オーケストラと相思相愛になったシンガーたち
ASKA 八神純子 KAN 平原綾香 東儀秀樹 石崎ひゅーい 尾崎裕哉
富山市のオーバード・ホールで、開館25周年記念コンサートとして〈AUBADE SYMPHONIC WAVE(オーバード・シンフォニック・ウエーブ)2022〉が開催された。ここ数年増えているポップスとオーケストラの共演だが、今回注目したのはオーケストラ・アンサンブル金沢の出演と、意外性のある出演者のラインナップだ。具体的には石崎ひゅーいと東儀秀樹である。ともにオーケストラとの共演という点で未知なるところがあったので、ワクワクしながら会場に向かった。
コンサートは、序曲から始まったが、オーケストラ・アンサンブル金沢は、毎年委託した作曲家の新曲を演奏しているような室内管弦楽団、ここにも趣向があり、クラシックではなく、出演者の曲をメドレーで演奏した。言葉を伴わず、メロディだけになった名曲のある意味実力が露わになったのと同時に、会場の期待感を煽るのに十分だった。
さて、出演者は7組。それぞれ2曲か、3曲をパフォーマンスするが、今回もトップバッターとして八神純子が登場。〈今回も〉というのはこれまでも率先して一番手を担い、彼女の爽快な歌が観客の感情をほどよく温めてきたからだ。その伸びやかなヴォーカルで、“パープルタウン”と“Mr.ブルー”を熱唱する。
2番手が前述の石崎ひゅーい。1曲目は、富山を舞台にした映画「私は白鳥」の主題歌として提供された“スワン・ソング”で、ピアノの伴奏で歌い始める。そこからの展開と2曲目の“さよならエレジー”がすごかった。オーケストラという大海原に自ら飛び込むがごとく、魂を余すところなく歌い上げていく。彼の歌の世界にオーケストラが引き込まれている。ここにオーケストラ・アンサンブル金沢の魅力を垣間見たようだった。最後に彼が叫んだ「イエ~イ!!」に深く共鳴し、涙が噴き出しそうになった。
前半最後の登場はKANだ。“サンクト・ペテルグルグ”、“愛は勝つ”、“エキストラ”を自身がアレンジし、ピアノの弾き語りでパフォーマンス。タキシードにエンジェルの羽根をつけて、最後に指揮者の三ツ橋敬子に仕掛けてもらったコメディ風のオチに、昭和世代の観客が一斉に和んだのが印象的だった。