クラムボンの原田郁子による実に15年ぶりとなるソロ・アルバム。コロナ禍に自宅で始めたという宅録を基調とした本作では、ピアノの弾き語りにプログラミングやフィールド・レコーディング、さまざまな声を混ぜ合わせた親密にして広がりのある音空間を展開。アンビエント/環境音楽的な表情を見せつつ、時間と場所を飛び越えてそれぞれの〈いま〉を立ち上げていく楽曲は、ジャンルの枠組みに回収されない強い記名性を持つ。詩人の谷川俊太郎が作詞と朗読のみならず、心臓や呼吸の音を提供し、rei harakamiの楽曲をサンプリングした『暗やみの色』以来となるコラボレーション楽曲“いまここ”がハイライト。