シュターツカペレ・ドレスデン首席指揮者に就いたばかりのスウィトナーが手掛けた「後宮」は、モーツァルトが信念を込めてドイツ語で書いたジングシュピール。映画「アマデウス」でのヨーゼフ2世との逸話が思い出される。1961年録音ながら、今回の高音質化により鮮度あふれるソノリティが最大限に引き出された。良盤がひしめく「後宮」にあって、当盤の価値をあらためて知らしめる復刻として意義が大きい。まろやかでありながら、質感の全き響きを美しい光沢で音化するスウィトナーの手腕、配役のコントラストを絶妙の協調美で楽しませる歌手陣。モーツァルトでしか味わえない安息と一筆書きのような躍動が横溢する音楽!