From OZONE till Dawn presents: 壷阪健登 ソロ・ピアノ・コンサート “Departure”〉が、2023年11月18日(土)に東京・銀座のヤマハホールで開催される。小曽根真が若手プレイヤーを紹介するプロジェクト〈From OZONE till Dawn〉の一環として、いま世界で注目を浴びるジャズピアニストの壷阪健登が、待望のソロ演奏をヤマハホールでおこなうのがこの公演だ。同プロジェクトからリリースしたEP『KENTO』(2022年)も話題の壷阪は、今回のライブでどんな音楽の未来を聴かせてくれるのか? 必見のコンサートについて、音楽ライターの早田和音が壷阪本人に聞いた。 *Mikiki編集部


 

多様な音楽家が集まるバークリーで過ごした刺激の多い毎日

――最初に、壷阪さんの音楽的バックグラウンドについて伺いたいと思います。どのようにして音楽と関わるようになっていったのですか?

「ピアノは小学生の時から、ヤマハ音楽教室で始めました。ジャズに興味を持ったきっかけは、中学生の頃にテレビ番組で観た山下洋輔さんの演奏する“Rhapsody In Blue”。その後、日比谷野外音楽堂で開催された〈山下洋輔トリオ復活祭〉(2009年)も観て、衝撃を受けました」

――演奏活動はいつ頃から?

「高校生の頃から大学のジャズ研に潜り込んでセッションに参加するようになりました。また、ちょうどその頃、横濱ジャズプロムナードで演奏を聴いた板橋文夫さんに憧れて直にジャズピアノを教わるようにもなりました。

大学1年生の時にサイトウ・キネン・フェスティバル(現在のセイジ・オザワ 松本フェスティバル)のワークショップに参加したのをきっかけに、大西順子さんのもとでジャズのボキャブラリーも学んでいきました。

大学在学中から、高田馬場にあるイントロなどセッションの店に出入りし、練習していく中で、たくさんの先輩や仲間と出会い演奏活動を始めました」

――その後、バークリー音楽大学に進まれました。

「少しずつ日本のシーンの中で演奏できるようになったタイミングで、このまま音楽活動を続けていくのであれば、一度しっかりと勉強したいという思いがありました」

――バークリーで得たことというと?

「バークリーはジャズの学校という印象が強いですが、実際は世界中から多様なバックグラウンドを持ったミュージシャンが集まって、それぞれが自分の音楽を追究する場所でした。

ポップスや映画音楽を生み出している人もいれば、南米から来たミュージシャンの中には自身のルーツとなる音楽を掘り下げる人たち、インドや中東の音楽など、それまで聴いたこともなかった音楽を演奏する人もいて、刺激とリスペクトの多い毎日を過ごしました。そんな仲間と交流していく中で、経験を積むことができたのは本当に貴重な経験だったと思います」

 

小曽根さんの姿勢から多くのことを学んでいます

――その後、アメリカと日本で活動を開始。小曽根真さんと俳優の神野三鈴さんが設立した若手音楽家のためのプロジェクトFrom OZONE till Dawnにも加入されました。加入のきっかけをお話しいただけますか?

「初めて小曽根さんとお話ししたのは2021年9月、六本木のジャズクラブで、小川晋平さん(ベース)、きたい くにとくん(ドラムス)とトリオで演奏していた時です。何曲か演奏したあと、MCをするためにマイクを持って客席を向いたら、小曽根さんと三鈴さんがカウンターに座っているのに気づきました」

――小曽根さんが客席にいらっしゃることに気付いた時、どう思われましたか?

「もともと小曽根さんのファンだったので、本当に驚きました。これは参ったなとも思いました。

その日は終演後に少しお話しできただけだったのですが、後日〈一緒にお食事でもしませんか?〉という連絡をいただきまして。それがFrom OZONE till Dawn(以下FOTD)というプロジェクトへのお誘いでした」

――その時、どのように感じられましたか?

「まずプロジェクトの持つビジョンと、スケールの大きさに驚きました。僕の今まで持っていた考え方と違う、別の視点からの話も多かったので、戸惑うこともありましたが、お2人とも時間をかけて話し合えたおかげで、徐々に僕も理解できるようになりました。そこからFOTDでの活動も参加するようになりました」

――先ほど、以前から小曽根さんの大ファンだったと話されていましたが、実際にお付き合いするようになって、あらためて感じられたことはありますか?

「まず小曽根さんの、音楽やステージに対する姿勢から多くのことを学んでいます。
あれだけのアーティストが、今も自分がやりたいと思った音楽に対して〈怖いところに飛び込む〉ことを続け、ものすごいエネルギーで新しい音楽表現にチャレンジし続けています。その姿を間近で感じることができることはいつも勉強になっています。

そして、その真摯な音楽をお客様にどう届けるのか、どのようなステージを作り上げるのか、そこには何が必要か、という視点を三鈴さんからいつも学んでいます。音楽を届けていく想いや、その過程を共有してもらっていることが、僕にとって大きな経験になっています」