2人の碩学が趣くまま、クラシック音楽のあれこれを俎上に縦横無尽に語り明かす痛快の書。対談形式なので非常に読みやすく、またその利点を活かした明快な語り口は〈ごまかさない〉というコンセプトどおり。個性的なレトリックを楽しみながら、クラシック音楽と歴史・社会とのかかわりへの視点を手にすることができる。ひとまず音楽史の流れを辿りながらも、そこはこの2人だけに、関心や好みで脱線もするし、逍遥が始まる。その散らばり具合、偏り具合も本書の魅力。そのあたりも著者の意図するところ。ディテールの濃淡や掘りの深浅も平明そのもの。その上で読者が得た知見をどう検証し更新するか、そこにあるのが本当の愉しさ。