新曲“とけてゆく”がすき家のテレビCMに起用されるなど、SNSを中心に支持を広げているXinU。2023年11月2日にワンマンライブ〈XinU 2nd anniversary LIVE!〉を東京・渋谷のWWWで開催した。デビュー2周年を祝って様々なクリエイターたちがゲストとして参加、〈ミュージックコレクティブXinUの完成形〉が提示されたこのイベント。見事な歌唱でファンとともに親密な空気を作り上げ、これまでの歩みを振り返るるとともに次の一歩も踏み出した一夜を、音楽ライターの内本順一が目撃した。 *Mikiki編集部
親密で心地よい曲を大きな会場でどう表現するのか
熱量高くパワフルに歌って聴く者を昂揚させるロックシンガーではない。圧倒的な声量でエモーショナルに歌って聴く者の涙を誘うR&Bシンガーでもない。XinUはシティポップ的な意匠の洗練されたサウンドに乗せて息を吐くように歌い、憂いのあるその声を聴く者の心の内にじわっと沁みこませるシンガーだ。なので、カフェやジャズクラブで1人から3人くらいの演奏者をバックに歌ってインティメイトな雰囲気を共有する、そういうライブが楽曲を聴く限りでは合いそうに思えるし、実際そういうライブも彼女はこれまでに何度か重ねてきた。
だが、デビュー2周年を記念して行われる今回のワンマンは彼女にとって3度目となるフルバンドセットであり、会場は500人を収容できる渋谷WWW。静かな午後にラジオから流れてきたら、あるいは首都高や海沿いをクルマで走りながら聴いたらとても心地よく感じられる、そのような楽曲を、大きめのライブ会場でどう表現するのか。そこを見どころとしながら、ソールドアウトとなったこの公演に足を運んだ。

コレクティブを形成する全員が作り上げた立体的なショー
結論から書こう。想像していたあり方とは異なり、強くエンターテインメント性を打ち出した立体的なショーだった。各楽曲にライブ向けのアレンジが施され、曲によっては音源よりも遥かにリズムが強調されて、ライブならではの膨らみや躍動もあった。バンドメンバーは庄司陽太(ギター)、山本連(ベース)、大津惇(ドラムス)、武藤勇樹(鍵盤)の4人だが、大半の曲でコーラスのHarunaが声を重ね、何曲かでは海野あゆみがサックスの音をそこに重ねる。

それだけではない。5曲目の前には〈ヒューマンビートシンガー〉のYAMORI(ヒューマンビートボックスの世界大会で2位を獲ったヒューマンビートボクサーで、シンガーでもある)がゲストで登場。彼の見事なビートボックスから始まる“オモイオモワレ”は鮮烈な印象をもたらした。

また終盤の“合図 EYES 合図”と“やまない雨”ではダンサーのShun & Dyson(BTS“Butter”の振付制作にも参加したダンスアーティストグループGANMIのメンバー)によるしなやかで華麗な身体表現が楽曲に新たな意味合いを加えた。さらに“いつのまにか”ではギタリストのToshiki Soejimaが呼びこまれて情景の浮かぶソロを披露。そもそもXinUとはソロシンガーとしての彼女の呼び名でありながら、〈ミュージックコレクティブXinU〉という打ち出し方をしている通りプロジェクトの名称でもあり、つまりここに参加したゲストたちもコレクティブを形成する一員としてライブ表現を色付けしていたわけだ。
アンコールの2曲を含めて全19曲。いくつかの曲では背景にイマジネーションを搔き立てる映像が効果的に映し出されていた。XinUはといえばMCをほとんど挿むことなく、次から次に曲を歌っていった。この2年で聴かせたい(歌いたい)曲がこんなにたくさん生まれたんだという思いが、そうさせたのだろう。そしてその1曲1曲をライブではどのように見せてどう伝えるか。スタッフ、バンド、ゲストを含め、コレクティブを形成する全員が一丸となってそれを考え、このライブを作ったことがよくわかった。
未発表曲も披露、柔らかさと強さで魅せた表現力
初披露の曲もあった。驚いたことにオープナーからして未発表曲で、それは“80’s”というタイトルが付けられている通り、a-haを想起させる鍵盤の80’s的な音も印象的だった。6曲目と7曲目は新曲で、“罠”でコラボしたedbl(エドブラック)と夏にロンドンで作ったと話していた6曲目にはEPOをイメージさせるシティポップ感があった。

また、彼女が初めて作った曲である“鼓動”は2つのバージョンで歌われたのだが、本編中盤でのそれはレゲエ味のあるSurf & Turf versionで明るく歌われたのが新鮮だった。さらにロバータ・フラックの名曲でマリーナ・ショウら何人ものシンガーが歌ってきた“Feel Like Making Love”のカバーもあった。

XinUのボーカルは柔らかさを持ちながらも、時折強く前に出る。曲によって声の色合いが微妙な変化を見せる。“罠”のボーカルに色気が滲んだ。“やまない雨”の歌いだしの高い声は空にも届きそうな神聖な雰囲気を有していた。“とけてゆく”のボーカルにはそこにいるみんなを幸福な気持ちにさせる成分が含まれていた。

3年目のアクションはもう始まっている
アンコールでは少しだけロックテイストも加味されたバンドアレンジで“ココカラ”を歌い、そのあとにはこのようなMCを。「ゼロから始めて、2年で〈ここ〉まできました。〈ここ〉がどこだかわからなくなったりすることもあるけど、今日はこの時間を共有できて本当に嬉しかったです。2年目が終わって、3年目がスタートします。昔書いた歌詞にも励まされながら、これからも曲を作っていきたいと思います」。そして「この2年を振り返りながら、最初に作った曲をやります」と言い、最後に“鼓動”のオリジナルバージョンを。「オ~、オ~オ~」というコーラス部分では「みんなも歌って」と促してシンガロング。ステージの上と下とが完全に一体となり、この夜一番の清々しい笑顔を見せてXinUはステージを去ったのだった。
3年目のアクションはもう始まっている。ここからどんな曲が生まれて、彼女はどんなふうに可能性を広げていくのか。今から楽しみでしょうがない。
SETLIST
1. 80’s(未発表曲)
2. 揺らせ
3. まだまだ
4. 楽園
5. オモイオモワレ(ゲスト:YAMORI)
6. 新曲
7. 新曲
8. 鼓動(Surf & Turf version)
9. Feel Like Making Love(カバー)
10. 目眩
11. もうやだ
12. 罠
13. ただそれだけ
14. 合図 EYES 合図(ゲストダンサー:Shun & Dyson(GANMI))
15. やまない雨(ゲストダンサー:Shun & Dyson(GANMI))
16. いつのまにか(ゲスト:Toshiki Soejima)
17. とけてゆく
ENCORE
ココカラ
鼓動
RELEASE INFORMATION
リリース日:2023年8月9日(水)
配信リンク:https://virginmusic.lnk.to/XinU_Toketeyuku
TRACKLIST
1. とけてゆく
PROFILE: XinU
ミュージックコレクティブXinU(シンユウ) 。あなた(U)にクロス(X)するをキーワードに、いま東京で鳴っているサウンドと自然体でありながらも核心をついた日本語詞で〈今〉を切り取っていく。〈Neo Tokyo Cross Over Rock Jazz Damn!!〉と称しR&B、ジャズ、ヒップホップ、フォークロアを飲み込む新たなサウンドはボーダレスに音楽の未来を切り開いていく。2021年10月、“ココカラ”でデビュー。透明感がありながらもスモーキーなそのボイスに注目が集まっている。


