合唱音楽の聖域、バルト諸国の合唱団でも屈指のひとつ、エストニア・フィルハーモニック室内合唱団(近時もシュニトケ&ペルトの超絶名演あり)を当時率いていたポール・ヒリアーが指揮。作品の子細を精緻細密に究め、エストニアの深く澄んだ声を得て絶妙なバランスのもとに、音楽そのもので無伴奏宗教合唱曲の至宝を語らしめる。冒頭で開示されるたおやかな美の隆起、第7曲“いと高きには光栄”は2分弱で合唱の小宇宙を凝縮し、第12曲でさらに感興を加えて深く澄み渡った縁に降り立つ。SACDハイブリッド盤でないのが惜しまれるが、2023年のラフマニノフ生誕150年・没後80年を機にうれしい再発。