9月末に公開された新曲“Ego Death”のMVが、この原稿を書いている時点ですでに500万回再生に届きそうなポリフィア。泣く子も黙るギター・カリスマ、スティーヴ・ヴァイをフィーチャーしたことでも話題の一曲は、技巧的なアンサンブルのうえでヴァイのギター・ソロがむせび泣くという、その期待に違わぬインストゥルメンタル・メタルの名曲に仕上がっている。〈満を辞して〉という感じで、玉座に腰かけながら画面に現れるヴァイの登場シーンが最高なので、ぜひMVを観てほしい。
とはいえポリフィアは、昨日今日に出てきた新人バンドではない。2010年にテキサスで結成されたこの4人組は、すでに3作のアルバムを発表。2人の人気ギタリスト――ティム・ヘンソンとスコット・ルペイジが織り成す変幻自在のプレイと、それを支えるクレイ・ゴバー(ベース)、とクレイ・アーシュリマン(ドラムス)の豊かな音楽的素養を随所に感じさせるリズム・アンサンブルで、メタル・シーンにとどまらない支持を得てきた。
とりわけ2018年のサード・アルバム『New Levels New Devils』では、本国の盟友にして新世代ギター・ヒーローのジェイソン・リチャードソン、日系ブラジル人のマテウス・アサト、SNSを通じて世界規模のバズを起こした日本人、Ichika Nitoら世界各国の凄腕ギタリストが参加しつつ、ベッドルーム・ポップの人気者であるクコがゲスト・ヴォーカルとして参加したり、トラップやブロステップからの影響を採り入れたりと、音楽性を拡張。その後、BABYMETALの2019年作『METAL GALAXY』に収録された“Brand New Day”に参加したことでも知名度を上げ、ここ日本でもメタル・シーン期待の次代スター候補としてホットな視線を集めている。
そして届いたのが、今回のニュー・アルバム『Remember That You Will Die』。その資料には〈無双! 超絶テクニカル・インスト・バンドの高みへ!〉と力強く書かれており、前述の“Ego Death”を含む先行シングルの充実っぷりと、現在伝わっている収録曲情報からも熱すぎるアルバムだということが伝わってくる。
まず、発表順にシングル曲に触れていくと、最初のリードとしてリリースされた“Playing God”はフラメンコ・ギターと口笛の音が郷愁を誘うナンバー。続く“Neurotica”は、ドラムやギターへ大胆にエディットが施されており、ビート・ミュージック的な音作りが新鮮だ。さらに日米ハーフのシンガー、ソフィア・ブラックを迎えたヴォーカル曲“ABC”もおもしろい。英語と日本語をフックたっぷりに混ぜていくブラックの歌唱も相まってハイパーポップ以降のポリフィアとでも形容したくなるこのキュートなナンバーは、バンドの新たなポテンシャルを開花させた一曲だろう。
アルバムのクレジットを見ると、さらに興味深いコラボが目白押し。冒頭では、BTSへの参加でも話題を集めたプロデューサーのブラストラックスをフィーチャー。さらにデフトーンズのチノ・モレノ、カナダ人鍵盤奏者のアノマリー、エモ・ラッパーのキルステーションらも名を連ねており、その顔ぶれだけを見ても本作が過去最高にヴァラエティー豊かなアルバムとなっていることは間違いない。
プロデューサーには、90年代からR&B界で活躍するロドニー・ジャーキンス、ミーゴスなどで知られるアップライジングなジャッジといった意外な面々も参加。メタルやジェントといった枠組みを超越して鳴らされているのであろう至高の(インスト・)ミュージックが、彼らを〈無双〉の存在へと押し上げるはずだ。
ポリフィア
ティム・ヘンソン(ギター)、スコット・ルペイジ(ギター)、クレイ・ゴバー(ベース)、クレイ・アーシュリマン(ドラムス)から成る4人組のプログレッシヴ・メタル・バンド。2010年にテキサス州ブレイノで結成。2013年のEP『Inspire』に収録された“Impassion”のギター・プレイ動画がヴァイラル・ヒットとなる。その後、『Muse』(2014年)、『Renaissance』(2016年)、『New Levels New Devils』(2018年)という3作のスタジオ・アルバムを発表。ニュー・アルバム『Remember That You Will Die』(Rise/BMG/ワーナー)を10月28日にリリースする。