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Songbook Project 10周年記念スペシャル・コンサートに向けて、10年の積み重ねを振り返る

 〈世界で一番忙しい音楽家〉。それは、かつてクインシー・ジョーンズに付けられた言葉だった。それはクインシーが多様な表現を俯瞰し、いろいろな人々を大胆にオーガナイズすることに由来するが、石若駿は今もっともそのキャッチを流用できる人物ではないか。純ジャズからコンテンポラリー・ポップ、はてはもっとアートなものまで。まさに彼は卓越した音楽技能と関与者把握能力によりまさに八面六臂と言いたくなる活動をしている。そんな石若駿のSongbook Projectはまずドラマーとして知られる彼にとって、パーソナルな曲作り/歌心の発露となるヴォーカル付きの表現回路としてじっくり育まれてきた。その出発点は、東京藝大時代に遡る。

 「クラシックの音楽だけじゃなくてトム・ヨークのソロとか、その時期に渦巻いていた音楽の話ができる唯一の打楽器専攻の先輩が角銅真実さんだった。打楽器専攻の練習室は薄暗い地下にあったんですが、その練習室全部にピアノがあったのでよくピアノで曲を作っていました。そして、自分のリーダー・ライヴでジャズのカルテットとかでやるような曲じゃないな、これには歌があるといいかなと思った時に角銅さんに相談し、歌詞をつけて歌ってもらったんです。僕が大学1年の時で、それが始まりです」

 後にその単位にギター奏者の西田修大が加わり、今に続くSongbook Projectは始まった。西田は石若と一緒に君島大空らのサポートをし、ジャズとポップ・ミュージックの魅力的な交錯を求める石若の大プロジェクト〈JAZZ NOT ONLY JAZZ〉にも参画する近い存在だ。

 「僕にはギターのアプローチにおいて好きな世界があるんですけど、それを実現してくれるんです。ライヴでは本当に自由にやってもらうんですが、修大にはジャズプレイヤーが持ち合わせない知識やこだわりがあって面白い」

 そんな3人をコア・メンバーとして、Songbook Projectは過去6作品を出してきたが、今年で結成10周年を迎える。

 「10周年記念アルバム『SONGBOOK VII』をまさに作ってる最中です(取材は5月になされた)。実は、作ったものを1度なしにしたんです。Songbook Projectは自分の曲を1人で多重録音し、最後に歌を乗せて完成させるやり方でずっとやってきて、次作も同様に作っていました。ですが、その過程で1曲、デュオで録れる曲があり、そのフォーマットでいろいろ録ってみようとなったのです。10周年という事もあって、昔の曲もちょっと取り上げてもいます。最初にスタートした時の気持ちに戻ってみよう、究極に自然に音楽の流れに委ねたものにしたいと思いました」

 Songbook Projectの10周年記念スペシャル・コンサートには、アコーディオン奏者である中村大史が4人目の構成員として加わる。トリコロール他の活動で知られてきた彼はケルト・ミュージック汎用のスペシャリストだ。

 「最初出会ったのは角銅さんの『oar』のレコーディング。僕はピアノで参加してるんですけど、そこで中村さんはアコーディオンやギター、コーラスとかで関わっていました。角銅さんと話をしていて、Songbookにもっと音楽的に解放された瞬間を取り入れたいとなった時に、中村さんがいいねとなりました」

 ニュートラルなところで揺らいだり得難い色や光を発しているSongbook Projectの曲群は、節目となる10周年記念ツアーでどのような自由を纏って再提示されるのだろう。

 「昔の曲をやっても、全然違うものになるでしょう。あと、この公演のために新しい曲を作ります。また、角銅さんも歌だけではなく、パーカッショニストとして演奏してもらうことも考えています」

 中学校の音楽の教科書にインタヴューが載るなどもして責任を感じるようになったと言う彼だが、来年には現代音楽を披露する2度目のソロ・リサイタルや、自らの手によるオーケストラ作品の再演が予定されている。また、ボックス・セット好きという彼はSongbook Projectのアルバム数が10作を数えたら、10枚組のボックス・セットを出すことを心待ちにしている。ああ、石若駿はやっぱり多忙すぎる質ある音楽家だ。

 


石若駿(Shun Ishiwaka)
1992年、北海道生まれの打楽器奏者、作曲家。幼少からクラシックに親しみ、 13歳よりクラシックパーカッションを始める。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校打楽器専攻を経て、同大学を卒業。卒業時にアカンサス音楽賞、同声会賞を受賞。角銅真実、西田修大と共に2016年に始めたプロジェクトSongbook Projectに加え、2019年にはソロプロジェクトAnswer To Rememberを始動。また作編曲家として、様々なアーティストや映像作品のサウンドプロデュース、楽曲提供を行う。


LIVE INFORMATION
石若駿 Songbook Project 10周年記念スペシャル・コンサート

2026年7月17日(金)東京・浜離宮朝日ホール
開場/開演:18:30/19:00

2026年7月18日(土)東京・国分寺市立いずみホール
開場/開演:15:30/16:00

2026年7月20日(月)大阪・Billboard Live OSAKA
1st Stage 開場/開演:14:00/15:00
2nd Stage 開場/開演:17:00/18:00

■出演
石若駿(ピアノ/ドラムス/パーカッション ほか)
角銅真実(声/ギター/パーカッション ほか)
西田修大(ギター ほか)(7月17日、20日に出演)
中村大史(アコーディオン ほか)

https://ozawa-art.com/concert/1034/