
©Kana Tarumi
同じメンバーで続けるにつれ理解できるようになったこと
――そもそもこのバンドって、どういう形でデモが持ち込まれるんですか?
石若「デモを持ち込んだことはあんまり無いですね。レコーディングをする時に突然人を呼ぶことが多くて(笑)。〈こんな曲やるよ〉って直前に送ることはあったかもしれないけど、メンバーのみんなにとっては、スタジオに来て初めて曲を聴いて、そのまま録音する、っていうことのほうが多かったかもしれないです」
――じゃあ呼ばれてスタジオに行ったら譜面があって、みたいな。
石若「譜面すら無くて、その場で〈こんな感じで!〉って口頭で伝えるだけの曲もあったかもしれない。そこはみんなのミュージシャンシップに甘えてるところもあります(笑)」
MELRAW「話だけきくと、〈それで何がバンド感だよ〉って思えるようなエピソードなんだけど(笑)。僕らが言っている〈バンド感〉っていうのは、みんながアンリメのサウンド感とか、駿がやりたいこととか、そこでの自分たちの役割みたいなことが、同じメンバーでバンドとして続けるにつれて理解できるようになってきている、っていうことなんですよね」
石若「うんうん」
MELRAW「ファーストアルバムの時の〈どうなっちゃうんだろう?〉っていう感覚は、本当に僕たちは何も分からずに〈駿がアルバムを出すから、プリプロするぞ〉みたいな感じでスタジオに呼ばれて演奏して、〈あれ、そのまま出します〉ってなって、〈え!?〉みたいな感じだったから(笑)。
今回はアンリメとはどういうもので、 自分たちはそこで何をやらなきゃいけないかっていうのが分かっていたからこそ、いきなりスタジオに呼ばれる作り方でも上手くいった。同じ作り方でも完成度とか理解度が違う、みたいなことなんです」
――なるほど。じゃあ大きいスタジオで〈せーの〉で録る、みたいなことは意外と無いんですか?
MELRAW「そうですね。大体リズムセクションが先に出来上がってて、そこに上モノを乗せるとか、そういうのが多かったです」
石若「1曲目の“ATR Theme” と13曲目の"SEYA"は、みんなで〈せーの〉で録りました」
コンパクトでインスタントな音楽に陥らない人間力
――では逆に、デモがあってカチッと作るやり方のほうの話を。
石若「“NEW POWER”は結構デモ通りですね。デモの枠組みがあって、その楽器の音を順番に生に差し替えていきました。
その中でも、今回の制作では〈デモ感〉を打破するためにどうしようか?みたいなディスカッションもすごくたくさんありました」
――〈デモ感〉というのは?
MELRAW「これは周りのミュージシャンともよく話をするんですけど、今の時代、ラップトップ1つで音楽が作れるようになったわけじゃないですか。それこそ若い子たちは、お金がなくてもパソコンさえあれば何でも作れるわけなんだけど、聴くとパソコンの画面が見えてきちゃう音楽って結構多いなと思っていて。〈この音色ね〉とか〈このリズムね〉って、DAWの画面が見えてしまうような。これは音楽自体がコンパクトになりすぎちゃってるというか、インスタントになりすぎちゃってるということなのかなと思うんだけど。
だからこの大所帯のバンドで、ジャズミュージシャンが集まってやってるっていうところと、駿の楽曲のスケールの大きさっていうものを、どうやって録音物として表現するかをすごく考えていましたね。駿のデモも各楽器の音色まで作り込まれていたり、凝ったエフェクトが掛けられていたりするわけじゃないから、〈めちゃくちゃプリセットの音するな〜〉というところから、それをスケールアップさせるためにどうしていこうかとはすごい考えました」
――それは音色のリアルさを追求するとかではなくってことですよね?
石若「うん。人間力みたいなところだね」