©Ayako Yamamoto

千年前の楽器と現代表現できる楽器とのコラボアルバム~最新の東儀秀樹がここに!

 約3年ぶりの新作『NEO TOGISM』。デビュー以来1年に1枚、もしくはそれ以上のペースで作品を作り続けてきたが、この3年間は機会を奪われた。

 「しょうがないよね。悔やんでも仕方ないから、動画の編集、投稿に挑戦してみたり、それこそ手にした時間で自由に作曲したり。まるで植物が生えたい方向に、根が行きたいところに進む、そんな風に音楽を作っていった。テーマも締め切りもないなかでね」

 パフォーマンスが出来ない時間は、思わぬギフトとなった。そのなかであらゆるタイプの曲を書き、また愛息とバンド演奏を楽しむなかで、ある記憶が蘇ってきた。

 「デビュー前からプログレッシブロック・テイストのものをやりたかったんだけれど、ある日笙を吹くなかで、27年以上前に笙で、古典以外の変わった表現をしてみたい。この笙の音の並びだったら、カッコいいとメモした記憶が蘇ってきた。ならば、これを発展させよう。そして、作曲しながら、27年間の経験とか、今だからこそのアイディアを注ぎ込むことも出来た。温存させたからこそ出来た曲だと思う」

 音楽制作で大切にしているのは「ひらめきに従順であること」。もともとピンク・フロイドやELPのファンで、彼の頭の中で雅楽とそれらが対等に共存している。だからこそ新作におけるロックと雅楽の融合はごく自然で、「楽器をねじ伏せてやるのではなく、今の世の中で表現できる楽器と千年前の楽器がコラボすると、こうなる」という曲が詰まっている。

東儀秀樹 『NEO TOGISM』 ユニバーサル(2023)

 オリジナル楽曲中心の編成ではあるが、カヴァーも2曲。クイーンと四人囃子の楽曲だ。

 「フレディ・マーキュリーの作る曲も歌い方も、音と音の間の滑らかな部分を大切にする作りで、その“ゆらぎ”は、篳篥の醍醐味でもあるので、僕はクイーンの歌を篳篥で歌いたくなるんですね」

 基本的にレコーディングは、毎回楽器もエンジニア関連も全て彼自身が担っている。その背景にあるのは、篳篥、笙、龍笛以外にギターやベースも演奏出来ることと、彼の頭の中で鳴っている音を具現化させるのに「一番理解しているのは僕自身」という思いだ。そのなかで、四人囃子のカヴァー“ハレソラ”では四人囃子のドラマー、岡井大二がゲスト参加し、彼との交流を生み出した愛息・東儀典親もギターを演奏している。

 それも含めて、「どこを切っても今の僕がいる。最新の東儀秀樹を聴いていただける」という意味からタイトルを『NEO TOGISM』にしたと言う。