冒頭の3曲を聴いただけで、陰影に富んだアルバム全体のソニック・トリップ感が窺える。微風のように淀みなく流れる構成は、坂本龍一作品の影響を受けたという。メキシコ系アメリカ人シンガー・ソングライターの2作目。ムスタファが歌で、俳優のペドロ・パスカルが語りで、ジョン・メイヤーがギターで参加し、アイヴィー“Edge Of The Ocean”の引用など、サプライズも満載。ソウルフルなファルセットからチルな呟きまで七変化する歌声とジェントルなプロダクションで、繊細で傷つきやすい心の内面を丁寧に描き出す。グラミー新人賞は逃したが、その才能はまぎれもなく本物だ。