅いから練習にはもってこいで、結構コピーしたし、ビデオも持ってた」

レーサーXの87年作『Second Heat』収録曲“Motor Man”

 

鈴木直人がメタルファンにお勧めするジャズ

――逆に、メタルのファンにお勧めするジャズは? 

「ケンドリック・スコット・オラクルかな。セカンドの『Conviction』(2013年)っていうアルバムが凄く格好良くて、〈バンドじゃん、ロックじゃん〉って思った。

ケンドリック・スコット・オラクルの2013年作『Conviction』収録曲“Cycling Through Reality”

ギターだったらジョナサン・クライスバーグだね。(メタラーにも)受け入れやすいかも。『Shadowless』(2011年)の“Twenty One”とか。ジョナサンは、パルスがしっかり正確で明確。ドリーム・シアター的な要素とか21(拍子)ってギミックも格好良いと思うんだけど」

ジョナサン・クライスバーグの2011年作『Shadowless』収録曲“Twenty One”

――メタルのギターをやっている人も、これを聴いたら面白いだろうなっていうジャズギタリストっています? 

「ただ速いってことなら、(2003年に)死んじゃったショーン・レインとかじゃないかな。

ショーン・レインのライブ動画

あと、アンドレアス・オーベリ。速弾きしてる動画とかは、メタラーも面白いんじゃないかな」

アンドレアス・オーベリのライブ動画

――あ、この人、スウェーデンで会って、挨拶してCDを貰ったことあります。ジャズギターって、手の動きを見ていると本当に柔らかいし、綺麗ですよね。

「ポジションより弾きたい音符ありきだから、多少無理してでも瞬時に弾きたい音を弾かなきゃいけないし、運指が犠牲になって他のジャンルより難易度がものすごく上がる、ってところはあるよね。

速さだけでいったら、ジャズなのかメタルなのかは不明だけど、やっぱりショーン・レインは最強。結構メロウな西海岸フュージョンみたいなオリジナル曲をやってるんだけど、メロディーの弾き方がすごく綺麗だし、歌い方もいいよ。フュージョン枠になっちゃうけど、速さでいったら世界一だと思う」

ショーン・レインの98年のライブ動画

 

メタルは揺るぎない位置にある基礎

――ちなみに、メタルの経験が今の自分のプレイに活かされていることはありますか?

「ピッキングは、ポール・ギルバートのおかげで、色んなフレーズを滑舌良く弾けるようになったかな」

――ポール・ギルバートのおかげなんですか。

「うん。彼の教則ビデオのおかげ」

――鈴木さんは普段の演奏でも、あまりジャンルとかスタイルを気にして演奏しているタイプじゃないですもんね。出てきた音を全て自然に弾いてる感じ。だから、鈴木さんの演奏を聴いたらメタル出身ってすぐわかりますし。

「年々そうなってきたかな、年齢と共に許される機会が増えてきたかも。

技術的にはもちろん、メタルのわかりやすいフレーズとかスケールから練習して、それを整理整頓して、その上にどんどん発展させることができたから、基礎としてのメタルは揺るぎない位置にあると思う。

それこそジェネレーション・アックスのヌーノを観に行って思ったけど、アドリブってやっぱり難しいなって。アドリブばかりのジャズのライブをやるって、本当に責任があるというか、色々考えて演奏しないと、人気は落ちるよなあって思ったね。
その空間、その瞬間でフレキシブルに対応できて、状況に応じて静かにしたりラウドにしたり、ダイナミクスも自由にその場で選択できるから、ベストな回答を常に選択して提供しないといけない。それがジャズの本当に良いところで、それをちゃんと音楽的に演奏できたら、とても良いライブになるんじゃないかなって。即興の良さは、たぶんそこにある。

俺はオルタナティブロックも沢山聴いたし、ファンクとか色々なジャンルを聴いて、音楽が多岐にわたってぶわーっと広がっていったんだよね。その中にジャズがあって、今こういうことをやってるんだけど、基礎だね、メタルは。(自分の音楽は)切り替わったり飛び移ったわけじゃなくて、メタルの土台の上にあるんだよ」

鈴木直人の2019年のライブ動画

Tokyo Junkastic Bandの2011年のライブ動画。ギターは鈴木直人

――2020年頭にコロナ禍に差し掛かって、NHORHMのライブでギタリストが参加できなくなった時、鈴木さんに入ってもらいたいと思ってスケジュールをチェックしたら、先にライブが入ってて無理だった、ということがありました。NHORHMは、年齢が近くて同じようなバックグラウンドを共有しているプレイヤーに参加してもらえたら楽しいなって思っているんです。ジャズもメタルも、どちらの流儀もそれぞれのファンに押しつけすぎたくないから、両方の楽しさを知っていて越境もしてくれるプレイヤーをと考えたら、わりと最初に鈴木さんのことが思い浮かんだんですよ。NHORHMが復活したら、ぜひお願いします。

「ぜひぜひ、やってみたい。やろう!」

 


LIVE INFORMATION

■鈴木直人

2022年7月19日(火)東京・淡路町 リディアン
開場/開演:18:30/19:15(1st)/20:45(2nd) ※2ステージ、入替なし
出演:鈴木直人カルテット 鈴木直人(ギター)/熊谷ヤスマサ(ピアノ)/川村竜(ベース)/岩瀬立飛(ドラムス)
料金:3,400円(ドリンク代別)

2022年9月25日(日)東京・新宿 ピットイン

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■西山瞳

2022年6月23日(木)埼玉・蕨 Our Delight
開場/開演:19:00/19:30 ※2ステージ、入替無し
出演:西山瞳(ピアノ)/牧山純子(バイオリン)
料金:3,600円

2022年6月24日(金)YouTubeチャンネルにてライブ配信予定
配信開始:19:30
出演:西山瞳(ピアノ)
https://www.youtube.com/c/hnofficialm

2022年6月25日(土)東京・成城学園前 Cafe Beulmans
開場/開演:13:00/13:30 ※2ステージ、入替なし
出演:西山瞳(ピアノ)/酒井麻生代(フルート)
料金:3,300円(2ドリンク代別)

CD ”Hometown” 発売ライブ
2022年7月14日(木)大阪 Mr.Kelly’s
開場/開演:18:00/19:00(1st)/20:00(2nd) ※2ステージ、入替なし
出演:西山瞳(ピアノ)/鈴木孝紀(クラリネット)/光岡尚紀(ベース)
前売り/当日:3,500円/3,800円

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RELEASE INFORMATION

■鈴木直人

鈴木直人 『Before the dawn』 Garden Notes Music(2021)

リリース日:2021年1月20日
品番:GNM-1004
価格:2,500円(税込)

TRACKLIST
1. Turn out the stars
2. I just called you to say I love you
3. The window of Thalys
4. Windows
5. Two for the road
6. 水鏡
7. 雪
8. Twilight shadows
9. Love for sale
10. Lucky to be me

 

鈴木直人 『Resonance and Emission』 T-TOC(2017)

リリース日:2017年11月29日
品番:TTOC-0026
価格:3,056円(税込)

TRACKLIST
1. Summertime
2. ’S Wonderful
3. Touch Her Soft Lips and Part
4. The Window of Thalys
5. Majestic Dawn
6. The Peacocks
7. 雪
8. Electric Cruising
9. Love You Madly

 

■西山瞳
西山瞳トリオ、7年ぶりのスタジオアルバム『Calling』発売中!

西山瞳トリオ 『Calling』 MEANTONE(2021)

リリース日 :2021年9月15日
品番:MT-10

価格:2,970円(税込)
紙ジャケット仕様

TRACKLIST
1. Indication インディケーション(作曲:西山瞳)
2. Calling コーリング(作曲:西山瞳)
3. Reminiscence レミニセンス(作曲:西山瞳)
4. Lingering in the Flow リンガリング・イン・ザ・フロウ(作曲:西山瞳)
5. Etude エチュード(作曲:西山瞳)
6. Loudvik ルードヴィック(作曲:西山瞳)
7. Drowsy Spring ドロウジー・スプリング(作曲:西山瞳)
8. Folds of Paints フォールズ・オブ・ペインツ(作曲:西山瞳)

All Composition & Produce Hitomi Nishiyama

録音日:2021年3月30、31日 Studio Dede
録音/ミックス/マスタリング:吉川昭仁

■メンバー
西山瞳(ピアノ)
佐藤“ハチ”恭彦(ベース)
池長一美(ドラムス)

 


PROFILE: 西山瞳
79年11月17日生まれ。6歳よりクラシックピアノを学び、18歳でジャズに転向。大阪音楽大学短期大学部音楽科音楽専攻ピアノコース・ジャズクラス在学中より、演奏活動を開始する。卒業後、エンリコ・ピエラヌンツィに傾倒。2004年、自主制作アルバム『I’m Missing You』を発表。ヨーロッパジャズファンを中心に話題を呼び、5か月後には全国発売となる。2005年、〈横濱JAZZ PROMENADE ジャズ・コンペティション〉において、自身のトリオでグランプリを受賞。2006年、スウェーデンにて現地ミュージシャンとのトリオでレコーディング、『Cubium』をSpice Of Life(アミューズ)よりリリースし、デビューする。2007年には、日本人リーダーとして初めて〈ストックホルム・ジャズ・フェスティバル〉に招聘され、そのパフォーマンスが翌日現地メディアに取り上げられるなど大好評を得る。以降2枚のスウェーデン録音作品をリリース。2008年に自己のバンドで録音したアルバム『Parallax』では、スイングジャーナル誌日本ジャズ賞にノミネートされる。2010年、〈インターナショナル・ソングライティング・コンペティション〉(アメリカ)で、全世界約15,000のエントリーのなかから自作曲“Unfolding Universe”がジャズ部門で3位を受賞。コンポーザーとして世界的な評価を得た。2011年発表『Music In You』では、タワーレコードのジャズ総合チャートで1位、HMVの総合2位にランクイン。CDジャーナル誌2011年のベストディスクに選出されるなど、芸術作品として重厚な力作であると高い評価を得る。2014年には自身のレギュラートリオ、西山瞳トリオ・パララックス名義での2作目『Shift』を発表。好評を受け、アナログでもリリースする。2015年には、ヘヴィメタルの名曲をカバーしたアルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal』をリリース。マーティ・フリードマン(ギター)、キコ・ルーレイロ(ギター)、ヤング・ギター誌などから絶賛コメントを得て、発売前よりメタル・ジャズの両面から話題になり、すべての主要CDショップでランキング1位を獲得。ジャンルを超えたベストセラーとなっている。同作は『II』(2016年)、『III』(2019年)と3部作としてシリーズ化。2019年4月には『extra edition』(2019年)もリリース。自身のプロジェクトの他に、東かおる(ボーカル)とのボーカルプロジェクト、安ヵ川大樹(ベース)とのユニット、ビッグバンドへの作品提供など、幅広く活動。〈横濱JAZZ PROMENADE〉をはじめ、全国のジャズフェスティバルやイベント、ライブハウスなどで演奏。オリジナル曲は、高い作曲能力による緻密な構成とポップさが共存した、ジャンルを超えた独自の音楽を形成し、幅広い音楽ファンから支持されている。