メジャーリリースという大きな節目を超えて、XinUは変わったのか? 通算4作目、キングレコード/HEROIC LINEからリリースされる初のEP『XinU EP #04』の中に、その答えはある。メランコリックな内省を残しつつ、聴き手へのメッセージやストーリー仕立てなど、新展開を見せる歌詞。スムースなR&Bやチルアウトトラックに加え、これまでになかった高揚感溢れるダンスミュージックなど、幅を広げたサウンド。メインプロデューサー・松下昇平(M-Swift)のほかに、Michael Kaneko、Aile The Shota、中島雄士(グソクムズ)らが持ち込んだ、新鮮な作風。新章の始まりを高らかに告げる、『XinU EP #04』に込めたXinUの心の内を聞いてみよう。

※このインタビューは2025年11月25日(火)に発行予定の「bounce vol.504」に掲載される記事の拡大版です

XinU 『XinU EP #04』 キング/HEROIC LINE(2025)

 

メジャーへ行ってXinUは変わった?

――7月にメジャーリリースシングル“Monday to Friday”を発表してから4か月が経ちました。環境面や心理面で、どんな変化を感じていますか?

「結果論になるんですけど、それほど大きく変わった感じはしていなくて。メジャーリリースが決まった今年の2月頃は、何か変わったことをしたいという感じで、〈こんなのはどうだ、あんなのはどうだ〉って、私と松下さんと、ギターの庄司(陽太)さんとピアノの武藤(勇樹)くんも巻き込んで、いっぱいデモを作ったんです。〈メジャーだから〉という気持ちが、少しでもあったからこその葛藤があったんですけど、結果的に、〈今まで通りにビートに思いを乗せて届けることを、ちょっとだけバージョンアップしたものを目指せばいいんじゃない?〉というところに落ち着いて、できたのがメジャーリリース1曲目“Monday to Friday”だったんですね」

――はい。なるほど。

「なので、心持ち的には、今まで通り自分たちがいいと思う音楽をやっていけばいいと思っています。スタッフの人がめちゃくちゃ増えていて、以前はMVを作る時も、私と監督とカメラマンの3人で撮るのが普通だったのが、たくさんの人が事前準備から当日のいろんなことまでやってくれるし、SNSの使い方とか、細かいところで色々サポートをいただいて、〈ありがたいな、チームっていいな〉と思っています」

――そして、今ここにあるのが11月12日にリリースされるメジャー初EP『XinU EP #04』。どんな作品になったという手ごたえがありますか。

「3枚目の『XinU EP #03』(2024年)くらいまでは、自分の内側と向き合うような、内省的な歌詞を書くことが多かったんですけど、ライブの数が増えるにつれて、みんなが私の歌で勇気を出してくれているんだとか、そういう実感が持ててきて、一体感を持って楽しむことや、誰かのことを思って歌詞を書くことが増えてきて、外向きに意識が向き始めたんですね。

今回のEPも、“Refrain”は自分に向けた曲ですけど、“Monday to Friday”は〈みんなもこう思っているんじゃないかな?〉と思って歌詞を書いていますし、サウンド的にも、〈今ならこんな曲も歌えるんじゃない?〉という松下さんの勧めもあって、新たに挑戦したものも多々あって、新しいXinUサウンドと、今までのことを大事にしたものと、2つの柱があるような気がします」

――外側を向き始めたというのは、前作『A.O.R - Adult Oriented Romance』の時に、すでに兆しはあったように思います。あのアルバムには、〈一緒に揺れたい〉というテーマがあると言っていましたよね。

「そうですね。そこからキングレコードの新レーベルHEROIC LINEとの出会いがあって、すごくいいタイミングだったと思います」

――今回のEPの2曲目のタイトルのように、まさに〈Timing〉。タイミングって、本当に大事じゃないですか。

「私の場合、それでしかないというぐらいです」

――タイミングには恵まれているほうだと思いますか。今までの人生の中で。

「思います。もともと〈こうなりたい〉というものがあんまりなくて、すごく遠い目標は描いていないんですけど、でも一個信じているのは、〈そのタイミングで出会ったものを全力でやったら、絶対いいほうに転ぶ〉ということで、それだけを信じてやっています」