FAT CATは、昨年夏にシングル“Make Up”で日本デビューした韓国のチャーミングな女性シンガー。その前には本国での実績もあり、ヒップホップ・アーティスト、Defconnとの共演を皮切りに、2011年に単独での活動開始後に発表した3枚のデジタル・シングルでは、作品ごとに印象の異なる華やかなファッションと共に高いパフォーマンス・スキルで注目を集めてきた。

 「海外のアーティストではビヨンセがすごく好きで、あんなふうになりたいなと思ったときがありました。ラップも結構好きで、韓国のアーティストではユン・ミレさん(90年代後半から2000年代前半にかけて活躍した女性ラッパー)が好きですね。シンガーになりたいと思ったのは、音楽大学に通っていたときにそこの教授だったジャン・ヘジンさん(女性シンガー。最近日本でも放映された韓国の時代劇「シンイ -信儀-」のサントラでMCスナイパーと共演している)からの影響が大きかったと思います」。

 JASMINEの“sad to say”を聴いて、日本のポップスにも興味を持っていた彼女は、やがて日本での活動も夢見るようになり、幸運にもそのチャンスを手に入れた。カラフルでガーリーなヴィジュアルも魅力のアーティストとして日本に上陸した当時を「“Make Up”を作ったときは、私ってこんな可愛いスタイルもできるんだと気が付いたと言うか……(笑)、新しい魅力を見つけたと思いました」と彼女は振り返るが、個性的なファッションセンスと自身の音楽的な資質をバランス良く、しかも高水準で備えているということにおいては、かなり抜きん出た存在と言っていいだろう。それは、このたびリリースされるファースト・アルバム『NEKO MUSIC』を聴けばより明白になるはずだ。

FAT CAT NEKO MUSIC Colourful(2014)

 「日本の作家さんが作ってくれた曲は、いままで歌ったことのない感じで、新しい世界に入ったような気がしました。日本語で歌うのは……やはり発音が難しい。普段は良いけれど、早く歌ったり、ラップの感じが入ったりすると、たくさん練習をしなければならなかったです。でも、自分がもともと使っていた言葉じゃない、違う国の言葉で歌うこと自体が私には楽しかった。韓国にはない発音もありましたから」。

 〈韓国にはない発音〉というのは、先行リリースされた“ネコRock!”に出てくる〈ニャニャニャニャーン〉だそうだ(韓国でネコの鳴き声は〈ヤオン〉と表現される)……という豆知識はさておき、本作は8ビットなイントロも楽しいエレポップ“Kitten Girl”をはじめ、アーバン・ポップ風のミディアム“Spin”、ファンシーなダンス・ポップ“オシャレ☆バトル”、フレンチ・ポップなテイストも感じさせる“Candy Girl”、ラップに挑んだ“フラリ”などなど、エレクトロニックなポップソングをベースにあちこちで〈オシャレ〉〈カワイイ〉をハジケさせている一枚に。

 「メロディー以外にも、ネコの鳴き声とかの音もちゃんと聴いてみてください! そして、私がどんな表情で歌ってるのかな?って、想像してみたらもっと楽しいと思います。いままでシングルをリリースするたびにファンの皆さんと近づけているなって思ってましたが、このアルバムでもっともっと近くなる道ができたと思います。『NEKO MUSIC』を聴きながら、〈私=FAT CAT=太った猫〉を心に記憶して、次の作品も期待してもらえたら嬉しいです!」。

 

 

▼関連作品

左から、FAT CATの2013年のシングル“Make Up”(Colourful)、ビヨンセの2013年作『Beyonce』(Parkwood/Columbia)、JASMINEの2010年作『GOLD』(ソニー)
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 ここでは『NECO MUSIC』を支える作家陣の関連作を紹介。まず冒頭の“Kitten Girl”のコンビ=こだまさおり浅田祐介は、ヴィジュアルも鮮烈なYun*chi『Asterisk*』(クラウン)に関与。R&B×J-Popな“Spin”はRyosuke“Dr.R”Sakaiの作曲で、直近ではMs.OOJA『COLOR』(ユニバーサル)にも参加しています。また、loco2kitは2曲で気ままな乙女心を言語化。その言葉遣いはABCHO“目をとじてギュッしよ”(同)でも確認を。他、チームしゃちほこ『ひまつぶし』(unBORDE)などに携わるnote nativeこと田尻知之らエレポップな面々の間には、新作『Carry On!』(ビクター・ミュージック・アーツ)を発表したばかりのオレスカバンドからiCasの名も。各々の流儀でキュートなガール像を描き出しています。 *bounce編集部
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