伝説に甘んじない存在感
そんな寡作の状況下だけに、2020年に入ってZORNの“Rep”にMACCHOが参加した際に驚いたのを覚えているが、地元をレペゼンする意識を前面に出して活動するZORNにとっては、その意味でMACCHOが先達でもあったわけだ。そして、恐らくはそこが起点だったのだろう。翌2021年9月に横浜アリーナで行われたZORNのワンマン〈汚名返上(もともとは無題)〉にはゲストとしてMACCHOが登場し、“AREA AREA”と“Rep”、さらにEVISBEATS制作によるオジロ久々の新曲“Rewind”をいち早くパフォーマンスしている。ZORNの姿勢やリリックに共鳴したというMACCHOにとって、長いオジロの歩みにおける大きな転機が訪れたのだ。ZORNをフィーチャーしたその“Rewind”は翌2022年2月に配信。これが『NOT LEGEND』のキックオフとなった。
続いての前触れは今年4月。かつて“AREA AREA”や“The Phoenix(will rise)”を手掛けてきた重鎮DJ PMXのプロデュースで“Legend”を配信し、これはクラシックなオジロ節を進化させた一曲として往年のファンを喜ばせた。さらに6月には温かい雰囲気の“2years”を配信。こちらは珍しくプライヴェートな主題に触れてリリカルな人間味を見せるGunhead製の一曲となった。
そして7月に登場したのがKREVAを招いた“Players’ Player”だ。具体的な諍いはないものの00年代から不和とされてきたKREVAとの共演自体が初の出来事。いきさつはともかく、別の道を登ってきた両者がBACHLOGICのドラマティックなビートに乗せて、同じ頂上でスキルの程を見せつけ合う展開に痺れるほどブチ上がった人は多いことだろう。それら強力な楽曲群を主軸に、今回の『NOT LEGEND』には“Intro”を含む13曲が収録されている。
ライヴ中のMCや歓声をコラージュした“Intro”に続く“花季節”は、独特のアンビエンスを湛えたスケールの大きい音空間にMACCHOの詩情が響くディープな一曲。こちらを手掛けたGunheadはバンド期にマニピュレーターとして加入し、先述のベイスターズ曲やMACCHOが客演したJUMBO MAATCHの“Wicked & Bad”も手掛けてきたサウンドメイクにおける現在の中心人物で、哀愁の漂う“BJブルース”や喪失感を湛えた“No One”など、余白を多めに残したシンプルかつ空間的な手捌きによって計9曲のトラックを手掛けている。要所で響いてくるYD(Crystal Lake)のギターも効果的で、なかでも攻撃的な“Be quiet”や劇的な“Aqua Haze”でのプレイは主役の感情に寄り添って印象的だ。新鮮な手合わせという意味ではOLIVE OILがジャジーでノスタルジックなトラックを提供した“沈黙と変な嘘”も心地良い出来映え。それらすべての楽曲が、持ち前の少年性と成熟した表現をざらついた声と独特のデリヴァリーで融和させる現在のMACCHOならではの語り口で満たされていて、彼の音楽をずっと聴いてきて良かったという感慨と新たな興奮を誘うものに仕上がっている。
本作を引っ提げて、9月18日には横浜アリーナでの単独公演〈NOT LEGEND〉に臨むMACCHO。30年ものキャリアを誇りつつ神棚に追いやられない圧倒的な存在感はレジェンド扱いに甘んじないもので、そんなOZROSAURUSの現在を改めて確かめたい。
MACCHOが客演した近作。
左から、タイプライター & YMGの2017年作『LA LA PALOOZA』(BTB/VLAD)、MARIAの2017年作『Pieces』(FLEX CHRIST)、ANARCHYの2019年作『The KING』(cutting edge)、NORIKIYOの2019年作『平成エクスプレス』(YUKICHI)、JUMBO MAATCHの2022年作『ザ・ショックス』(BEAN BALL)
『NOT LEGEND』に参加したアーティストの作品を一部紹介。
左から、ZORNの2020年作『新小岩』(All My Homies)、EVISBEATSの2023年作『That’s Life』(AMIDA STUDIO)、DJ PMXの2020年作『THE ORIGINAL IV』(ユニバーサル)、KREVAの2022年作『LOOP END / LOOP START(Deluxe Edition)』(スピードスター)、SNEEEZE & OLIVE OILの2022年作『OniiilE』(OILWORKS)
LIVE INFORMATION
One Man Live: OZROSAURUS「NOT LEGEND」 at 横浜アリーナ
■日程:2023年9月18日(月・祝)
■会場:横浜アリーナ
■開場:16:30
■開演:17:30
■客演:KREVA、ZORN
https://eplus.jp/ozrosaurus/
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