シュニトケの荘厳な「無伴奏合唱のための協奏曲」は合唱に非常な高度の半音階の歌唱を要求する。合唱大国エストニア随一の合唱団であるエストニア・フィルハーモニック室内合唱団はこの点、何の不安もない技量で聴かせる。第1楽章でのソプラノが高音域の音階を精緻に飛翔する中、中低音が完璧な音程で支えて透明感も保つサウンドには圧倒される。ロシアと西欧の影響で長年苦労したエストニアの人々の静かな祈りと、強国に屈しない内面的な強さの対比が交錯する名唱だ。洗練されたペルト作品も含め、録音会場の教会の残響の豊かな空気感を捉えることに成功した素晴らしいサウンドが華を添えている。