LP発売当時の流通は驚くほど少なかったし、まだ音楽がジャンル・ボーダーレスに語られることも少なかった。しかし、今の耳で聴けば、このレーベルの持つ「汎地中海音楽」のパリ的都会感覚での蒐集(あえてこの言葉)という意味ではジャズ寄りな選曲とはいえ優れて先鋭的だ。出だしのチャンピオン・ジャック・デュプリーでいきなりジャブを食った感じだが、4曲目あたりでやっと体の中の音楽魂が目覚めてくる。年齢のいったファンには一連のフレンチピアノは必聴アイテムだし、スティーヴ・レイシーに代表される「フリージャズ」の流れのDisc2は、市民権を得たアヴァンギャルドな音楽のパリ的センスを感じさせる。