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憧れのmabanuaプロデュース、悩み抜いた“いつのまにか”

――ではこのまま各楽曲について訊いていきますが、『XinU EP #01』収録曲については1年前のインタビューで話してもらっているので、『XinU EP #02』に収録された新しい曲についてだけ、アルバムの並び順に訊いていこうと思います。ということで、アルバムの2曲目は“いつのまにか”。mabanuaさんが作曲・アレンジ・プロデュースを手掛けた曲で。

XinU「出会いが面白くて、私は群馬県桐生市にある大学に通っていたんですね。で、mabanuaさんが桐生を拠点にされていることも知っていたし、mabanuaさんの音楽も聴いていたから、いつかどこかでお会いできたらいいなと思っていたんです。

そうしたら桐生市のジャズフェスを観に行ったときに、たまたまmabanuaさんがご家族と観に来られていて、私はそのときパジャマみたいなカッコだったんですけど(笑)、〈ここでいかなきゃダメだ!〉と思って走って追いかけて。たまたま自分のCDを持っていたので、〈ご家族との時間なのにすみません〉と言いながらめっちゃ早口で自己紹介して、CDをお渡ししたら受け取ってくださったんです。

で、それから何日かしたら松下さんが……」

松下「そんなことがあったなんて僕は知らずに、純粋にmabanuaさんに曲をお願いしたくて、友人であるSOIL & “PIMP” SESSIONSの社長から紹介してもらって連絡をとったんです。そうしたら〈ああ、この前会いましたよ〉って(笑)。CDも聴いてくれていて、〈よかったです〉と」

XinU「本当に偶然なんですけど、双方向からお願いするような流れになり、引き受けてくださることになったという。

それでオンラインミーティングをして、ちょっと明るい方向の曲をとお伝えしたらいろいろ提案してくださり、それからトラックとメロディがきたんです。それがめっちゃ最高だったんですよ。で、これは絶対にいい歌詞を書いていい曲に仕上げなきゃいけないってなって。メロも細かいところまでしっかり作ってくださっていたので、これを崩さないように歌詞を書こうと。録音するギリギリまで何度も書き直しましたね」

『XinU』収録曲“いつのまにか”

――どのへんに拘ったんですか?

XinU「〈いつのまにか〉と歌っているところに当てはまる6文字がとにかく大事なんだってことを松下さんと話していて、その6文字にぴったりくる言葉が出てくるまでに1ヵ月くらいかかりました。

それでいくつか考えた6文字の言葉を当てはめて、松下さんに採譜してもらい、〈いつのまにか〉がいいねってことになり。そこから歌詞ができていったんです」

――前向きな歌詞に仕上がって、よかったですね。

XinU「はい(笑)。何度も書き直したけど、最終的にそうなってよかったです」

 

あがきと諦めの狭間“まだまだ”、思い合う者たちの居場所“楽園”

――アルバム3曲目は“まだまだ”。イントロから最後まで気持ちよく聴ける曲だけど、歌詞はまだ別れを引きずっていて前に踏み出せない状態を書いたもので。

XinU「友達から深夜2時頃に電話がかかってきて、どうやらその子史上最低にどん底なときだったみたいで。私も私でその時期けっこう底のほうにいたから、ふたりで恋愛の話と仕事の話をして、ずっと抱えていた悩みとかも打ち明けて、〈なんだろね、なんでこんなに辛いんだろうね〉なんて話していたんです。それで、まだあがきたい気持ちと諦めモードの狭間を歌詞にしてみようと」

『XinU』収録曲“まだまだ”

――トラックは明るいのに?

XinU「トラックを最初に聴いたとき、冒頭の音が〈まだまだ〉って言っているように聴こえたんですよ。そこから歌詞を書いて、デモができたときに電話で話した友達に送ったら、〈こんなに明るい曲になってよかったね〉って言われました(笑)」

――曲にしたことですっきりした。

XinU「めっちゃ、すっきりした。成仏できました(笑)」

――“ただそれだけ”“鼓動”と続いて、アルバム6曲目は“楽園”。この言葉はどのようにして出てきたんですか?

XinU「松下さんのトラックを初めて聴いたときに、頭の中に広い海が浮かんだんです。それは静かで、楽園のようなイメージで。その頃はまだコロナ真っ只中で、外出も控えてと言われていた。少し先の未来も想像しにくいそんなときに、ふと聴く人がいてくれるライブのあの空間って楽園のようだったな、思い合っている者同士が一緒にいられる場所というのも楽園だなぁってことを考えて。そういう場所が必ずあるんだということを覚えてさえいれば、辛いことがあっても大丈夫だし、希望をもって生きていける。そう思ってこの歌詞を書きました」

『XinU』収録曲“まだまだ”