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ネットでの人気とゲリラ的サンプリング

そんな風に、海外ではあくまで一部のマニアックな音楽ファンからの支持に留まっていたJフュージョンですが、もっと広く聴かれるようになったきっかけは何だったのかといえば、やっぱりインターネットの存在が大きかったわけです。

みなさん、ここ数年で耳にタコが出来るくらい〈日本のシティポップが世界中で人気なんですよ〉みたいな話を聞いていると思いますが(私自身もそんな話をしまくってきた一人です! すみません!)、昨今のフュージョン人気は、このシティポップ人気と、もっといえばシティポップ人気を巻き起こした色んな要因と切り離せないものなのです(なんと言っても、シティポップ自体がその成り立ちや人脈からしてフュージョンの親戚みたいなものですからね)。

2010年代に、シティポップの曲がフューチャーファンクというネット発の(ゲリラ的な)音楽で盛んにサンプリングされたというのも色んなところで言われていますが、実は、フュージョンの曲もけっこうサンプリングされていました(気になる方は、フューチャーファンク初期の傑作、マクロスMACROSS 82-99の2013年作『ネオ東京』をチェック! カシオペア、T -SQUARE、阿川泰子などがサンプリングされています)。

 

ヴェイパーウェイヴ/フューチャーファンクを経た再評価

こういったムーブメントと連動しながら、シティポップと同じ様に〈元ネタ〉への関心が高まっていき、前後して国外在住のどこかのだれかによってオリジナル音源がYouTubeへアップされたり、またそれが繰り返し再生されたりするという流れになっていったわけです(シティポップのリバイバルと同じで、ある時期からはフューチャーファンクの文脈関係なくただ〈良い音楽〉として再生されるようになっていった感もありますが)。

この時代に、フューチャーファンクやその母体であるヴェイパーウェイヴ経由後の耳の感覚でググッと再評価されたアーティスト/レコードで代表的なところといえば、キーボーディスト奏者・野力奏一によるNORIKI名義の各作、ギタリスト・鳥山雄司による初期諸作、作曲家・堀井勝美による堀井勝美PROJECTによる初期各作等でしょうか。特に一部の鳥山〜堀井作品に顕著ですが、デジタル色の強い(一昔前であれば〈チープ〉と評されたような)サウンドが、ヴェイパーウェイヴ以降のキッチュな感覚にぴったりフィットしたのでしょう(私自身、堀井勝美PROJECTの87年作『HOT IS COOL』を初めて聴いたとき、まんまヴェイパーウェイヴ〜フューチャーファンクみたいな音じゃん!と思ったのを覚えています)。

NORIKI 『DREAM CRUISE』 イーストワールド(1984)

NORIKIの84年作『DREAM CRUISE』収録曲“NIGHT LIGHTS”。ボーカルは国分友里恵。野力奏一は山下達郎のライブメンバーだったことや89年の映画「キッチン」の音楽を担当したことで知られる

鳥山雄司 『take A break』 Canyon International(1981)

鳥山雄司の81年作『take A break』収録曲“Your tender lovin’ care”。同作と83年作『YUJI TORIYAMA』は米ブルックリンのレーベル、シップ・トゥ・ショアからリイシューされている。鳥山は現在、神保彰とのフュージョンバンドであるPyramidでも活動

堀井勝美PROJECT 『HOT IS COOL (+1)』 ソニー/air(2023)