壷阪健登が見つめるソロ・ピアノの世界とその未来
2019年、バークリー音楽大学を首席卒業した後に演奏活動を開始し、2022年に世界的ピアニスト小曽根真が主宰する若手アーティスト育成プロジェクト、From OZONE till Dawn(以下FOTD)に参加。現在の日本ジャズ・シーンで最も注目されている若手ピアニストの壷阪健登が5月に発表した初の単独リーダー・アルバム『When I Sing』は、全曲オリジナルによるソロ・ピアノ作品。デビュー作としては異例中の異例ともいえるフォーマットに驚いたが、さらに心を奪われたのは、瑞々しさと大胆さに溢れた演奏だった。
「ソロ・ピアノを始めたのはFOTDに参加してからのこと。小曽根(真)さんから、〈ソロ・ピアノをやってみないか?〉と声を掛けられたのがきっかけでした。僕はそれまでやったこともありませんでしたし、最初はお断りしていたのですが、御自身も未体験ゾーンにどんどん飛び込んで行く小曽根さんの姿を見ているうちに心が動かされ、チャレンジしてみることにしました」
やがて徐々にソロ・ピアノの世界へと踏み込んでいった壷阪。その魅力はどこにあるのだろう。
「最初は、ソロ・ピアノというのは、自分が準備してきたものを披露する演奏だと思っていました。ところが演奏を重ねるうちにそうではないことに気付きました。ある一音を発して、その響きが聴こえた瞬間、その響きに触発された自分の中から、今までに出会ったことのない音が湧き上がってくるんです。勿論、自分ひとりしかいないソロ・ピアノのフリー・インプロヴィゼーションでは、いろんなリスクも伴いますが、そういう不思議な体験をすると音楽に没頭して、恐怖心が消えてしまう。ですから今回のレコーディングも非常に楽しかったです。自分の頭の中にあった音がピアノを通して飛び立って、次々に姿を変えていくような感覚でした」
瞳を輝かせて語る彼の目にはどんな未来が見えているのだろう。
「とはいえ、自分はピアノという楽器に対してやっと入り口に立ったばかりという気持ち。ここまで数々のチャレンジングな演奏機会をいただいていますが、たとえそれで失敗したとしても、自分がそれに懸けたエネルギーは無駄にならないと思っています。それをどれだけ続けられるかが、どれだけ良いミュージシャンになれるかということだと。今やっと、それが分かりつつある気がしています」
強い決意を語るその言葉からは、彼が切り拓いていくであろう大きな未来が浮かび上がってきた。
LIVE INFORMATION
METROPOLITAN JAZZ Vol.04 TOKYO PIANO NIGHT
2024年6月27日(木)東京芸術劇場コンサートホール
開演:18:00
共演:小曽根真/大林武司/シャイ・マエストロ/アマーロ・フレイタス
https://www.eight-islands.com/metropolitanjazz/#vol04
小曽根真 スペシャル・ピアノ・ソロ 2024 Summer
2024年7月31日(水)札幌コンサートホール Kitara 大ホール
開演:19:00
出演:小曽根真
ゲスト:壷阪健登
https://www.kitara-sapporo.or.jp/event/event_detail.php?num=5861