ポーティスヘッドのロック・シンガーと現代音楽の作曲家ペンデレツキが共演するグレツキの交響曲3番を新しい21世紀の世代に!

 近年では、クラシックの現代音楽が再び面白くなっている。それも21世紀のものとして。1990年代のレディオヘッド、ポーティスヘッド、ビョーク、デヴィッド・リンチ、やワールド・ミュージックの流行を超えたところで聴く音楽として。

 べス・ギボンズは1990年代にポーティスヘッドのロック・シンガーとして、その表現力の素晴らしさと迫力を全世界に見せた。“Glory Box”を聴いた時に受けた力強さは60年代で言えばジャニス・ジョップリンのようだった。この作品にぴったりなヴォーカリストだと誰が予想できただろうか? 言葉が分からなくても、その意味一つ一つが心に伝わってくる声だ。

BETH GIBBONS Henryk Górecki: Symphony No. 3 “Symphony of Sorrowful Songs” Domino(2019)

 指揮はポーランドの20世紀の作曲家としては最も著名なクシシュトフ・ペンデレツキ。近年ではレデイオヘッドのジョニー・グリーンウッドとコンサートなどで共演している。曲の作風は古いヨーロッパの宗教音楽や民謡の要素をミニマリズムの表現と19世紀のロマン派的なダイナミックなオーケストレーションにつつんで作曲したシンフォニーだ。ペンデレツキ自身もそうだが、作曲家のヘンリク・グレツキはポスト・ウェーベルンのセリエルの作曲家として出発したが、1970年代以後からヨーロッパの古い宗教音楽とロマン派的な作風が中心になってくる。こうした傾向の作品では他にもジョン・タヴナーをビョークが歌った《Prayer Of The Heart》がある。ペンデレツキの1970年以後の代表的な作品、ペンデレツキ自身の交響曲3番もロマン派的な要素が強いが、ミニマル的な影響もあり、60年代のクラスター音楽から得た経験も感じさせる。ジョニー・グリーンウッドの作曲する映画音楽やレディオヘッドの弦楽アレンジにもこのような曲からの強い影響を感じさせる。

 このグレツキの交響曲3番《悲歌のシンフォニー》は以前にも発売されているが、これほど迫力を持った演奏は初めて聴く。この実力的な演奏者たちのコンビネーションがそれを可能にしている。こうした作品はクラシック・ファン以外の新しい世代に聴かせたいものだ。