RYUTistが、約2年ぶりとなる5作目のアルバム『(エン)』をリリースした。
RYUTistは、南波一海が主宰するタワーレコードのアイドルレーベルPENGUIN DISCに所属し、これまでも音楽的にハイレベルな作品を発表してきた。だが今回の『(エン)』は、今までの領域を余裕で突破するほど強烈に進化したサウンドを聴かせる作品だ。
君島大空、柴田聡子、パソコン音楽クラブ、蓮沼執太、ermhoi(Black Boboi、millennium parade)など先鋭的なアーティストが提供した楽曲からは、ポストロック、エレクトロニカ、サイケデリックヒップホップ、ミニマルなどなど様々なジャンルが脳裏に浮かんでくる。アブストラクトでありながらも、絶妙なポップミュージックとして成立しているところが見事過ぎる。
ただ、音ばかりが先行しても意味がない。あくまで主役はアイドルのRYUTist。エッジのバリバリに効いたサウンドの中で響く彼女たちのボーカルは、音に引けを取らないどころかとてつもなく素晴らしい。
儚さ、美しさ、楽しさ、エモさが交差する、希望をテーマにしたRYUTist渾身のアルバム『(エン)』について、佐藤乃々子、宇野友恵、五十嵐夢羽、横山実郁の4人のメンバーに話を聞いていこう。
これを自分たちの作品として出せるのは誇らしいなって思いました(横山)
──『(エン)』のテーマを聞かせてください。
佐藤乃々子「全体的なテーマは希望です。コロナ禍でなかなか思うようにいかなかった期間を経てのアルバムになるので、どの曲からも希望が見えてくるような作品になってます」
──タイトルの『(エン)』にはどんな意味が込められているんですか。
佐藤「『(エン)』には、私たちが拠点としている新潟の古町、日本、世界とか、地球全てが円でつながってるよって意味だったり、人との縁、大人としての艶、うたげの宴とかいろんな意味が込められています」
──アルバム『(エン)』は今まで以上に前進したサウンドになっていますが、みなさん的にはどう感じましたか。
宇野友恵「最初は、私たちはどこに向かってるんだろう?って思いました(笑)」
佐藤「すごく壮大だし、果てしない感じだよね」
五十嵐夢羽「うん、宇宙くらいのレベルだよね」
横山実郁「正直、最初に聴いたときは、よくわからないけどきっとかっこいいものなんだろうなってぼんやりした感じだったんです。でも実際完成したアルバムを聴いたとき、すごくかっこいいな、これを自分たちの作品として出せるのは誇らしいなって思いました」
自分の限界を決めずに歌であらゆることを表現できたんじゃないかなって思います(五十嵐)
──サウンドだけでなく、歌の表現もさらに進化していますよね。
宇野「すごく難しかったですね〜。でも前作『ファルセット』(2020年)のときよりも、こういう風に歌いたいって自分たちから提案をできるようになったのはあります。
今までは、ディレクションしていただいたことを必死にがんばるって感じだったんです。でも今回半年かけてレコーディングして、回を重ねるごとにメンバーそれぞれが考えて歌を表現できるようになっていったんです」
五十嵐「私は歌に表情をつけるのが苦手だったんですけど、今回アルバムを録るにあたって、自分が思ってる以上に感情移入して歌わなきゃ伝わらないんだって痛感したんです。
今までは、そう思ってても縮こまってた部分があったんです。でも今回は、自分で自分の限界を決めずに、歌であらゆることを表現できたんじゃないかなって思います。そこは、自分が成長できたところかなと思いますね」
横山「私は最初、曲の難しさに自分の意識が持っていかれちゃってたんです。でも何回も曲を聴いたり練習していくと、曲のメロディーがすごくきれいだな、美しいなって思うようになったんです。
今までのレコーディングは、とにかく音程やリズムを間違えないようにすることを第一に考えてたんですが、今回はそこも踏まえつつ、自分の声でどう表現すればこのきれいな曲が一番引き立つのかって思ってレコーディングに臨めました。その意識の変化は大きかったです」
佐藤「みんなが言った通り、歌はほんとに難しかったですね。それに今回は全体的に落ちついた曲が多いから、みんなの声が同じ感じに聴こえてしまうかなって心配もあったんです。
でも意外とそうじゃなくて、メンバーそれぞれの声の個性がより出てるのがすごくいいなと思いました」