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キング・クリムゾンの影響下にいる多様なバンド達

音楽を聴くにあたってはそれぞれの音を楽しめばよく、歴史を学ぶ必要などない場合も多い。だが、作品を全部聴くといろんなものが見えてきやすくなるアーティスト/バンドは確かに存在する。ビートルズやデヴィッド・ボウイはその最たるものだし、YMOやソニック・ユース、レディオヘッドなども重要だ。キング・クリムゾンも同様で、代表作を聴くだけでも〈あのバンドのあの部分はここから来てたんだ!〉ということがよくわかる。

例えば、ブラック・ミディはクリムゾンからの影響を公言しているが、『Starless And Bible Black』を聴けばアンサンブルの質感にそのまま通ずるものを感じられるだろう。また、同作や『Red』に顕著なフレーズ〜コード感は、ヴォイヴォドのようなスラッシュメタルにも絶大な影響を与え、そのヴォイヴォドが以降のプログレッシブなエクストリームメタルバンド全般の発想源になることで、極めて広い範囲に影を落としてきた。同様に、ザ・デリンジャー・エスケイプ・プランのようなマスコアを筆頭にハードコアパンク方面への影響も大きい。また、『Discipline』期の音楽形式は、ドン・キャバレロなどのマスロックやトゥールのようなバンドにも深く根付いている。

今からキング・クリムゾンを聴くということは、こうした再発見や理解を深める絶好の機会である。そして、そうした探求をするにあたって格好の入り口となるのが『Red』なのだ。ここまでいろいろ込み入った話をしてきたが、冒頭でも述べたように『Red』は圧倒的にわかりやすい。そもそも、キング・クリムゾンというバンド名自体がかっこいいし(漫画「ジョジョの奇妙な冒険」第5部でスタンド名に採用されたのも、そういうかっこよさによるところが大きかったのでは)、『Red』という作品はそうしたかっこよさを理想的な形で示している。〈プログレの歴史的名盤〉のようなポジションに留めておくのはもったいない。まだ聴いたことのない方は、この機会にぜひ聴いてみてほしい。