2011年に結成されたバンドEmeraldが、実に7年ぶりになるフルアルバム『Neo Oriented』を2024年8月28日にリリースした。〈ナイトアーバンポップス〉を掲げ、R&Bやソウル、ジャズ、AOR、ロック、そしてJ-POPなどを溶け合わせた独自のサウンドとグルーヴで独立独歩の活動を続けてきた彼らは、ここにきて、〈集大成的な作品を作る〉という安直な選択肢ではなく、旺盛な探究心によって前進し続けることを選んだ。
そんな挑戦作『Neo Oriented』について、文筆家つやちゃんがメンバーの藤井智之(ベース)、磯野好孝(ギター)、藤井健司(マニピュレーター)にインタビュー。全体を2つの記事に分けてお届けしよう。前編に続くこの後編では、2010~2020年代における国内シーンの栄枯盛衰や新たなR&Bとジャズの受容過程、それらと新作の関係について語ってもらった。 *Mikiki編集部
オルタナR&Bと現行ジャズ、〈Neo Oriented〉を目指すためのリファレンス
――今作では、コンセプトを〈Neo Oriented〉と設定したとのことでした。とは言え色々な解釈があるわけで、その概念をメンバー間ではどのようにすり合わせしていったのでしょうか。
藤井智之「まずは各々の〈Neo Oriented〉観を、プレイリストを作ってすり合わせしていきました。その時点では、皆のイメージはばらばら。それらを踏まえたうえで、ある程度、僕の方で一つのプレイリストとして集約していった感じです。ムーンチャイルドの“Too Much To Ask”やテーム・インパラの“Borderline”、ジャミーラ・ウッズの“LSD”とかが入っていた」
磯野好孝「昨日ちょうど『オルタナティヴR&Bディスクガイド』を読んでいたんですけど、それで思ったのは、プレイリストでたくさん挙がった曲の中でもいわゆるオルタナティブR&B系を選んだのは藤井兄弟だった。自分はどちらかというとジャズ系のR&Bを選んでて、もちろんそっちも入りつつ、全体的なトーンとしてはオルタナティブR&B系に軸が置かれた感じだと思う。だからうちのバンドの中には、いわば『オルタナティヴR&Bディスクガイド』系と『Jazz The New Chapter』系の2つの系統があるんだなというのが改めて分かったんです」
智之「でも、それもメンバーによるかもね。自分とかは単純に、今回のアルバムは好きなものを作るんでしょ? だったらネオソウルとAORを合体させるんだよね?くらいに捉えてたかもしれない(笑)」
磯野「最終的には、自分たちの好きなものを作ればいいよね、っていう考えはあったよね(笑)」