The xxのシンガーが心より伝えたいこと、本当の私――ダンス・ミュージックへの愛とポップ・ミュージックの力への信頼を背に、いま彼女は自分自身の愛を祝福する!!
女性同士の愛を表現したかった
今年の〈フジロック〉では、深夜のRED MARQUEEをThe xxのシンガーとして知られるロミーが大いに沸かせる一幕があった。ライヴではなくDJのパフォーマンスだ。セットのなかで彼女の既発のシングル“Enjoy Yourself”や“Strong”がプレイされると、フロアは高揚感で包まれたのだった。このたびリリースされるロミーのソロ名義でのファースト・アルバム『Mid Air』は、そういった過去のシングル曲と同様、歌モノのハウスに寄せたポップなダンス・ミュージックが詰まっているアルバムだ。ソロでのサウンドをクラブ寄りの音にすることは、彼女にとって自然なことだったという。
「ダンス・ミュージックはずっと好きで、17歳のときからDJもしていたからね。これまではそういう一面をあまり見せていなかったからリスナーのみんなには意外だったかもしれないけど、今回ソロ・プロジェクトを始めるにあたって、ダンス・ミュージックに対する情熱や、それが持つ多幸感を探究しようと思ったんだ」。
『Mid Air』はロミー自身やスチュアート・プライスらがプロデュースを務めているが、なかでもサウンド面で大きな役割を果たしたのがフレッド・アゲインの存在だ。
「彼とは5年前くらいに出会ってすぐ〈一緒に曲を書いてみよう〉となったんだけど、やってみたらすごく気が合って、それからずっと共作してるんだよね。以降、2人で他のミュージシャンのための曲をたくさん作ってきたんだけど、“Loveher”を書いたときにフレッドが〈これは誰が歌うための曲なの?〉と訊いてきて、そのとき〈これは自分のための曲だ〉と気付いた。そこから、このソロ・プロジェクトが始まったんだよね。フレッドもすごくサポートしてくれて、スタジオでもとても楽しい時間が過ごせた。友情関係があるということが大事なんだと思う」。
“Loveher”は切ないメロディーを煌めくダンス・サウンドと共存させたクラブ・バンガーであり、レズビアンのラヴソングでもある。この曲がきっかけとなってスタートしたロミーのソロ・プロジェクトは、彼女自身のセクシャリティーやロマンスをパーソナルかつオープンに表現するものになった。
「クラブ・ミュージックはクィアのシーンでもあるんだけど、女性同士の愛を表現する音楽はあまりない気がして、私はそこに興味があったし追求したかった。若いときの自分に聴かせたくて作ったところもあるね」。
“Loveher”だけでなくアルバムには多くのラヴソングが収められているが、その表現方法はThe xxと大きく違っているという。
「The xxではもう少し普遍的な表現をしたいと思っていたし、歌っているオリヴァー(・シム)と私も自分たちのセクシャリティーをプライヴェートなものにしておきたいと考えていた。だから〈I〉や〈You〉、〈We〉や〈They〉を使っていたんだけど、いまは自分のセクシュアリティーをはっきり見える状態にしたいと思って、〈She〉や〈Her〉といった代名詞を意識して使ってる。今回のアルバムでは自分のパーソナルな気持ちを正直に表現したいと思っていて、ステージの上にいる自分と下にいる自分が同じなんだということを理解してもらいたかった。日常生活でも私は〈love her〉という言葉を使ってるし、そういった部分を出したかったんだよね」。