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自分の適当さが出せたら変われそうな気がするんです

――自分から発信するのが苦手なのはなにか理由があるんですか?

「それが初期の頃からあって。高2からやってるんですけど、こうしてはいけない、ああしてはいけないっていうのが刷り込まれすぎているんです(笑)。無意識に〈自分はこうでなくちゃいけない〉というのがあるんだと思います」

――存在してもいない学校の校則を守るような感覚というか。

「それはすごくあります。それを続けてきた結果が今のこれなんですよね。自由とか自然体みたいなものがわかんなくなっちゃいました。あまりに自分のことを発信しないから、いい意味でも悪い意味でも人間味がなくて、自分でもどんな人なのかわからない。

そこがいいって言ってくれる人もいるんですよ。私がお客さん目線で自分を見た時に、これはイヤだなというのを勝手に封じている感覚というか。その積み重なりで自分がわからなくなってるんだと思います。私、自分のことあんまり好きじゃないですし」

――そうなんですか。

「それもなんでなのかわからないです。ライブしてる時の自分は好きなんですけどね」

――どうしたら好きになれるんでしょうね。そもそも好きになれなくてもいいものなのか。

「好きにならなくてもいいと思うけど、応援してくれる人に失礼だから、こういうことは普段言ってないんです(笑)」

――かなりかっちりとした〈アイドルとしての早桜ニコ像〉があるんですね。髪型もほぼ変えてないですよね。

「髪は染めたくないし、ピアスも開けたくない。そこは特に変えようとも思ってないんですけど……」

――けど?

「もっと自由に生きたい(笑)。私、本当は適当な人間なんですけど、適当なところが出せる環境にいたら変われそうな気がするんですよ」

――自由に生きたいけど、そうなるのをなにかが止めている。

「今までの私です(笑)。初期はボイトレもやってなくて、わからないままの歌い方でずっとやってきたので、今でも声の出し方が直らないんですよ。染み込んでいるんです。それと同じで、昔の私が取れない。逆にダンスは私らしく踊れていると思うので、それはいいと思うんですけどね」

――変えたいところが変えられず、ある意味でロボット的に振る舞ってしまうと。

「本当にそうなんですよね……」

――楓フウカさんもツイートひとつでかなり悩むと言ってますけど、これが正解だ、みたいなことを考えるようなものでもないと思うんですよね。

「たしかに。ただのTwitterだし(笑)。オシャレとかは好きだから、そういうのだったら自分を出すのも頑張れそう」

 

いつもひとりで溜め込んじゃうのも昔からの癖です

――いいじゃないですか。そういうところから少しずつ自分を出していけば、早桜さんの言う適当な自分も見せられるかもしれないですね。今のグループについて考えているのはどんなことですか?

「自分のファンの人はもちろん、他のメンバーのファンの人ももっと増やしてグループ全体の動員を上げたい。今も頑張ってるけど、ツアーとかワンマンライブはクマリが好きで来てくれるわけだから、各メンバーを好きという人を増やさないと大きい会場が埋められない」

――メンバーやスタッフに対して、本当はこうしてほしいんだけど口に出さないということはありますか?

「あります」

――でも言わない。

「言わない。私はうまく生きるタイプで、ずる賢いんだと思います(笑)。なにかある時は優雨がいつも言ってくれます……。サクライさんに対しても代表して言ってくれる。私は、思ってることはあるけど言えないタイプで。いつもひとりで溜め込んじゃうのも昔からの癖です」

――笑顔の裏にしまい込むんですね。なにかを言って空気がピリついたりするのを避けたくなる?

「そうですね。だから黙ります。それはメンバーだからとかじゃなくて、人に自分の気持ちを言えないんですよね。言葉に出せなかったり、涙がでちゃうんです。でもこの前、サクライさんに話したことがあって」

――おお。伝えようと思ったことがあったんですね。

「ツアーで披露した新曲の反応が自分的にイマイチだったんです。自分もそういう気持ちでやっちゃって、その通りの反応が返ってきちゃった時に病みました。それプラス、日常の色々溜めていたやつが膨らんで、サクライさんに喋りに行きました。それで一度落ち着きました」

――新曲をなかなか飲み込み切れてなかったと。

「うーん」

――早桜さんはそういう部分を見せたくない人だと思うんですけど、せっかくの機会だし、いいのかなと思うんです。揺らいだり悩んだりしている部分があって、その上でステージに立ち続けて、中野まで辿り着いて新曲を堂々と歌う姿を見たら感動すると思うんですよね。

「でも、悩んでいることを言ったことがないから加減がわからないし、どうなるかわからない(笑)。私は明るくてわちゃわちゃしたクマリっぽさが好きだし、そういう曲をやりたいんです。

例えば、私のファンの人は私の笑う顔が好きで応援してくれているんだと思うんですけど、今回の新曲は2曲ともそのタイプではないので魅せ方も難しいし、心から楽しんで出来なくて。きっと明るさを楽しみにツアーに来てくれているんだと思うから、ステージからちょっと微妙な反応が見えた時に、やっぱそうだよねって思っちゃったんです。初披露だったりで自信満々のパフォーマンスができてなかったっていうのももちろんあるんですけど心が負けてしまいました……」

――当然と言えば当然ですけど、受け取り方に個人差がある。

「人と価値観が合わないことってよくあるんです。私がたぶんズレてるんですけど。そういう時は大体黙っちゃいます。この前の新曲のインタビューの時も私だけうまく喋れなくなりました。ごめんなさい。でも、嘘がつけないんです」

――それもいいところだと思います。ツアーは十何曲も歌うわけですよね。ずっと笑顔でなくてもいいのかなと思うんですけど、早桜さんはこういうのを見せたいというのが強くあるから、そこを外れると気になって仕方がないわけですね。

「2曲ともそうなのが心配ではありました。私だけズレることは日常でもよくあって、そういうので疲れちゃいます」