アイスランド発ポスト・ロックの雄が10年ぶりに帰還! 別れと再会を経た3人が奏でる美しきオーケストレーション――新作『Átta』に込めた闇深き世界への祈りとは?
アイスランド発のポスト・ロック
シガー・ロスはアイスランドにおけるポスト・ロックの象徴のような存在だ。スピリチュアライズドやマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの影響を受けた彼らは、シューゲイザー~アンビエント~エレクトロニカ的なサウンドを吸収し、アブストラクトで特異なロック・サウンドを構築。そんなサウンドをベースにしながら、アイスランド語を基に作り上げたオリジナルの言語で歌うヨンシーの唯一無二のヴォーカルと、チェロの弓でギターを弾くボウイング奏法をトレードマークに、自分たちのキャラクターを作り上げた。
シガー・ロスにとって最初の傑作となり、話題を集めたのが2作目の『Ágætis Byrjun』(99年)。同作はレディオヘッドの目に留まり、彼らは2000年のツアーの前座としてシガー・ロスを抜擢。バンドはさらに知名度を上げた。2002年の次作『( )』では、サウンドのアンビエント化を推し進め、より実験的になったにもかかわらずグラミー賞にノミネートされるなど、メインストリームでも認知される存在に。その後も、シンフォニックなサウンドを追及することでポスト・ロックの枠を越えた結果、ポップ・ミュージックとしての広がりを獲得した『Takk...』(2005年)、インダストリアルな質感を宿らせたヘヴィーなロック・サウンドを響かせる『Kveikur』(2013年)など話題作をリリース。その都度サウンドのアプローチを変えて、バンドの音楽性を更新/変化させてきた彼らのディスコグラフィー上には似通った作品は存在しない。