デビューから2年間の集大成とも言える初フルアルバム『XinU』(2023年)から1年。6月26日にリリースとなったニューEP『XinU EP #03』は、XinUの新章スタートを感じさせる作品だ。デビュー時からXinUを支えるM-Swiftこと松下昇平や、サウスロンドンの音楽シーンを抜群のセンスで盛り立てるedblが今作でもアレンジやプロデュースを務めているが、加えてXinUのセルフプロデュース曲も3曲収録。サウンドにおいても歌詞においてもその個性がより強く前に出るようになり、今までよりも彼女のことが近くに感じられるEPとなった。

明るく、爽やかで、カラダを揺らしながら夏に聴くのにピッタリの『XinU EP #03』。そこに込めた思いを聞いた。

XinU 『XinU EP #03』 Co.lity Music(2024)

 

ロンドンでの即興セッションで開いた新しい扉

――1stフルアルバム『XinU』から1年が経ちました。充実した1年になったのでは?

「はい。去年は5月の末にアルバムのリリースがあって、6月に代官山UNITでワンマンがあって、11月には渋谷WWWでワンマンがあって。その間にロンドンに行ったのは、私的にかなり大きな出来事でした」

――ロンドンは何月に行かれたんでしたっけ?

「8月に1週間行きました。そのときにedbl(エドブラック。サウスロンドンのプロデューサー/トラックメイカー)と会って、1日に5曲分くらいのアイデアを固め、そこから完成させた曲が今回のEPに入っています」

――ロンドン滞在中、ほかの日にはどんなことを?

「バーでセッションに参加したんですよ。バーというかライブレストランというか……ライブもやれるパブみたいな感じかな。みんながビールを飲みながら音楽も楽しんでいて。

バンドのベースが日本人の方で、〈なんか歌いなよ〉って言われたので、1曲ジャズスタンダードを歌ったんです。そうしたら〈もう1曲やろう!〉となって、日本語ですけど“オモイオモワレ”を即興でやってみようってことになり。コード進行もループなので、その場で演奏してもらって勇気を出して歌ったら、みんなが〈イエ~~イ!〉なんて感じで盛り上がってくれて。あれは初めての体験でしたね。日本語の歌詞で意味は通じなくても、こんなに楽しんでくれるんだ?!  音楽ってすごいなって。ドキドキでしたけど、楽しい気持ちのほうが勝っていました」

――いつもはシャイなXinUさんが、そのときは思い切っていけた。

「いけたんですよね。それで、帰る前の日には中心部から離れたマイル・エンドという駅近くの公園のなかにポツンとある〈The Palm Tree Pub〉というパブに行って、そこでは松下さん(XinU楽曲のアレンジとプロデュースを手掛けるM-Swiftこと松下昇平)のお知り合いのミュージシャンの、アンディ・ガンガディーンさん(ドラムンベース界のレジェンドでジェフ・ベックのバンドでも叩いているドラマー)とニック・コーエンさん(ジャック・ブルースやマット・ビアンコとの活動でも知られるベーシスト)がセッションしていたんですけど、急に振られて“合図 EYES 合図”を歌うことになって。そういう場所に出て即興で歌うなんて自分には無理だと思っていたんですけど、今でもその動画を見返すくらいに楽しかった。とにかくグルーヴがすごくて、初めて合わせたのに全てが揃っているような驚きがありました」

――新しい扉が開いた感覚があった。

「ありましたね。旅行で海外に行くことはあっても、そんなふうにリアルな音楽体験をすることはなかったので。あのロンドン体験は私のなかで相当大きかったです」

 

NakamuraEmi & MASSAN × BASHIRYのエネルギーに触発されて

――今年3月には〈XinU presents Collective〉という自主企画のプチフェスもありました。あれはどういったところから?

「リリースタイミングとかではないけど、何か面白いライブをやりたいなって思ったときに、自分の好きな人たちをお招きして一緒に何かやれたらリスナーさん含めて輪が広がるんじゃないかって話をして。広い意味でのミュージックコレクティブというか、カルチャーみたなものになるといいなと思って始めました。それですぐに〈じゃあ、誰呼ぶ?〉って話になって、私の好きな人をピックアップしたんです」

――ぷにぷに電機とHIMI、さらにはDJも2人いて。

「自分がナマで聴きたい人たちに出ていただいて、私のわがままを叶える日みたいになりました(笑)。外では私の衣装を担当してくれているスタイリストさんやよく行く古着屋さんにフリーマーケットをしてもらったり、知り合いのお店にワインや軽食の飲食ブースを出店してもらったり、大学時代を過ごした桐生のクラフトビール屋さんにも出店してもらったり、お店を全部で7店舗も出して。本当に楽しい1日でした。またやりたいし、みんなに〈出たい!〉って思ってもらえるものにジワジワとなっていったらいいですね」

――あとは最近だとNakamuraEmiさんのアルバム『KICKS』(2024年)に1曲参加していましたよね。“Hello Hello”。あれはどういった経緯で?

「1月にEmiさんとMASSAN × BASHIRYさんがクラブチッタで〈迎春〉というライブをやっているんですけど、今年はそこにもう1組誰か入れようってことになったらしくて。私がMASSAN × BASHIRYさんと何度かライブをやったことがあったので、〈XinUがいいんじゃない?〉と名前を挙げてくださったようなんです。EmiさんはEmiさんで、インスタで私の弾き語り動画を偶然見てフォローしてくださっていたみたいで。

それでEmiさんチームとMASSAN × BASHIRYさんが途中まで作っていた曲のブリッジをつける際、その部分の作詞作曲をやってほしいと声をかけてくださったんです。その曲はライブで披露するために作ったものなんですけど、ライブでやったあと、XinU入りのバージョンでレコーディングしようって話になったらしくて」

――自分以外の誰かのレコーディングに参加するというのは……。

「初めてでした。いつもは松下さんのスタジオに行って納得いくまで思う存分歌うわけですけど、そうやってほかのスタジオに出向くこと自体が初めてだったし。しかもEmiさんとMASSAN × BASHIRYさんはライブみたいな録り方をするんですよ。3回くらい通して歌って、アドリブのところは〈せーの〉でやって、〈OK!  よかったね!〉なんて感じでサクサク進むんです。もう、そのエネルギーがすごくて。何度もやり直したりしないで、一回でキメにいく。だから私も〈やってやる!〉みたいな感じで臨んで、ライブで歌っているときの自分を思い出しながら歌いました。みんなのエネルギーに触発されて、いつもは出ないような声が出た」

 

一緒に揺れよう

――では、ニューEP『XinU EP #03』の話をしましょう。フルアルバムをリリースしたあと、けっこう早くから準備にとりかかっていたんですよね。

「はい。ロンドンから帰ってきたくらいから本格的に作り始めました」

――作り始める段階で、ある程度のイメージはあったんですか?

「ライブもいっぱいやって楽しくなってきてたし、ロンドンのバーやパブでみんなが自由に楽しんで踊ったりしているのを目の当たりにしたこともあって、今度のEPはみんなと楽しさを共有できるものにしたいと思っていたんです。シリアスに内面を伝えるのではなく、単純に楽しんだり揺れたりできる曲も書いてみようと。それが出発点でした。ちょっとダンサブルな曲も入れたいな、と」

――聴いた印象として、前の2作のEPよりも明るいなと思いました。曇りの日や夜に聴くより、夏のよく晴れた日に聴くのに向いていそうな曲が多い。

「そうですね。明るいとか、前向きとか、そういうことを意識してのスタートでした」

――ロンドンで数曲のアイデアを固めたと話していましたが、そうやって普段と環境を変えながらの制作だったことが明るさに繋がったところもあったのでは?

「それはありますね。冬には松下さんと庄司さん(庄司陽太。ギタリスト)と3人で、相模湖で作曲合宿みたいなこともやったんですよ。2日間スタジオを借りることができて、そこでも何曲かのアイデアを固めました。緑が見えて開放的だし、SNSとかも一旦止めて音楽に集中して。3人でゴハン食べて、また曲を作って、みたいな。環境を変えるのも大事ですね。“触れる唇”はそこでできた曲なんです」

――ズバリ、このEPのテーマは?

「さっき言ったみたいに、みんなで楽しんだり揺れたりできる曲を書いてみようというのが自分のなかのテーマでした。〈一緒に踊ろう〉とまではいかなくても、一緒に揺れることができたらいいなと。だからツアーのコンセプトも〈一緒に揺れよう〉になったんです」

――〈揺れる〉というワードが好きですよね。

「確かに。いろんな曲の歌詞に出てくる(笑)。踊れないので、せめて揺れたいという気持ちの表れなんでしょうね」

 

いいムードを作ってくれるedblのプロデュース

――ここから1曲ずつ聞いていきますね。まず“いつか消えても”。これって昨年11月のWWW公演で初披露した曲ですよね。

「そうです」

――edblとの共作曲で、ギターとプログラミングとプロデュースも彼が担当しています。

「ロンドンで会ったときに、〈こんな感じでどう?〉みたいに進めてくれて。〈じゃあ、試しに歌を録ってみようか〉ってなって、私が鼻歌でざっくり歌ったら、〈ナーイス!!〉とか言って(笑)。エドは進め方が上手いんですよ。〈僕たち、ナイスコンビネーションだね!〉とか言いながら、いいムードを作ってくれる。

その日は天気がよくて、古き良き建物の彼のお部屋も日当たりがよくて、気持ちのいい空気がそのままこの曲のサウンドに反映されたように思います」

――明るめの曲調だけど、歌詞は決して明るいだけではない。

「1番ではうまくいきそうなんだけど、2番でどんでん返しがあって切ない感じになるというのをやってみたくて。サウンドがひたすら気持ちいいから、歌詞も気持ちいいものにしようかとも思ったんですけど、やっぱりどうしても切ないところを入れたくなったんです」

――〈真夜中に揺れる天井に/秘密塗り重ねては〉といったところなど、ムードとしてほどよくセンシュアルでもある。

「“罠”もそうでしたけど、そういうムードを漂わせるのが好きなんだと自分で思います」

 

今回の隠れテーマは夏だね

――2曲目“触れる唇”はリード曲。まさに夏!って感じの曲ですね。というか、この曲に限らず、EP全体に夏感がある。

「そうですね。作り始めた頃に、〈今回の隠れテーマは夏だね〉って確かに言ってました。“触れる唇”はそれを象徴する1曲になったと思います」

――サウンドもキラキラしていて、後半で3管が入るところでさらに華やかさが増す。

「3管アレンジのところは私もすごく気に入っています。あと、パン!ってクラップを鳴らすところは、ライブでみなさんにやってもらえたら嬉しい」

――こういった〈ひと夏の恋〉を歌った曲は、昔の歌謡曲なんかによくあったけど、最近はあんまりなかったかも。

「自分でもこういう歌詞を書いたのは初めてでした。いつもはけっこう思い詰めて書いちゃうんですけど、夏の曲だし、ラクに書いてみようと思って。そうしたら聴く人も楽しくなれるんじゃないかと。

キスの流れで相手の瞳のなかに潜り込んで、その瞳の内側から自分を見るっていう、ちょっと気持ち悪いことを思いついて(笑)、〈気持ち悪い歌詞を思いついたんだけど、どうしよう?〉ってXにもポストしたんですけど、けっこう楽しんで書くことができましたね」

――〈予定狂わせてばっかのこの夏〉とか、歌詞に遊びがあるのがいい。

「ボーカルも、いつもはめっちゃ練習してからレコーディングに臨むんですけど、この曲は〈練習しないで来てください〉と松下さんに言われて、本当に練習しないで行きました。〈とびっきり/だらしなくて/予定狂わせてばっかのこの夏〉と歌詞にあるので、いい意味でだらしなく歌うことを意識したんです」

 

傷ついた記憶を忘れないまま歩いていくのも私らしいかな

――3曲目は“愛おしいままで”。3月に先行配信された曲ですが、ギター、ピアノ、ベース、ドラムと、いつものライブのミュージシャン全員と録っている。こうしてバンドで録った曲って、今までなかったですよね。

「初めてです。そもそもいつもは生ドラムじゃなかったから。この曲はアコースティックサウンドで進んでいくんですけど、途中のある部分だけ生ドラムとグランドピアノを入れたいって話になって、そのためだけにスタジオをとってみんなに来てもらったり。そうやってみんなで録れたことは思い出深いですね」

――初めに聴いたときは中盤のループ部分が印象的だったけど、聴き返すうちにアコースティックサウンドが耳に残るようになってきて。なかなか凝ったアレンジですよね。

「ふふふ。シメシメ(笑)」

――あ、そこが狙いだったと。

「はい。初めにラウヴの曲からインスパイアされてループ部分ができて歌詞も書き始めていたんですけど、松下さんと話して、1番があって2番があってという構成じゃなく、曲が進むうちにどんどんエネルギーが高まっていく感じをやってみようってことになったんです。アコースティックギターから始まって、途中でビートが混ざって、だんだんと壮大になる。そういうサウンドに挑戦してみたかった」

――歌詞はどういったところから?

「傷ついた記憶ってなかなか消えないけど、無理に忘れなくてもいいんじゃないかって思ったときがあって。忘れないままで歩いていくのも私らしいかな、みたいな。むしろそういう記憶が愛しいとさえ思えてきたときに、〈忘れないままで/愛おしいままで〉って書いてみたんです」

――傷ついたり悩んだり逡巡したりして、最終的に吹っ切って前に進もうと決意する。これもそうだけど、XinUさんにはそういう歌が多いですよね。

「私がそういう人なんですよね。どんどん内に向かっていって、あるときふっと我に返って、〈吹っ切らなきゃ!〉って思って一歩進むっていう。こうじゃない進み方って、どうすればできるんですかね?」

――ははは。まあ、多かれ少なかれ、人はみんなそういうところがあるかもしれない。

「そうですよね。私がこういう人間なので、聴いた人が〈あ、この人もそうなんだ?!〉って思って少しでも気持ちがラクになってくれたらいいんですけど」

 

ありのままでいてよ、あなたのいいところを私は知ってるよ

――4曲目は5月に配信された“Hora Hora”。R&B色の強い曲です。

「これは初め、ピアノで作っていて。ワンコーラスのメロディを鼻歌で作って松下さんに送ったら、〈これ、もうできてるじゃないですか?!〉って言われたんです。歌も最初からあの感じで歌いたいと思っていました」

――メロディに対しての言葉のハマり方も気持ちいい。

「うまくハマると嬉しいんですよ。〈よし、ハマった!!〉みたいな。最初のEP(2022年作『XinU EP #01』)のときにはうまくできなかったことのひとつですね。いまはもっと細かく言葉をハメられるようになりました」

――歌詞は、自己肯定感の低い相手に対して、そのままでいいんだよ、そのままでいてよと言っているのかな。

「私より下の世代に知り合いがいるんですけど、そのコの世代って、高校のときからSNSを普通にやって、見た目主義のところがあるからアプリを使いこなして顔を加工して写真撮ったりとか、少し心配になってしまうところがあって。まあ本人が幸せならそれでいいし、私がとやかく言うことではないんですけど、そういうのって止まらないじゃないですか。飾りをつけすぎたり塗り重ねたりしているうちに本当の自分を見失うようなことがあったら辛いなって思って。

だから、ありのままでいてよ、そのままでいてよって。あなたのいいところを私は知ってるよって言いたかった、勝手に」

――そのコにも届いているといいですね。

「はい」

 

未完成な私たちをクラップで讃えよう

――5曲目“Clap! Clap!”。このEPのなかで、とりわけインパクトがあったのがこれでした。ニューXinU感がある。曲調もサウンドもすごく新鮮ですよね。トロピカルな感触もあるし。

「よかったぁ。私的には新しすぎて、聴く人がどう感じるのかちょっと心配だったんです。

これは初めにベースのところと自分のコーラス部分のアイデアだけ松下さんに送って。デモを5曲くらい作ったときに、これは採用されないだろうけど、せっかくできたから一緒に送っておこうくらいの気持ちで送ったんですよ。そうしたら松下さんが〈新しい面が出ているので、これを完成させましょう〉と言ってくれて。送っておいて言うのも変ですけど、これを完成させるのは私には無理だとそのときは思ったんです」

――どうしてそう思ったんですか?

「いままでやったことのないジャンルだったから、ここにどんな歌詞をのっけたらいいのかわからなくて。楽しい感じだけど、そのまま楽しい言葉をここに乗せるとアホみたいな感じになるんじゃないかと(笑)」

――はははは。

「でもそんなときにデビューの頃から写真を撮ってくれているSakiho Kawakuboさんと話していたら、〈XinUはいつも私にとって必要な言葉、ポジティブな言葉をくれる。ジャンヌ・ダルクみたいな人だよ〉って言われて。そんなふうに思っていたの?って驚いたのと同時に、私は彼女に対して何かいいことを言おうと喋っていたのかな、それって本当の私なのかなって、あとで考えちゃったんです。自分には嫌な面もたくさんあるのに、いい顔見せたいって思っていたのかな、とか。でもそのとき話したことは嘘じゃない。本当のことだし、本当の自分であったらいいなって。そう考えて、じゃあそれをテーマにしてみようと思って書き始めたのがこれなんです。

で、書いている途中、仲良しのシンガーの友達やサックスの海野あゆみさんと話をしていて、〈私たちってどこまで行ったら完成なんだろうね?〉なんて会話もして」

――それは人間としてってこと?

「人間としてもミュージャンとしても、どこまで行っても未完成なままだよねって。だけどもっとよくなりたいと思っているから進もうとするんだし、頑張ろうって思えるんだよねって、そんな話をしたんです。

そういう友達との会話から自分を見つめ直すことにもなったし、それを曲のなかにも入れ込みたいなと思って、こうなりました。ずっと未完成だし、四六時中悩んでばかりいるけど、考えようによってはそれは前向きなことでもあるんだから、そんな私たちを私たちが認めよう、クラップで讃えよう、っていう」

 

雨に打たれても輝いちゃおう

――続いて6曲目は“余裕綽々”。ブラジリアンフレイバーを感じさせる涼し気な曲。トラックとプロデュースがedblで、メロディとコーラスアレンジを“罠”同様、タウラ・ラムさんが手掛けています。

「“罠”もそうでしたけど、edblトラックにタウラメロディが乗ると最高にかっこいいんですよ。タウラが英語で歌っているデモがもうかっこよすぎて、これは絶対に自分で歌いたいという気持ちと、タウラのデモを果たして自分が超えられるだろうかという気持ちの両方が初めは入り混じっていました。

それで、とりあえずタウラさんの英語詞をしっかり聴いて、そこから思い浮かんだ日本語を歌詞にしてみようと思って。それをしているときに、〈よ・ゆう・しゃく・しゃく〉って言葉がメロディと合って出てきた。

2番の歌詞は、さっきの“Clap! Clap!”の話にも出てきたシンガーの友達との会話から書いたもので、アーティストとしての振る舞いを期待されたり中途半端なプレッシャーを背負わされたりして面倒くさくなるときもあるけど、でもそんなことで挫けないで、余裕綽々で闊歩していこうよ、みたいな。雨に打たれても、逆に輝いちゃおうっていう気持ちになって、それを書きました」

――歌入れはスムーズにいきましたか?

「タウラさんがコーラスアレンジのアイデアをいっぱい入れてくれたんですけど、その種類が多かったからどういうふうにしたら一番かっこよくなるかを試行錯誤して。気づいたらボーカルトラックが100以上になってて。3日間くらいかかっちゃいました」

――余裕綽々ってわけにはいかなかったと。

「全然(笑)。アップアップしながらやってました。でも絶対にかっこよく歌いたいという執念で、諦めずに」

 

今の私の悩みや思いを飾らずに出したい

――7曲目は“ただ見つめ合っても”。これ、僕は一番好きですよ。

「おおっ、嬉しい!!   私も一番好きです」

――メロウで、シンプルで。素直なメロディのよさが際立っている。武藤勇樹さんのピアノがすごくいいですよね。

「グランドピアノを弾いてもらいました。ノラ・ジョーンズ的な雰囲気で」

――確かにノラの1stアルバム(2002年作『Come Away With Me』)に通じる柔らかなピアノとR&B的なギターリフの合わさり具合が絶妙で。

「最初はギターの庄司さんといつものセッションみたいに作っていて、〈こんなリフはどうですか?〉って庄司さんが言って弾いてくれたのがイントロのあのリフなんです。

で、これは絶対にいいものに完成させたい!って思って、松下さんが〈メロディは僕に任せてください〉と言って、そのあと細かく計算されたメロディが松下さんから送られてきた。それを聴いた時点で私も鼻歌っぽく歌っていて」

――XinUさんの歌声のとりわけ魅力的なところがここに詰まっているという印象です。無理せずメロディの流れに素直に歌っているというか。

「“罠”とか“いつのまにか”とか、けっこう高音域で歌う曲が続いていたので、低音域が活かせる曲にしたかったんです。それを実現できた曲になったし、話すような感じで無理なく歌えましたね」

――歌詞はどんなことを考えて書いたんですか?

「今の私を素直に出したい、30歳前後の世代ならではの悩みとか思いとかを飾らずに出したいと思って書きました。自分への問いかけも含まれています。もう少し若いときは何も恐れずに飛び込んだりしていたけど、今はどうなのか、それができるのか、とか。やっぱりどこか臆病になっているところがあるんじゃないかとか。これを書いたときは、何かに対して予防線を張るような自分がいたりもしたので」

――それは仕事に関して?

「仕事でもプライベートでも、以前ほど思い切って飛び込んでいけない自分を感じていたんです。でも、これを書いたときと今の自分でまた少し違っているんですけど」

――〈そのままでこのままでいけばいい/って歌があっても/そうもいかないのが/大人なのか〉というフレーズがリアルですね。

「自分でも“Hora Hora”で〈ありのままでいられたら〉って書いているんですけど、でもなかなかそうもいかないよねって思っている自分もいて、どっちも本当のことで。それを素直に綴った日記みたいな曲ですね。でも最後は前向きに〈光の中のわたしに/またきっと会える〉というふうにしました」

――思いきっり前向きじゃなくて、少し前向き。少しの希望を持たせて終わりたかった。

「はい」

 

言葉の壁を越えて繋がりたい、繋がっていけそう

――因みにジャケットのアートワークも、今までと少しだけ雰囲気が違いますね。

「今までは引きの写真が多かったんですけど、今回は近いですよね。ようやく自分なりの個性みたいなものとか心の中も出せるようになった気がしたので、近めでいこうって話をしてこうなりました。いつもは外で撮っていたんですけど、今回はスタジオを借りて、アートっぽい遊びもしようってことで、光線もそのままにして」

――実際、これまでよりもXinUさんを近くに感じられる作品になっていると思います。こんな人たちに届いてほしい、こんなときに聴いてほしいみたいなことはありますか?

「今回は今までより明るめだし、爽やかだし、単純にサウンドを聴いて揺れながら気持ちいいと思ってもらえたら。CDには歌詞も入っているので、それを読んで少しでも共感してもらえたら嬉しいし、誰かの背中を押すことができたら、もうそれ以上のことはないですね。

あ、あと、最近は海外の方の反応がすごくいいんですよ。インスタライブをやったりすると、〈ブラジルから聴いてるよ〉とか、〈言葉の意味はわからないけどあなたの歌は大好き〉みたいなコメントがたくさんきて。それが嬉しいですね。今度、台北とソウルでライブをやるんですけど、言葉の壁を乗り越えて繋がりたいな、繋がっていけそうだなと思っています。ロンドンのライブバーやパブで飛び込みで歌って言葉の壁を越えたあの感触が忘れられないので、それもすごく楽しみですね」

――台北とソウルの公演の前には、東京でのワンマンも7月12日に渋谷WWW Xでありますね。こちらも楽しみですが、今言えることはありますか?

「ダンサーが4人入ります。 “触れる唇”のMVにも出演いただいた方々です。去年のWWWでもGANMIのメンバーのShunさんとDysonさんに出ていただきましたけど、O.S.Mさん、AOIさんも加わって、今度は4人にパワーアップして出演していただくので、楽しみにしていてください」

――最後に最近よく聴いている音楽があったら教えてください。

「RECORD STORE DAYに関するJ-WAVEの番組で、レコード屋さんに取材に行って紹介するナビゲーターを初めてやらせていただいたんです。東急大井町線の中延駅近くにある〈春の雨〉というアンビエントミュージック専門のお店を取材してから、アンビエントのレコードを買ったり聴いたりするようになりました。2年くらい前に京都の展示〈AMBIENT KYOTO〉で聴いてからちょっとずつハマっていったんですけど、お店を取材してさらに好きになって。このEPの制作が終わってからは家でずっとアンビエントが流れています」

――へえ~。XinUさんとアンビエント、相性がよさそう。いつかXinUさんなりにアンビエントにアプローチした作品なんかも聴いてみたいものです。

「最近はいろんな音楽に興味があるので、そういうのもいつかやってみたいですね」

 


RELEASE INFORMATION

XinU 『XinU EP #03』 Co.lity Music(2024)

リリース日:2024年6月26日(水)

■CD
品番:POCS-23044
価格:3,000円(税込)
紙ジャケ仕様

TRACKLIST
1. いつか消えても
2. 触れる唇
3. 愛おしいままで(2024年3月13日(水)先行配信)
4. Hora Hora(2024年5月29日(水)先行配信)
5. Clap! Clap!
6. 余裕綽々
7. ただ見つめ合っても

 

LIVE INFORMATION
XinU EP #03 Release Tour(福岡、東京、台北、ソウル)
2024年6月29日(土)福岡 Union Soda
開場・開演/終演:19:00/23:00
GUEST LIVE : XinU
GUEST DJ : Coming Soon

■チケット
前売/当日:2,000円(SOLD OUT)/2,500円
※ ドリンク別600円/並び順入場/スタンディング/ドリンク&フード持込み不可
※アーティスト〈KYNE〉の国内初となる大規模個展〈ADAPTATION〉@福岡市美術館のクロージング前夜祭パーティーでのゲストライブとなります。
チケット販売:https://t.livepocket.jp/p/unionsoda

2024年7月12日(金)東京・渋谷 WWW X
開場/開演:18:30/19:30

■チケット
一般前売チケット:5,500円
プレミアムAチケット:7,700円(前方エリア優先入場)
プレミアムBチケット:13,200円(前方優先エリア入場/サイン入り限定グッズ付き) 
U-22チケット:3,800円(22歳以下、入場時証明書提示)
チケット販売中:https://t.livepocket.jp/e/wwwx0712xinu

2024年7月20日(土)台湾・台北 PIPE Live Music
開場/開演:18:00/19:00)
チケット発売詳細は後日発表

2024年8月4日(日)韓国・ソウル West Bridge
開場/開演:16:00/17:00

■チケット
チケット販売中(yes24 ticket):http://ticket.yes24.com/Perf/49885(全世界から購入可能)
前売り:77,000ウォン(税込)

 

EVENT INFORMATION
『XinU EP #03』リリース記念インストアライブ&サイン会

2024年7月6日(土)タワーレコード新宿店
開演:19:00
タワーレコード オフィシャルサイト:https://tower.jp/store/event/2024/7/055005x

 


PROFILE: XinU
ミュージックコレクティブ、XinU(シンユウ)。あなた〈U〉にクロス〈X〉するをキーワードに、今Tokyoで鳴っているサウンドと、自然体でありながらも芯をついた日本語詞で〈今〉を切り取っていく。R&B、ジャズ、ヒップホップ、フォークロアを飲み込む新たなサウンドは〈Neo Tokyo Cross Over Rock Jazz Damn!!〉と称して、ボーダレスに音楽の未来を切り開いていく。2021年10月、“ココカラ”でデビュー。透明感がありながらもスモーキーなそのボイスに注目が集まっている。
オフィシャルサイト:https://www.xinu.tokyo/
Instagram : https://www.instagram.com/xinu_xinu_xinu/
X:https://twitter.com/XinU_XinU_XinU
YouTube : https://www.youtube.com/channel/UCaEGvhUVSDom48xpZpebeAw
TikTok:https://www.tiktok.com/@xinu_xinu_xinu