Love City 2015
[ 特集 ]都市インディーの源流
音楽の聴かれ方、表現の仕方が大きく変化した90年代。その幸福な時代を起点に、多様化する〈街の音楽〉など現在の日本のインディー界隈の源流を紐解いてみよう
NEO SOUL
フォークやジャズ、ブラジル音楽、ヒップホップなど多彩な音楽性と接続することで、滋味深い〈ソウル〉を伝える作品たち。Ovallの3人の参加作品や、シンガー・ソングライターなら関美彦やさかいゆう、ZAZEN BOYSのベーシストのソロ、吉田一郎不可触世界などもここの住人。
ディアンジェロと寺尾聰を折衷したような初作も紹介したかった椎名純平を中心に、竹内朋康と鈴木渉、白根佳尚、SWING-Oという敏腕が揃ったバンドの逸作。邦楽界に依然多い〈アフロでゲロッパなソウル観〉も利用しつつ、“gimme some more”や“to the limit”からはスタイリッシュでクールな出汁が滲む。 *出嶌
tofubeatsやOMSBとのコラボも記憶に新しいG.RINAが本名で残した傑作です。ヒップホップ~R&Bやダブを通過したメランコリックな歌謡表現は実に独創的。『MASHED PIECES #2』(2010年)で以降の架空都市ポップ隆盛に先んじる彼女ですが、ここでは表題曲で都会暮らしの淡々とした日常に寄り添っています。 *出嶌
絶妙なテンションでグルーヴの歩を進める“土曜の夜”で幕を開ける眩しい一作は、同曲のビル・ウィザーズ的なフィーリングからもわかるように、いわゆるネオ・ソウルを通過しないで70年代(=90年代)のムードを現代化したような、街の片隅を照らすサウンドトラック。彼一流のイナたさも愛すべき味わい。 *出嶌
絶妙な湿度の歌世界を描き出すシンガー・ソングライターの2作目は、初作『水』でも見せていたディアンジェロ的なアプローチを深めつつ、佐藤伸治というか清志郎のようにも響くフォーク的な歌唱フロウの独特さで我が道を往く。カニエ以降のモダンさを狙う大谷能生のプロデュースも得た聴き心地は唯一無二。 *出嶌
本作に関する当人たちの発言に挙がっていたのは、ディアンジェロ、ホセ・ジェイムズ、ロバート・グラスパー……そして、キリンジ。なるほど。〈新しいジャズ〉的な意匠を施したアンサンブルと甘いヴォーカルには密やかなムードを増長する浮遊感もあって、ネオ・ソウル経由のフィッシュマンズといった趣も。 *土田
決定的なAOR名作『miss.G』を時代の狭間に残したシンガー・ソングライターの、新録を含むベスト盤。流れていく情景のような“Candy”“モノクローム”における70年代ソウル風の気品、“台風の夜”のメロウなボッサ表現など、美しい曖昧さがグラデーションを描いて揺れる。いまからでも愛されるべき名曲たち。 *出嶌
10年でも、100年でも古びない夏のアルバム! 山下達郎“SPARKLE”をネタ使いした“Smile in your face”で名を馳せた大阪のシンガー/ラッパーが、MUROや須永辰緒、DEV LARGEらの援護も受けて朗々たる晴れやかさをジャケまんまに歌う。浜田省吾“ラストショー”を取り上げていたり、いまなら響き方も違うはず。 *出嶌
デビュー以来、アコギ1本を抱えて各地を旅し続けているシンガー・ソングライター。近年は坂本美雨とのおお雨、チャットモンチーの福岡晃子とのくもゆきなどユニット活動もあるが、ブルース/フォークからはみ出した彼流のオーガニック・ソウルをもっともシンプルに堪能できるのは、本人名義のこの初作。 *土田
NONA REEVESのフロントマンの音楽観に大きな影響を与えたのは、ホワイト・ソウルなど白人によって咀嚼されたソウル音楽。屈強のプレイヤーでもあるノーナの2人が参加しつつも、ライヴでの再現を考慮していない点に醍醐味を置いた初のソロ作は、さしずめドナルド・フェイゲン『The Nightfly』か。 *久保田