Page 4 / 5 1ページ目から読む

常田大希やWONKとの共作から学んだ音楽の拡張法

――先ほどMELRAWさんから〈ただのジャズアルバムにしないように〉って話があったんですが、気をつけたのはどんなところですか?

MELRAW「やっぱりフィジカルな部分、つまり演奏面では、このメンバーがスタジオに集まって演奏したら、それはもう素晴らしいものがパッケージングできると思うんです。その先に、僕らの思っているアンリメのサウンド感だったり、〈こういうところが楽しいよね〉っていうのを、演奏内容じゃない部分、ミックスをしたり、エフェクトを使ったり、サンプルを貼ったりとかで、もうちょっと過剰に演出するということですね。

やっぱり今はプレイリスト文化になってきていて、アンリメの楽曲も多分ジャズ以外のジャンルのプレイリストに入ることがあると思っていて。そういう時に単純に音圧で負けないみたいなことはやっぱり大事だと思うんです。良い演奏が録れて、良い感じに自然なバランスにミックスして出すってこと以上の何かが必要だと思った。それは実験的なことも含めてね」

――そういうことを考えるきっかけは何かあったんですか?

MELRAW「それは僕も駿もだけど、関わらせてもらってる色んな現場での経験だと思うんです。それこそジャズじゃない現場もそうだし、常田大希とかWONKのメンバーみたいな周りのミュージシャンもそうだけど、音作りにこだわる人の近くにプレイヤーとしていられたことが大きいと思っていますね。周りに音色とか質感にこだわる人たちが多かったおかげで、〈音楽ってこんなにストレッチできるんだ〉っていうことを僕も知ったんです。良い音で良いプレイを録るっていうことは大前提としてあって、その先のポストプロダクションで音楽が広がるんだなっていうのは、そういう人たちのおかげで知ることができた。

例えばJ・ディラやロバート・グラスパーに通じるような音楽をやってるプレイヤーはたくさんいるんだけど、WONKの荒田洸ほどドラムの音にこだわってそういう音楽をやってる若い世代のミュージシャンは、日本で彼の右に出るものはいないだろうなと思うし。あとはOvallのような先輩バンドもそうだけど、作品にする時にどこまで音像を突き詰めてるかっていうのは、やっぱ間近で見て勉強していないと知ることができない部分があって。

ジャズミュージシャンって生感とか、ライブ感っていうものを大事にしがちだから、そこにほかの現場で学んできた音作りの知識や技術を自分たちの作品に注入したいなと思ってます」

 

録音や編集を前提にした新感覚の演奏

――たしかに、生楽器の演奏が録音されて編集やミックスで様々な処理を経て最終的に作品になる、という経験は、お2人は周りのジャズミュージシャンよりも多いですよね。

石若「ドラムの音に関しては、生で鳴っているものが録音されて処理されていく過程とか、〈こうしたからこうなった〉という因果関係が昔よりは分かるようになって、そこのギャップは縮まってきたかなと思います。自分の出したい音に関してもだんだん分かってきて、それが反映されているアルバムでもあるとは思います。

例えば〈この歪み感はプラグインで作られているのか、それともマイクで作られているのか〉みたいなことはちょっと前までは全然分かっていなくて。今回は自分がこだわってなかった部分、気を配れてなかった部分に気を配れた、という感じです」

――それってフィジカルな演奏にも影響があるんですか?

石若「そうですね。エフェクトを掛けた状態の音を耳に返して(モニタリングして)演奏するのかどうかでも変わりますし、エフェクトを掛けるのは後にしたほうがいいんじゃないかとか、手法の違いとか録り方の違いもだんだん分かるようになりました」

MELRAW「演奏している時に、〈ここは後でエフェクトでこうなるぞ〉って思いながら演奏することもあるよね。僕の場合だったらディレイは掛け録りしないんだけど、ここは後でディレイで飛ばそうと思ってバって吹く、みたいな。そういう完成図が見えているというか、後からどういうことをすればここの隙間が埋まるかな、みたいなことを考えながら演奏することは、以前よりできるようになってきた気がする」

石若「僕からするとMELRAWは昔からそういうことができていたと思うけどね」