ジャズの世界のみならず、くるり、椎名林檎、米津玄師などジャンルを超えた数々のアーティストのセッションに引っ張りだこのドラマー・石若駿が、自身のバンド〈Answer to Remember〉で約4年ぶりの新作をリリースした。

石若駿が自ら舵をとるリーダープロジェクトとして、角銅真実、西田修大とともにポップスを作り上げる〈Songbook〉シリーズ、マーティ・ホロベック、松丸契、細井徳太郎とのアバンギャルドなジャズバンド〈SMTK〉についで、2019年に始動したこの〈Answer to Remember〉は、盟友ともいうべき同世代のミュージシャン8名を擁し、楽曲によってボーカリストやミュージシャンがフィーチャリングで参加するという大所帯のバンドだ。

「最近色んなアーティストがジャズミュージシャンを求めてて、これから面白くなっていく気がするんだよね」。

石若駿は、数年前からそう言い続けている気がする。

これは数年前なら大学の同級生である常田大希が率いるKing GnuやMILLENNIUM PARADE、あるいは同じく同級生のWONKの活躍を指していたと思う。でも2024年の現在はどうだろう。Answer to Rememberのメンバーを見ても、MELRAWが宇多田ヒカルの作品に参加し、マーティ・ホロベックが崎山蒼志のツアーに参加し、若井優也が椎名林檎のアルバムに参加し、馬場智章が映画「BLUE GIANT」の音楽でサックスを担当する、そんな未来が来てもなお、石若駿は同じことを言っている。

嵐のように周囲を巻き込んでいく石若駿の、最も大所帯のプロジェクトの最新作について、石若駿と共同プロデューサーのMELRAWに話をきいた。

Answer to Remember 『Answer to Remember II』 ユニバーサル(2024)

 

俺たちはやっぱり即興なんだな

――4年半ぶりのアルバムということで、まず石若さんから完成した今の心境と、どんな作品になったかを説明していただけますか?

石若駿「Answer to Remember(以下、アンリメ)の1作目は、本当にどうなるか分からないゼロからのスタートだったんです。

2019年に1作目を出して、2020年の頭ごろにLIQUIDROOMでのライブもやって、その後に世の中がコロナ禍になってしまった。その中でも少しずつライブをしながら、次はどうしようかと考えていました。作曲したものを少しずつスタジオで録りながら、〈1作目からどういう風に変化させようか?〉って考えていたんです。僕としては同じメンバーでライブを重ねるうちに、アンリメがすごくバンドらしくなってきたと思ったので、今回はそれを軸にレコーディングしました。

いざアルバムが完成してみると、結果としてはバンドらしい楽曲たちと、デモから細かく作ってそれを生にしていった曲たちが合わさっているような作品になりましたね」

――〈バンドらしさ〉というと?

石若「前作ではアンリメのことを〈プロジェクト〉って謳っていましたが、それがバンドになっていったんです。やっぱりアンリメのメンバーは僕も含め、ジャズのアプローチというか、その場で起きる即興的なものを生きてる人が多いと思っていて。〈俺たちはやっぱり即興なんだな〉っていう気持ちは、ライブを重ねるごとにより強くなっていったというのはあるかな。

前作からの4年半の間にメンバーそれぞれが色々な知識や技術を蓄えたので、その集大成のようなアルバムにもなったと思います。根底にはやっぱりジャズや即興がありながらも、これまでとはちょっと違う世界に行ったかなって。それは演奏していても、出来上がったものを聴いた時にもそう思いました」

 

バンドらしさが増したアンリメの曲の構築法

――先ほどおっしゃっていた〈バンドらしいものとデモから構築していったもの〉を、それぞれについて具体的にきいてもいいですか?

石若「“ATR Theme”は、毎回ライブで1曲目にやる曲として定着しているんですけど、これは前作に“Answer to Remember”というシンセとかエフェクトだけのオープニングトラックがあって、〈これを生演奏でやったら映えるね〉って言って生まれたバンドバージョンです。その発想からしてバンドっぽいなと思っています。

“札幌沖縄”は、アンリメが初めて新宿PIT INNでライブをやった時に、午前中にみんなでスタジオに入ったんです。そこに〈新曲持ってきたから〉って言って合わせてみて出来た曲ですね。そういう〈新曲持ってきたからみんなでやってみよう〉みたいなリハってアンリメで今までやったことがなかったんですよ。

“SEYA”と“Christmas Song II”もライブでやっている曲です。“KWBR Kuwabara”もライブで一回やって、今度はスタジオで録ろうってなった時に新しいセクションが生まれちゃった。新しいセクションというか、ソロのセクションをライブでやった後の感覚で、元々とは違うアプローチで録りました」

MELRAW「ライブで演奏している曲はバンドっぽさが出たよね。逆に“KIMOCHIS”とかは元々ライブではずっとインストでやってた曲で、何かのライブの時に〈この曲でJuaにフリースタイルラップをしてもらおう〉ってなってやってみたら、結局アルバムに入れる時にはラップの曲になった。だからあの曲はバンドっぽく演奏してたんだけど、逆にレコーディングでは打ち込みが入ってラップが乗って再構築された曲なんですよね」