桁外れのマルチミュージシャン、武田理沙。2024年7月に13公演を開催した初のヨーロッパツアーは大成功を収め、8月に発売した4作目となる新作『パラレルワールド』がハイパーポップ的な先行シングル“狂想・未来・ロマンチカ”を含め評判になっている。「自分が聴きたい音楽を一人で創ることに極限まで向き合った作品」と新作について自ら語る本人に、制作を担当した金野篤が話を訊いた。 *Mikiki編集部
頭の中で鳴っている音を再現した1stアルバム『Pandora』
――まずは、これまでを振り返りましょう。2016年頃、何気なく入った横浜黄金町の試聴室その2で、何だかよくわからないけどすごいピアノが聴こえてきて、吸い込まれるように声掛けたんです。それがフランク・ザッパのカバーだったことは後から知りました。その後、CD 2枚組のアルバム(2018年の1stアルバム『Pandora』)が出来たときは、さらに驚いたわけです。
「2011年に上京して、多くのセッションに参加していきました。バンドで鍵盤を弾くことと並行して2014年くらいから〈自分のソロアルバムを作りたい〉と考えていましたが、その頃はあまり頭の中に具体的なイメージがなく、またDAWソフトの使い方もわからないという理由でなんとなく毎日を過ごしていました。
が、ある日吹っ切れてスタジオに行って思いのままドラムを叩いて録って、それにキーボードの音を重ねて無理やり曲にしてSoundCloudにアップしたのが全ての始まりです。それが“鳴”という曲です」
――とにかく、すごくてよくわからない音楽でした。クラシック音楽が好きなんだろうなとは思いましたが。
「クラシックは子供の時から好きでよく聴いていました。母がクラシックが好きだというのと、3歳からピアノを習っていたのもあり、家に沢山CDが置いてありました。ストラヴィンスキーの“春の祭典”や“火の鳥”、リムスキー=コルサコフの“シェエラザード”、ホルストの“惑星”をよく聴いた記憶があります」
――『Pandora』のような音楽は自然と出て来たのでしょうか?
「1stでクラシックを意識している部分は、“Crsed Destiny -I have opened the Pandora’s box-”以外は特にないと思います。1stは自身の即興演奏、映像から受けたイメージ、頭の中で鳴っている音像を再現することから構成されています」
――制作期間が長かったと思いますが、この曲はここで終わり、という筆を止めるタイミングは、どういったところでしょうか?
「その曲のテーマとなる部分(サビ)のポテンシャル、またはそのサビの部分からさらにどれだけイメージが膨らむかが曲の長さに関係しているかもしれません。制作期間は2年ほどで、実は『パラレルワールド』の方が時間かかっています」