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nurié

いくつもの夜を超え、ただならぬ状況下を闘い抜いてきたバンドの発する音には、鬼気迫る圧と鋭い切れ味が備わっていた。

「眼には映らない、たった一瞬の奇蹟を掴みに来ました!」(大角龍太朗)その一言を添えてから演奏された“瞳に映らない形と性質、それを「」と呼んで”の歌詞にあるとおり、まさに〈命を燃やし聖火を灯せ〉という姿勢を体現するようなその熱量マックスなステージングは、瞬く間に観衆の耳目と心を惹きつけていくことになった。

そして、昨年12月に発表されたばかりの5th Single『冷凍室の凝固点は繋ぐ体温』に収録されている“舐めんな”で表現されていた貪欲なメッセージや、代表曲“透明に混ざる。”を放つ前に発された「このシーンに、本気で色を塗りに来ました!」(大角龍太朗)という言葉は、現在続行中の〈nurié New Single Release Tour「0.000℃」〉(全箇所当日券無料)へ繋がることとなったのは言うまでもない。

 

Ashmaze.

限られた20分という時間枠の使い方はバンドによってそれぞれで、Ashmaze.の場合は冒頭に「2023年の悩みや迷いを払いに来ました!」(双真)とだけ告げると、あとはひたすら楽曲を演奏することに徹していたところが特徴的だった。〈「苦悩」をコンセプトにそこから抜け出す為に藻掻き、その先の光を表現するバンド〉であるという彼らは、昨年6月に出たファーストアルバム『NIRVANA.』の実質的タイトルチューン“ニルヴァーナ”や、それに次いで昨年11月にドロップした両A面シングル『カルマ/「時代」』からの“カルマ”をはじめとして、ネガティブな心情を激烈な音像をもって綴ることにより、ある種の昇華を果たしているようにも見えた。

来る1月22日にSpotify O-EASTにて〈Ashmaze. ONEMAN TOUR 2023-24「PARADOX」〉のファイナルを迎える彼らが、藻掻きと苦悩を経たうえで確かな光の射す場所にたどりつくことを願いたい。

 

色々な十字架

嘘から出たまこと、とはこのことか。奇才・ティンカーベル初野がtinkと名乗り、もともとは2020年のエイプリールフールに企画として生み出した90s V系リバイバルバンド・色々な十字架は、いつしか単なるネタの領域を逸脱しはじめ、昨夏には名盤と言っても過言ではない初のアルバム『少し大きい声』を生み出すに至った。

また、昨年9月にはcali≠gariの桜井青がXで彼らについて言及しているほか、11月に開催された3rdワンマンにはゴールデンボンバーの鬼龍院翔やNoGoDの団長などが現場に駆けつけたり、という事態にまで発展。今や彼らは、ガチで新進気鋭な注目の存在になっているのである。

むろん、今宵も耽美な音とシュールな詞を交錯させながら色々な十字架が供してくれたトンチキ世界は秀逸な中毒性を滲ませており、2.5次元ミュージカルの手法を導入した演出も観衆を湧かせていた。「面白いって思ったら、チャンネル登録お願いします!」(tink)

 

グラビティ

キラキラ系令和最新型バンド、と呼んでも良いほどの絢爛さに騙されてはいけない。グラビティは華やかな見た目も武器のひとつだが、キャッチーでいてロックなテイストを含んだ楽曲のつくりは丁寧であるし、ボーカリスト・六の書く詞にはどれも明確な意思やねらいが込められている。

たとえば、この夜の1曲目“終わっちゃんちゃん”における〈イッカンノオワリは2巻の始まり〉という1節からは、ひとつの気付きを我々は得られたはず。また、オーガナイザー・SORAからのリクエスト曲として奏でられた“憧れの炎”については、アーティストとしての矜持を感じることも出来た。

ちなみに、昨秋より療養していたギタリスト・myuが1月からは復帰し3月21日のZepp DiverCity (TOKYO)公演〈TOUR FINAL 52Hzの流星群〉でも完全体グラビティを体験出来るとのこと。期待アレ。