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『Death Magnetic』(2008年)

METALLICA 『Death Magnetic』 Warner Bros./ユニバーサル(2008)

ロバート・トゥルヒーヨ加入後初のアルバム、プロデュースは御大リック・ルービン、そしてかつてのスラッシュメタルの名盤『Master Of Puppets』を意識して制作された……ということでリリース前から話題を呼んだ作品。

ほとんどの曲が長尺の大作であり、前作ではほとんど聴けなかったカーク・ハメットのギターソロが復活していることから、『Master Of Puppets』を引き合いに出されるのも納得ではあるが、彼らが単に過去の焼き直しなどするはずも無い。ラフな感触のサウンドはどちらかというと90年代の『Load』や『Reload』に近いものがあり、そして冒頭から破壊力抜群のファストチューンが並んでいるが、それらの楽曲構成は『Master Of Puppets』のように完璧に構築されたものというより、90~2000年代を経て巨大化したバンドの無尽蔵なエネルギーが暴発した結果の産物と言える。

不穏なイントロから空気を切り裂くリフが炸裂する“That Was Just Your Life”、バウンシーな序盤からスラッシュへの展開が見事な“The End of the Line”、名曲“One”を彷彿させるドラマティックな“The Day That Never Comes”、9分を越えるインスト・ナンバー“Suicide & Redemption”など、ズッシリと聴き応えのある楽曲が並ぶ。彼らは過去と同じ作品は二度と作らない、そして常に時代の先端を行く傑作を生み落とし続ける……という2つの事実を再確認させられた傑作。 *粟野

 

『Hardwired... To Self-Destruct』(2016年)

METALLICA 『Hardwired... To Self-Destruct』 Blackened/ユニバーサル(2016)

前作『Death Magnetic』から8年。メンバーも全員50代に。音楽シーンがどんなに変わろうともメタリカはメタリカであった。前作からのゴリゴリとしたサウンドとザクザクとしたリフはそのまま、原点回帰とはまた違う、メタリカが今できる自然体のままで体現されたアルバムが今作だろう。

1曲目からスピード全開の”Hardwired”から始まり、『Load』『Reload』のモダンヘヴィネス路線を感じさせる” Dream No More“など旧作のにおいを感じるものもあれば、表現力に広がりを見せるジェイムズ・ヘットフィールドの歌やブラック・サバスやダイアモンド・ヘッドのようなリズム刻み方も垣間見せ、新しさを感じさせるところもある。また、モーターヘッドのレミー・キルミスターを追悼した”Murder One”は、スローでヘヴィな展開に〈Ace〉、〈Fist〉などモーターヘッドの曲名の一部を歌詞に引用しており、メタリカ流のレクイエムとなっている。そして、最後が”Spit Out The Bone”。スピード、リフとともに曲のテンションも非常に高い。1曲目と同じテンションの曲をラストにもってくるこの配置は、『Master Of Puppets』における”Damage, Inc.”と同じ配置で、このアルバムへの絶対的な自信を感じさせる。

これまでの作品でもそうであったが、彼らは今作でも常に1つの場所にとどまらない姿勢を見せつけてくれている。それこそがメタリカのメタリカたるゆえんなのかもしれない。そんなことを改めて感じさせてくれる作品だ。 *Mikiki編集部

 

『72 Seasons』(2023年)

METALLICA 『72 Seasons』 Blackened/ユニバーサル(2023)

前作『Hardwired... To Self-Destruct』から約7年。ミックスには『Death Magnetic』以降のゴリゴリ感は多少感じるが、ギターやスネアの音とトーンが初期・中期に近いサウンドの印象を受ける。古くからのファンは受け入れやすい音像と言えるかもしれない。

ディック・デイル&ヒズ・デルトーンズの”Misirlou”を思わせるギターリフから始まる、メタリカの代名詞と言えるファストチューン”72 Seasons”で幕を開ける本作。収録曲は、初期スラッシュを彷彿とさせる高速チューンもあれば、『Metallica』、『Load』、『Reload』期のグルーヴ感たっぷりのヘヴィロックナンバーやヘヴィネスが渦巻く低速チューンもありと、これまでのオリジナルアルバムを総ざらいしたような曲が並び、アルバム全体を通してだれることなく聴けるバランスの良い内容となっている。

そして、どの曲のどこを切り取っても〈やはりメタリカだ〉と言える高いクオリティだ。ギターリフに加え、今作がここまで〈メタリカ印〉を感じるのは、カーク・ハメットのソロでの速弾きやワウギターの功績が非常に大きい。一聴でメタリカだとわかる楽曲のピースにはまったギターソロワークはやはりカーク・ハメットだからこそのなせる業といえる。

疾走感あふれるヘヴィロックナンバー”Screaming Suicide”のグルーヴ感は”Fuel”(『Reload』収録)、”Sleepwalk My Life Away”は”Enter Sandman”(『Metallica』収録)との共通点を感じさせる。特に”Sleepwalk My Life Away”は、クリーントーンのギターイントロは野太いベースに置き換えられているが、スネアのリズムやディストーションリフの進行はまさに”Enter Sandman”だ。”You Must Burn!”からは、イントロでのスネアの叩き方と曲の入りでのテンポが印象的な ”Sad But True”(『Metallica』収録)のようなイメージが沸く。”Too Far Gone?”はイントロや歌の入り、ギターリフは”No Remorse”(『Kill ’Em All』収録)の要素を感じさせ、”Room Of Mirrors”は、スピードはそこまで速くないが”Disposable Heroes”(『Master Of Puppets』収録)を想起させるようなリフが際立っている。

また、シングルカットされた”Lux Æterna”は、過去作との共通点ではないが、バックボーンであるNWOBHMをそのまま体現した、メタリカ流のオールドスクールなNWOBHMだ。カーク・ハメットの速弾きソロがうなるのを聴くと、『Master Of Puppets』でのソロのような高揚感を得られて、とてもうれしい気持ちになる。

近年のメタリカ作品は練りに練られた曲構成で聴かせるというよりは、自然体かつ今できる表現で構築した作風がメインと言えるが、今作はこれまでの経験を存分に活かし、ファンの聴きたいツボをしっかり押さえている。さすがは百戦錬磨のメタリカだけある。ただファンとしてはやはり『Master Of Puppets』という大金字塔との比較してしまいがちだが、今作は5~7分の曲が多くを占める中、アルバム全体を通して後半までだれることなく、近年のメタリカ作品にはない聴きやすく、なじみやすいアルバムであり、酸いも甘いも知り尽くしたベテランらしい素晴らしい内容ではないだろうか。

音楽の視聴環境が変わった昨今、かつてのようなシーン全体を一気に塗り替える若手がHR/HMシーンで台頭しづらくなっているのは事実だ。特にHR/HMシーンでは70年代、80年代から活躍し、音楽シーンを覆してきたバンドたちが今もなお精力的に活動している。ベテランと呼ばれるバンドが多い代わりに、懐古的だったり保守的だったりするアクトも少なくない。そんな中、この『72 Seasons』は今もHR/HMシーンの代表がメタリカであることを象徴する作品だと言っても過言ではない。 *Mikiki編集部

 


RELEASE INFORMATION

METALLICA 『72 Seasons』 Blackened/ユニバーサル(2023)

リリース日:2023年4月14日
品番: UICY-16145
価格:2,860円(税込)
日本盤のみSHM-CD仕様/初回生産限定ロゴステッカー封入

TRACKLIST
1. 72 Seasons
2. Shadows Follow
3. Screaming Suicide
4. Sleepwalk My Life Away
5. You Must Burn!
6. Lux Æterna
7. Crown Of Barbed Wire
8. Chasing Light
9. If Darkness Had A Son
10. Too Far Gone?
11. Room Of Mirrors
12. Inamorata

3ヶ月限定スペシャル・プライス スタジオ・アルバム&ライヴ・アルバム15タイトル
リリース日:2023年4月14日
価格
1CD:1,650円(税込)
2CD:2,640円(税込)*

『キル・エム・オール(リマスター)』(UICY-80300)
『ライド・ザ・ライトニング(リマスター)』(UICY-80301)
『メタル・マスター(リマスター)』(UICY-80302)
『メタル・ジャスティス(リマスター)』(UICY-80303)
『メタリカ(リマスター)』(UICY-80304)
『LOAD』(UICY-80305)
『RELOAD』(UICY-80306)
『ガレージ・インク』(UICY-80307/8)*
『セイント・アンガー』(UICY-80309)
『デス・マグネティック』(UICY-80310)
『ハードワイアード…トゥ・セルフディストラクト』(UICY-80311/2)*
『S&M~シンフォニー&メタリカ』(UICY-80314/5)*
『スルー・ザ・ネヴァー』(UICY-80316/7)*
『S&M2』(UICY-80318/9)*
『LULU』(UICY-80320/1)*

 

INFORMATION
メタリカ『72 Seasons』発売記念キャンペーン実施中

2023年4月14日(金)~2023年4月30日(日) ※実施期間は店舗により前後する可能性がございますので、あらかじめご了承ください

■実施店舗
パネル展・AR体験・抽選特典実施店舗:タワーレコード新宿店(特設パネル設置)/渋谷店6F/名古屋近鉄パッセ店/梅田NU茶屋町店/神戸店/広島店
AR体験・抽選特典実施店舗:タワーレコード札幌パルコ店/仙台パルコ店/横浜ビブレ店/福岡パルコ店

対象商品:メタリカ『72 Seasons』(UICY-16145)
店舗限定ご購入抽選特典:メタリカ 『72 Seasons』オリジナル マスキングテープ(非売品)(各店若干名様) ※上記記載の実施10店舗にて抽選を実施いたします
抽選対象期間:2023年4月14日(金)~2023年4月30日(日) 
当選発表:2023年5月10日(水)各店舗のTwitterアカウントまたはオフィシャルサイトにて ※当選発表は各店舗によって異なります。詳細はご購入先の店舗でご確認ください

タワーレコード新宿店では〈大型パネル展〉の実施、さらに独自特典も決定!
『72 Seasons』の発売記念に伴い、タワーレコード新宿店の催事スペースにて特設パネル展を実施いたします。また、メンバーの過去のサインなど、特設展示物も展示いたします。さらに新宿店では、ご購入抽選特典として〈メタリカ 『72 Seasons』オリジナル マスキングテープ(非売品)〉、もしくは〈メタリカ 『72 Seasons』オリジナル ピック(非売品)〉が当たるチャンスも!! このチャンスをお見逃しなく!

※タワーレコードオリジナル特典〈A5クリアファイル〉も先着でプレゼントいたします(タワーレコード オンラインを含む/一部店舗を除く)
※展示スペースが混雑した場合は譲り合ってご覧ください。スペースの都合による入場制限を行う可能性がございますので、あらかじめご了承ください