2024年7月12日に東京・渋谷のWWW Xで開催された〈XinU EP #03 RELEASE LIVE!〉。今回もソールドアウトしたこの公演では、新作『XinU EP #03』の収録曲はもちろん、驚きのカバーソングも含むセットリストで、また一段と成長したXinUの歌や音楽が鉄壁のバンドとともに披露され、実に幸福な一夜になった。キャリアのスタートからXinUに取材し続けている音楽ライターの内本順一が、当日の模様を伝える。 *Mikiki編集部


 

パフォーマンスを強化させた〈一緒に〉の気持ち

「みんなで楽しんだり揺れたりできる曲を書いてみようというのが、(『XinU EP #03』の)自分のなかのテーマでした。〈一緒に踊ろう〉とまではいかなくても、一緒に揺れることができたらいいなと。だからツアーのコンセプトも〈一緒に揺れよう〉になったんです」。

先頃リリースされたニューEP『XinU EP#03』についてのインタビューでXinUはそう話していたが、まさしくこの日満杯の会場にいた観客の多くが曲に合わせて一緒に〈揺れていた〉。〈みんなで楽しんだり揺れたりできる曲を書いた〉ことの成果が目に見えて表れていたわけだ。

でも、それだけじゃない。〈いい気持ちで揺れることができた〉だけではない。ライブ全体の構成が実によく練られていたし、いくつかの曲は〈あの曲がこんなふうに演奏されるの?〉と驚いてしまうくらいに斬新なライブアレンジが施されていた。何よりXinUがバンドメンバーだけでなく、観客たちのことも信頼しながらライブを進めていたのがよかった。〈一緒に〉の気持ちがこれまで以上にグッと前に出て、それがパフォーマンスそのものを強くしていたという印象だ。みんながいて私がいる。その実感が自信となり、喜びとなり、歌声の伸びやステージ上の動きに繋がっていた。何しろ彼女は生き生きと歌っていた。音楽っていい。ライブっていい。ライブが私を生き生きとさせる。そのような思いを彼女はこの夜、改めて強く持ったに違いない。

 

観客参加型の“Clap! Clap!”で生んだ自然な一体感

白のノースリーブという夏っぽい装いでステージに登場したXinU。オープナーは昨年夏発表の爽やかな“とけてゆく”で、「タッター・タッタ」というアカペラ的な始まりから引き込まれた。バンドは庄司陽太(ギター)、山本連(ベース)、大津惇(ドラムス)、武藤勇樹(鍵盤)、Haruna(コーラス)というお馴染みのメンバーで構成され、R&B色の濃い2曲目“Hora Hora”では早速サックスの海野あゆみも加わって音を重ねる。曲の終盤に伸びやかなフェイクを入れたことでXinUの歌唱は音源よりもエモ成分が増していた。

3曲目“余裕綽々”に続いては、2023年のWWWワンマンで初披露された“80’s”。未だ音源化されていない曲だが、a-haの“Take On Me”を想起させる80s的なドラムビートがなかなかに刺激的。XinU楽曲のなかで最もロック的な躍動があり、とてもライブ映えする曲だ。

うっすらとエレクトロ音の敷かれた“愛おしいままで”に続いては、「みんなに参加してほしい曲を作りました」と言い、一緒にクラップを入れる練習をした上で、ニューEP収録の“Clap! Clap!”を。このように観客参加型の曲を作ったことでライブの双方向性が高まり、自然な一体感を生むことにもなったわけだ。

次の曲“合図 EYES 合図”を歌ったあと、XinUは一旦引っ込んで衣装チェンジを。その間には過去のMVの一場面を繋いだ映像が映され、バンドは海野あゆみのサックスをフィーチャーしたスムースジャズ的なインスト曲を演奏した。そしてXinUのポエトリーリーディングがそこに乗る。こうしたインタールードの見せ方・聴かせ方も気が利いていて飽きさせない。

 

こんなにエモーショナルなXinUは初めて

“揺らせ”からの後半戦はこの日ならではのスペシャルなアレンジや演出がいくつかあって、ライブはさらに熱を帯びていった。まず、昨年春にedblとタウラ・ラムと共に制作されたR&B曲“罠”。我々が聴いていた音源とは大きく異なる大胆なアレンジに驚きながら引き込まれた。しばらくの間そこには楽器音が一切入らず、透明感ある多重コーラスの上でXinUがアカペラで歌うというあり方。コーラスはサウンドとして透き通っているのだが、XinUのボーカルはむしろ剥き出しでこの曲の歌詞の情感を伝えてくる。2番からバンドの演奏が入ったが、XinUのボーカルはそこでますますエモーショナルの度合いを強めた。終盤ではフェイクも効かせて聴く者たちをさらにグッと引き込む。こんなにもエモーショナルなXinUは初めてだ。と、自分はそう思ったし、この日観客たちの拍手が最も大きかったのも間違いなくこの曲を歌い終えたときだった。

一転、軽やかなタッチの“ありがとうさよなら”を歌い、間奏部分では庄司陽太のギターソロが映える。それに続いては、「去年と今年、カバーをいっぱいやったので、夏アレンジでお送りします」と言って、カバーを3曲メドレーで。山下達郎“SPARKLE”、久保田利伸“LOVE RAIN ~恋の雨~”、ニール・セダカ“雨に微笑みを(Laughter In The Rain)”。いずれもラヴァーズロックのアレンジが施され、XinUのボーカルの陽性の部分が活きていた。ラヴァーズロックとXinUの相性や、よし。いつかラヴァーズロックミニアルバムなんていうのも出してほしいと思ったりも。因みに“LOVE RAIN ~恋の雨~”と“雨に微笑みを”は雨の曲だが、このメドレーの次に歌われたオリジナル曲は“やまない雨”。雨繋がり。しかもこの日は雨降りで、選曲は天候を予言していたかのようだ。

その“やまない雨”は、ギターの庄司に「ギター、2本ありますよね。1本借りてもいいですか?」と断った上で、庄司とXinUの2ギターで披露された。アコギを弾いてしっとりと歌うXinU。エレクトリックギターで間奏に色を付ける庄司。最後、「離さないでよ 手を」と何度も繰り返すXinUの歌声が祈りのように響いた。

「みんなも私も、断言できない、正解がない、大人になったら解決するんだろうなと思ったことが何一つ解決しない、そういうものを抱えて生きていて、だけどその複雑さは共感し合えるものなんだなって、自分で曲を書いて、聴いてくれる人の言葉を聞いて思って。別に断言しなくてもわかりあえてるんだ、繋がっているんだという、その感覚に私は励まされています。次に歌う曲も私が私と向き合って、みんなとまた繋がれたらいいなと思って書いた、今の私の現在地を表わす曲」。そう話して次に歌ったのは、『XinU EP #03』の最後に収められていた“ただ見つめ合っても”だった。メロウなメロディ、武藤勇樹のピアノの音に、まさしくXinUの〈今の思い〉が乗る。たとえ曖昧さや臆病さが元にあって書かれた曲だったとしても、「光の中のわたしに/またきっと会える」という思いは、〈いま私の歌がみんなに届いている〉〈繋がることができている〉という確信と共にこのとき一層強まったに違いない。

 

シンガロングやダンサー登場で盛り上がりは頂点に

しっとりめのトーンから、本編終盤は楽しく明るいトーンへ。「みんなも一緒に歌いますかー?!」と投げかけて、ライブに欠かせない“鼓動”を。終盤では「オ~・オ~・オ~」のコーラス部分を観客みんながシンガロング。そんな一体感を経て、ライブはさらなる盛り上がり時間に。

「めちゃくちゃ夏な曲を作りました。“触れる唇”。みんなミュージックビデオ観た? 今日はスペシャルゲストが来てくれてます。ミュージックビデオでキレキレのダンスを踊ってくれたダンサーたちを紹介します!」。そう言ってダンスアーティストグループのGANMI(ガンミ)に所属するshun、Dyson、O.S.M.、AOIの4人を呼び込んだXinUは、2024年の夏ソング決定版として最近ラジオでもかかりまくっている“触れる唇”を明るい笑顔で歌唱。ダンサー4人の揃いの振りに合わせて、XinUも肩を入れながら〈揺れ以上・ダンス未満〉のパフォーマンスを見せた。そして大きな拍手と歓声のなか、本編の最後を“いつのまにか”で締めたのだった。

 

ライブアーティストとしての大きな飛躍

アンコールに応え、「友達呼びます!」と言って、サックスの海野あゆみを呼び込むXinU。「多い時は週に3回くらい会う友達」「デビューする前からたくさん支えてもらってます。音楽も、それ以外も」。そう話して、XinUのアコギ&ボーカル、海野のサックスだけで演奏されたのは“もうやだ”だった。XinUの弾き語りでフォーキーに始まったその曲は、しかし途中で海野のサックスが入ると都会の夜に相応しいムードに。「この街この部屋」という歌詞が途端にリアリティを持った。

その曲のあと再びバンドメンバー全員を呼び込んで、“オモイオモワレ”を演奏。幸福感が会場を包み、これで終わりかと思われたが、拍手は鳴り止まず。「じゃあもう一曲、“触れる唇”やっていいですか?!」と、Wアンコールでもう一度、今度はオケを使ってではなくバンドでその曲を。今年の夏がいつにも増して楽しく輝いたものになるだろうと、ダンサーたちと動きを揃え、ひと際嬉しそうな表情で歌うXinUを見ながら誰もが思ったことだろう。

昨年11月の渋谷WWW公演から8ヵ月。バンドメンバーたちとの呼吸はますます合って高質なグルーヴが生まれ、また観客との向き合い方も変化し、ライブアーティストとして大きな飛躍を遂げたXinU。12月26日にはLIQUIDROOMでワンマンを行なうことも発表されたが、このWWW X公演で彼女が得たものの全てが、さらに膨らみを持ってそこに現れることになるだろう。待ち遠しい。

 


SETLIST
1. とけてゆく
2. Hora Hora
3. 余裕綽々
4. 80’s(未発表曲)
5. 愛おしいままで
6. Clap! Clap!
7. 合図 EYES 合図
8. 揺らせ
9. 罠
10. ありがとうさよなら
11. Cover me Lovers Rockメドレー(SPARKLE / LOVE RAIN / Laghter in the rain)
12. やまない雨
13. ただ見つめ合っても
14. 鼓動
15. 触れる唇(ゲストダンサー:shun & Dyson & O.S.M & AOI(from GANMI))
16. いつのまにか

ENCORE
17. もうやだ
18. オモイオモワレ

W ENCORE
触れる唇
ココカラ

 


RELEASE INFORMATION

XinU 『XinU EP #03』 Co.lity Music(2024)

リリース日:2024年6月26日(水)

■CD
品番:POCS-23044
価格:3,000円(税込)
紙ジャケ仕様

TRACKLIST
1. いつか消えても
2. 触れる唇
3. 愛おしいままで(2024年3月13日(水)先行配信)
4. Hora Hora(2024年5月29日(水)先行配信)
5. Clap! Clap!
6. 余裕綽々
7. ただ見つめ合っても

 

LIVE INFORMATION
XinU LIVE!
2024年12月26日(木)東京・恵比寿 LIQUIDROOM
開場/開演:18:00/19:00
Livepocket(プレミアムチケットあり):https://t.livepocket.jp/e/a83qj 
イープラス :https://eplus.jp/sf/detail/4143290001-P0030001P021001?P1=1221

■Ticket
一般前売チケット:5,500円(スタンディング)
前方エリア前売チケット:7,700円(前方エリアスタンディング)
U-22チケット:3,800円(2002年生まれの方までが対象)

プレミアムA:27,500円【限定数12】 ※SOLD OUT
プレミアムA指定席
直筆サイン入りメッセージボードスペシャル限定グッズリハツアー参加権付き
16:00より45分間のツアーとなります

プレミアムB:24200円【限定数10】※SOLD OUT
プレミアムB指定席
直筆サイン入りメッセージボードスペシャル限定グッズリハツアー参加権付き
16:00より45分間のツアーとなります

プレミアムC:18,700円 ※予定枚数販売次第終了
前方エリア優先入場スタンディング
スペシャル限定グッズリハツアー参加権付き
16:00より45分間のツアーとなります

プレミアムD:13200円
前方エリア優先入場
スタンディングスペシャル限定グッズ

プレミアム〈手書きセットリスト〉チケット:70,000円【限定数1抽選販売】
初のリキッドルーム公演の直筆セットリスト
指定席プレミアムAの位置+スペシャルグッズ+サイン入りボード
リハツアー参加権
ライブポケット抽選

※前方エリアプレミアチケットは限定数売り切れ次第終了。早期の売り切れが予想されます。
※プレミアムA指定席は中央でスタンディングエリアより一段上の独立した空間になっています。PA卓前で非常に見やすい席になっています。12席のみの発売になります。
※プレミアムB指定席は中央でステージまで障害物がなくステージ全体を見渡せる席になっています。こちらもPA卓後ろで非常に見やすい席になっています。10席のみの発売になります。
※初のリキッドルーム公演の直筆セットリストはXinUがライブのためのMCなどを書き込んだ一つしかないセットリストになります。実際にステージで使用したものを額装してお渡しします。

■U-22チケットについて
※当日年齢を確認できる身分証明書(運転免許証、学生証、パスポート、身体障害者手帳、マイナンバーカード等)をお持ちください。
※年齢は各公演当日の年齢となります。
※期限の切れたものは無効となります。また、公的に発行された状態のままお持ちください(コピーは不可)。
※年齢確認ができない場合は、入場をお断りさせていただきます。
※年齢を確認できる身分証明書をご持参いただけない場合、スタンディング料金との差額を頂戴いたします。

 


PROFILE: XinU
ミュージックコレクティブ、XinU(シンユウ)。あなた〈U〉にクロス〈X〉するをキーワードに、今Tokyoで鳴っているサウンドと、自然体でありながらも芯をついた日本語詞で〈今〉を切り取っていく。R&B、ジャズ、ヒップホップ、フォークロアを飲み込む新たなサウンドは〈Neo Tokyo Cross Over Rock Jazz Damn!!〉と称して、ボーダレスに音楽の未来を切り開いていく。2021年10月、“ココカラ”でデビュー。透明感がありながらもスモーキーなそのボイスに注目が集まっている。
オフィシャルサイト:https://www.xinu.tokyo/
Instagram : https://www.instagram.com/xinu_xinu_xinu/
X:https://twitter.com/XinU_XinU_XinU
YouTube : https://www.youtube.com/channel/UCaEGvhUVSDom48xpZpebeAw
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