©Ambe J.Williams

JOY TO THE WORLD
ジャズに新風を吹き込んだ圧巻のヴェルヴェット・ヴォイスから届いた季節の贈り物。サマラ・ジョイのホリデイ作品と日本独自スペシャル盤……ジョイフルな季節にどっちから封を開ける?

 2022年に名門ヴァーヴと契約し、メジャー・デビュー作『Linger Awhile』をリリースしたサマラ・ジョイ。NYはブロンクスで生まれ育った彼女は、20代前半にしてサラ・ヴォーンを思わせる圧倒的な表現力とリッチな歌声が高く評価され、次世代のジャズ・ヴォーカルの女王の座が確実視されているという期待のヴォーカリストだ。伝統的な耳の肥えたジャズ・リスナーにも手厚く愛されながら、TikTokを活用して新しい聴き手に魅力を届けるなど、SNS世代にも響くような感覚が幅広い支持を獲得してきた要因でもあるのだろう。

 その圧巻の証明となったのが、第65回グラミー賞における〈最優秀新人〉部門と〈最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム〉という2部門の受賞結果であったのは言うまでもない。そして、そのポテンシャルに相応しい評価を糧としながらアーティストとして飛躍的に成長を遂げた2023年、そんな良き年を締め括るにあたって、サマラからジョイフルな2タイトルが到着した。

SAMARA JOY 『Linger Awhile Longer (Japan Special Edition)』 Verve/ユニバーサル(2023)

 まず、『Linger Awhile Longer (Japan Special Edition)』は一部オンラインで限定リリースされていたヴァイナルの『Linger Awhile Longer』に収録されている8トラックに、日本盤ボーナス・トラックとして9月にリリースされた配信シングル“Tight”を加えた全9曲を高音質のSHM-CDでのパッケージした作品。前作『Linger Awhile』では聴くことのができなかった楽曲や、“Guess Who I Saw Today”のトリオ・ヴァージョン、“Can’t Get Out Of This Mood”や“Sweet Pumpkin”“Guess Who I Saw Today”のデュオ・ ヴァージョンも収録されている。サマラ自身も「私のお気に入りの特別な新しいヴァージョンに加えて、『Linger Awhile』セッションから追加の未発表楽曲をフィーチャーし た『Linger Awhile Longer』をリリースできることにとても興奮しています。この瞬間を大切な思い出としていつまでも記憶に刻まれますように」と語っているように、新鮮なニュー・タイトルとしても楽しめるし、『Linger Awhile』と聴き比べる楽しみもあるという、まさにこの冬がぴったりな作品と言えるかもしれない。もちろん素晴らしい新曲“Tight”も聴き逃せない出来映えだ。

SAMARA JOY 『A Joyful Holiday』 Verve(2023)

 さらにもう一枚届いたのが、彼女がお気に入りのクリスマスソングを集めた6曲入りのEP『A Joyful Holiday』。こちらも前作『Linger Awhile』に続いて、パスクァーレ・グラッソ(ギター)、デヴィッド・ウォン(ベース)、ケニー・ワシントン(ドラムス)が演奏を担当。スティーヴィー・ワンダーの“Twinkle Twinkle Little Me”ではそこにサリヴァン・フォートナー(ピアノ)が加わっているのもポイントだ。以前リリースされた“Warm In December”を筆頭に、温かく素敵な雰囲気に溢れた楽曲たちは直球でこの季節を素敵に彩るのであろうナンバーばかりだ。2タイトルのどちらからでもぜひ一聴を薦めておきたい。