高橋幸宏、ムーンライダーズ、清水靖晃他が参加した伝説のコンサートが40年の時を超えてリリース!

 1982年にリリースされたピエール・バルーの『ル・ポレン(花粉)』というアルバムをご存知だろうか? 加藤和彦と高橋幸宏、清水靖晃が書き下ろし曲を提供、高橋、清水、鈴木慶一等が編曲、主にムーンライダーズやマライアが演奏を務めた日本制作盤だ。

 その『ル・ポレン(花粉)』のリリースから約一ヶ月後の82年10月15日、アルバムの発売を記念したコンサートが東京芝郵便貯金ホールで行われた。このときのライヴ音源はずっと行方不明とされてきたが、このほどアルバムとコンサート両方のプロデューサーである立川直樹の事務所で奇跡的に発見され、『ル・ポレン~伝説のライヴ1982』として初めて陽の目を見ることになった。

PIERRE BAROUH 『ル・ポレン~伝説のライヴ1982』 コアポート(2023)

 ライヴ音源には、アルバムのレコーディング・メンバーであるムーンライダーズ、清水靖晃(サックス等)、大空はるみ(ヴォーカル)に加えて、矢口博康(サックス)が参加。さらに加藤和彦が“ぺぺ”、高橋幸宏が“花粉”の演奏にゲストとして加わっている。

 ピエール・バルーは決まり事にこだわらない、真のボヘミアン。それゆえこのコンサートでも、映画「白い恋人たち」のサントラからニコール・クロワジーユが歌う “キリーのテーマ”をかけ、彼女と疑似的デュエットを披露している。こうした茶目っ気こそが、ピエール流のエスプリだ。一方、映画「男と女」の挿入歌“サンバ・サラヴァ”では、ブラジルの偉大なミュージシャンの名を次々に挙げつつ、この東京でのコンサートを支えたスタッフの一人ひとりにも“人生に幸あれ(Saravah!)”と歌いかけている。

 『ル・ポレン~伝説のライヴ1982』は、単なる貴重なライヴ音源ではない。フランスと日本の、とても実りある音楽の架け橋だ。そして最後を飾る曲の邦題を引用するなら、ピエール・バルーという存在自体が、〈出逢いの星〉である。この当時48歳だった彼の無垢な魂に触れることができることに、心から感謝したい。