先日、佐藤乃々子さんが4月に卒業すること、そして3月から〈RYUTist SEASON3 LAST TOUR「会いにいきます」〉を行うことを発表したRYUTist。2022年のアルバム『(エン)』から、さらに新たな季節へと向かっています。そんなRYUTistの宇野友恵さんがお気に入り本を紹介しているのが、この連載〈RYUTist宇野友恵の「好き」よファルセットで届け!〉です。2023年最初の一冊は、ジェーン・スーさんのエッセイ集「ひとまず上出来」。この本の一節に支えられた悲しい別れと特別な想いを明かしてくれました。 *Mikiki編集部

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2023年1月28日。
〈RYUTist ACOUSTIC HOME LIVE at GIOIA MIA〉。
メンバーの佐藤乃々子の卒業が発表されてから最初のライブを新潟市古町で行いました。

ファンの皆さんにとってもメンバーにとっても特別なライブであったことは間違いないと思います。

実は、私は他にもう一つ特別な想いを抱えながら歌っていました。

きっともっと先に書かなければいけないことがあるよなと悩みましたが、どうしても今は難しくて、ちょっと重い内容ですが気持ちの整理のためにもこのお話をさせてください。

 

ライブの前日、祖母が亡くなりました。

年末に新型コロナウイルスに感染してから、身体機能が衰弱していき、入院先の病院でそのまま看取ることになりました。

「もう危ないかもしれないです。」と病院から連絡をいただき、車を走らせました。

95歳まで長生きしたおばあちゃんです。
私が生まれてから23年間ずっと近くで見守っていてくれました。

幼い頃は、お膝に乗って祖母の独特な手のリズムを真似するのが好きでした。かなり変拍子だったのが印象的です。

いつからかその手の動きは見れなくなってしまいましたが、
学校帰りに突然玄関でお出迎えしてくれたり、
深夜に柿の種を手作りのチラシ箱に5粒くらい入れて私の部屋に持ってきてくれたり、
転んでしまった時に起こして助けた一回だけはずっと覚えててくれたり、
私のことが「ともちゃん!」ってわかったら、ニコニコしていっぱいお話してくれました。

RYUTistを始めてから私は学校とお仕事の両立に追われ、祖母の状態も少しずつ変わっていき、同じ家に住んでいても顔を合わせない日が増えていきました。

ときどき会うと、〈今度はご飯を食べたいな〉〈お散歩にいきたいな〉と色々一緒にやりたいことが出てくるのに、ほとんど叶えられずにあっという間にお別れの時がきてしまって後悔しています。ごめんね。
たった一人のおばあちゃんだったのに。
変わらずそこにいてくれたことが私の支えになっていたんです。
失うのがとてもこわい。
「いやだ。誰もいなくならないで。」と、子供じみた言葉ばかり母に吐いていました。

目がデメキンみたいにパンパンに腫れてひどかったな。あー思い出したらつらい。

病院から連絡をいただいたあと、早朝に家を出ましたが外は大雪。渋滞に巻き込まれ、残念ながら間に合いませんでした。
眠るように息を引き取った祖母の姿を見て、涙が止まらなかったです。

 

以前読んだジェーン・スーさんのエッセイ「ひとまず上出来」にこんなフレーズがあったなぁと思い出しました。

〈頑張れないと思ったら「頑張らない」と言い直すのはどうでしょうか。〉という提案。

ジェーン・スー 『ひとまず上出来』 文藝春秋(2021)

いつも頑張りたかったんです。誰かの為に、自分の為に。
祖母の死は覚悟していたつもりでした。
でも現実になると受け入れることができない。
悲しみの海から抜け出せない。
ふと心が一人になった瞬間に、目の奥からブワァっときてしまう。
それでも今はいいんだ。頑張らない。
とにかく祖母との最後の時を大切にしようと思いました。

病院で息をしていない祖母を目にして「頑張ったね」と、少し冷たくなっていた手を握って、弱々しくても声をかけられた自分を〈ひとまず上出来〉としたいです。