デビューから2年間の集大成とも言える初フルアルバム『XinU』(2023年)から1年。6月26日にリリースとなったニューEP『XinU EP #03』は、XinUの新章スタートを感じさせる作品だ。デビュー時からXinUを支えるM-Swiftこと松下昇平や、サウスロンドンの音楽シーンを抜群のセンスで盛り立てるedblが今作でもアレンジやプロデュースを務めているが、加えてXinUのセルフプロデュース曲も3曲収録。サウンドにおいても歌詞においてもその個性がより強く前に出るようになり、今までよりも彼女のことが近くに感じられるEPとなった。

明るく、爽やかで、カラダを揺らしながら夏に聴くのにピッタリの『XinU EP #03』。そこに込めた思いを聞いた。

XinU 『XinU EP #03』 Co.lity Music(2024)

 

ロンドンでの即興セッションで開いた新しい扉

――1stフルアルバム『XinU』から1年が経ちました。充実した1年になったのでは?

「はい。去年は5月の末にアルバムのリリースがあって、6月に代官山UNITでワンマンがあって、11月には渋谷WWWでワンマンがあって。その間にロンドンに行ったのは、私的にかなり大きな出来事でした」

――ロンドンは何月に行かれたんでしたっけ?

「8月に1週間行きました。そのときにedbl(エドブラック。サウスロンドンのプロデューサー/トラックメイカー)と会って、1日に5曲分くらいのアイデアを固め、そこから完成させた曲が今回のEPに入っています」

――ロンドン滞在中、ほかの日にはどんなことを?

「バーでセッションに参加したんですよ。バーというかライブレストランというか……ライブもやれるパブみたいな感じかな。みんながビールを飲みながら音楽も楽しんでいて。

バンドのベースが日本人の方で、〈なんか歌いなよ〉って言われたので、1曲ジャズスタンダードを歌ったんです。そうしたら〈もう1曲やろう!〉となって、日本語ですけど“オモイオモワレ”を即興でやってみようってことになり。コード進行もループなので、その場で演奏してもらって勇気を出して歌ったら、みんなが〈イエ~~イ!〉なんて感じで盛り上がってくれて。あれは初めての体験でしたね。日本語の歌詞で意味は通じなくても、こんなに楽しんでくれるんだ?!  音楽ってすごいなって。ドキドキでしたけど、楽しい気持ちのほうが勝っていました」

――いつもはシャイなXinUさんが、そのときは思い切っていけた。

「いけたんですよね。それで、帰る前の日には中心部から離れたマイル・エンドという駅近くの公園のなかにポツンとある〈The Palm Tree Pub〉というパブに行って、そこでは松下さん(XinU楽曲のアレンジとプロデュースを手掛けるM-Swiftこと松下昇平)のお知り合いのミュージシャンの、アンディ・ガンガディーンさん(ドラムンベース界のレジェンドでジェフ・ベックのバンドでも叩いているドラマー)とニック・コーエンさん(ジャック・ブルースやマット・ビアンコとの活動でも知られるベーシスト)がセッションしていたんですけど、急に振られて“合図 EYES 合図”を歌うことになって。そういう場所に出て即興で歌うなんて自分には無理だと思っていたんですけど、今でもその動画を見返すくらいに楽しかった。とにかくグルーヴがすごくて、初めて合わせたのに全てが揃っているような驚きがありました」

――新しい扉が開いた感覚があった。

「ありましたね。旅行で海外に行くことはあっても、そんなふうにリアルな音楽体験をすることはなかったので。あのロンドン体験は私のなかで相当大きかったです」