2025年8月3日に東京・下北沢のADRIFTで開催された〈XinU presents Collective〉。前回の好評と成功に続いて企画されたXinU主催のこの都市型プチフェスは、共演者のMichael Kaneko、tonunと共に夏真っ盛りを彩る音楽とカルチャーの一日を作り上げた。そんなイベントの全体を、XinUの活動初期から取材するライター内本順一が伝える。 *Mikiki編集部


 

いつかの夏の日を思い出す〈URBAN CHILL OUT〉なイベント

8月3日、下北沢のエンターテインメントスペース〈ADRIFT〉で〈XinU presents Collective〉(以下、Collective)の第3回が開催された。〈Collective〉はXinU(シンユウ)が〈親友〉になりたいアーティストを招いて開催している都市型プチフェス。2024年3月24日に開催された第2回には、ゲストアーティストとしてぷにぷに電機とHIMIが出演し、XinUはといえばアコースティックセットとバンドセット、2通りのライブを見せた。また各ライブの前後にはSELECTOR-TATSURUと君嶋麻里江のふたりがDJで盛り上げ、会場の外にはクラフトビールを提供する店や古着・雑貨の店などが並んだマルシェ(市場)も。その成功を受け、今回も前回の様式・構成を踏襲しながら、日曜の午後から夜にかけての時間帯を心地よく過ごせる都市型プチフェスの楽しさを伝えていた。

過去2回は春の開催だったが、今回は真夏。今年は6月から暑い日が続いているが、この日は40℃に迫るところもあったほどの猛暑日だ。ADRIFTは下北沢駅から5分程度歩いた場所にあるのだが、2分歩くだけでも汗が滴り、クラっとするほど暑かった。が、そういう真夏日にこそ聴くのが心地よかったり、涼しくなれたり、いつかの夏の日を思い出してノスタルジックな気分になれたりする音楽がそこでは鳴っていた。今回のテーマは〈URBAN CHILL OUT〉。参加者はみんないい塩梅のチルアウト加減で、思い思いに楽しんでいるようだった。

DJは今回も2回目同様、SELECTER-TASURUと君嶋麻里江のふたり。冷房のよく効いたミュージックホールのなかでそれぞれ70~80年代のソウルやシティポップの名曲などを7インチレコードでかけ、暗くはなくともクラブにいる感覚をそこにもたらした。かかるのは夏に相応しい曲が多かった。

ライブは15時半からXinUのアコースティックセットでスタートし、今回のゲストであるシンガーソングライターのtonun、そしてMichael Kanekoの弾き語りへと続き、最後にXinUのバンドセット。終演は確か20時頃だったか。その素敵な時間の流れは、今思い出してみると、若い頃のいつかの夏の日に重なったりもする。今回の〈Collective〉、背景的なテーマとしてあったのは間違いなく〈夏〉であり、〈海〉でもあった。あるいはそうした夏や海を背景にしての〈心の開放〉でもあったかもしれない。3組とも夏や海を背景にした曲を多く選んでいた。XinUは両セット共に、波の音を流すところからライブを始めていた。だから筆者は海を見に行った〈いつかの1日〉をイメージすることになった。

15時半に始まったXinUのアコースティックセットは、例えばドライブの始まりのよう。いつもより少し弾んだ心持ちでクルマに乗り、都会からどこかの海へと向かったあのときの感覚が甦った。メロウだったり、あるいはファンキーだったりの夏曲ばかりを歌ったtonunのライブには、クルマで海岸線沿いを走っている時間帯の感覚があった。太陽のまぶしい昼間からやがて日暮れ時へ。空の色と海の色が少しずつ変化していくその時間が合う歌たちであり声でもあった。海に日が落ちるのを見ながら聴いたらたまらないだろうなと感じたのはMichael Kanekoの曲たちだ。彼の歌声と曲たちは夏の夕暮れ時ならではの切なさにも似たメロウネスをたたえ、聴く者全ての目に映る景色をどこかの海へと動かした。そしてXinUのバンドセットには、夜になって始まる夏のパーティの楽しさがあった。みんなが心を開放した時間だった。パーティはいつまでもずっと続くわけじゃなく、終わったらひとりひとりがまたいつもの場所と暮らしに戻っていく。けれども半日程度のドライブや小旅行でけっこう気分が変化したり得られる何かがあったりもするように、このプチフェスに参加した人たちはみな昼下がりから夜にかけての数時間で心を開放したりメロウネスに浸ったりして、すっきりした気分で帰路についたんじゃないだろうか。と、そんなことも思った夏の日だった。