1stフルアルバム『XinU』から1年半。12月4日にXinUの2ndアルバム『A.O.R - Adult Oriented Romance』がリリースされた。

アカペラの“ロマンス”に始まり、この季節に聴くのに相応しい、あたたかみのある全15曲。そのいくつかにはライブを通じてオーディエンスと繋がっているという彼女の実感が反映され、〈一緒に揺れよう〉というメッセージも柔らかに伝わってくるものとなっている。

デビュー時からXinUを支えているM-Swiftこと松下昇平やギタリストの庄司陽太と共に作った曲があるのはもちろんのこと、XinUのセルフプロデュース曲もあるし、サウスロンドンのedblとのコラボ曲や、バンドの鍵盤奏者である武藤勇樹が作曲に参加した曲もある。加えて今作ではUSのオルタナティブポップデュオであるジョーン(joan)、SIRUPやiriに楽曲提供している作曲家/トラックメイカーのMori Zentaroとの初コラボ曲もあって、実に彩り豊か。とりわけジョーンと組んだエレポップ的なリード曲“バタフライ”ははっきりと新機軸と言えるもので、ここにきてXinUが新たな一歩を踏み出したことを鮮烈に印象付けている。

どんなふうに自分と向き合い、どのような思いで新しい曲を書いたのか。6月リリースの『XinU EP #03』に収録された曲については前回のインタビューで聞いたので、ここでは主に新曲についての話を掘り下げて聞いてみた。

XinU 『A.O.R - Adult Oriented Romance』 Co.lity Music(2024)

 

今の私を余すことなく詰め込んだアルバム

――2ndアルバムが完成しましたね。

「はい。『XinU EP #03』の曲も含めて、15曲が収録されています」

――昨今のアルバムにしては曲数も多い。

「盛りだくさんですね(笑)。今の私を余すことなく詰め込んだアルバムが出来たと感じています」

――EPを出して、時間をあけることなく制作に入ったんですよね。

「EPのツアーをやりながらもアルバムのことを考えていて。本格的に作り始めたのは9月でしたけど、ワンマン以外でも歌う機会がたくさんあったので、平日に制作して休日はライブをやるという数週間が続きました。制作だけに集中したのが10月で、最後の数日で滑り込みで出来た曲もあるんです」

――1stアルバム『XinU』を作ったときと達成感の種類も違ったのでは?

「何もわからないところからスタートして『XinU EP #01』『#02』を作り、それをドッキングさせたのが1stだったんですけど、今回はEPを作っているときからアルバムを見据えていたので、その違いは大きかったと思います。EPのツアーでは〈一緒に揺れよう〉という明るいテーマをみんなと共有することができたので、それを反映させたいとも思っていましたし。全体の空気感が初めから見えていたところがありました。

そもそも“触れる唇”が、一緒に揺れるというイメージで作ったものだったし。それにEPのツアーで、みんなとの繋がりがすごく大事だなって感じて、ライブが私にとって欠かせないことなんだと改めて気づいたところもある。ライブでみんなと繋がれるからこそ私は歌っていけると伝えたくて歌詞に落とし込んだ曲もあるんです」

――“つながっていて”ですね。確かにそういった実感が作品に反映されているのがわかります。だって『#01』の頃は自分のことをライブアーティストだとは思っていなかったですよね?! そこからライブを重ねていくなかで〈ライブは自分に欠かせないもの〉と思うようになり、その自覚の下にアルバムができたんだなと。

「そうですね。以前は闇雲に曲を書いていましたけど、今はみんなの顔を想像して書くことが多くなりました」

 

彩りを加えたサウンドで、みんなで揺れたい

――新境地と言える曲もあります。“バタフライ”がその最たるものだし、“Kiss Kiss Kiss”もそう。今までと違う私を見せよう、新しい表現をしようといった気持ちは持っていたんですか?

「“バタフライ“と”Kiss Kiss Kiss”に関してはあったかもしれないですね。サウンドもだけど、歌詞も。これまでの歌詞は、はっきり言わずぼやかすことが多かったけど、その2曲は初めての人とのコラボでもあるし、伝わりやすいメッセージを書いてみようと思いました。

とはいえアルバム全体で新しい表現をしようという気持ちは、それほど持っていたわけではなくて。今までのスタイルも引き続きやろうと考えていました」

――前作でのスタイルを踏襲しながら、いくつかの曲で新しい側面も見せていく。あからさまじゃない形で幅を広げたということですね。

「彩りを加えたという感じですね。あとは冬にリリースするということもあって、あたたかみが出せればとも思っていました。アカペラも、冬に合うだろうから入れましたし。

それと、1stは私小説的でしたけど、今回はみんなで揺れたい、そのためにどうしようかと考えて作ったところもありました」