ポップスターの系譜
2023年にライアン・テダー(ワンリパブリック)のプロデュースで発表された同曲は本国カナダでNo.1を獲得し、初めて全米3位を記録。00年代のティンバランドやポロウ・ダ・ドンらを連想させるサウンドメイクはテダーの出自を考えれば興味深いところだが、そのまま彼が総監督する形で完成したのがセカンド・アルバム『THINK LATER』だ。ブリトニー・スピアーズやクリスティーナ・アギレラら、歌って踊ってメインストリームに君臨する、ある種の伝統的なポップスターに憧れてきたという彼女の持ち味は初作の印象を綺麗に塗り替え、全米4位/全英5位という好成績を記録している。
そのように己のクリエイティヴな自我を完全に確立したうえで届けられたのが今回の3作目『So Close To What』だ。引き続きライアン・テダーが総監修も担い、エイミー・アレンら共作者も前作を踏襲。ただ、その方向性は前作以上に明確で、重心の低いクランク風のビートがかっこいい先行カットの“Sports car”(囁くような唱法はイン・ヤン・ツインズを参考にしたそう!)や“It’s ok I’m ok”、テダーとロストボーイが共作したメロディアスなブリトニー風の“2 hands”といった先行曲はもちろん、ラップ調の歌唱も相まってデビュー時のシアラのようにブーミンに響く冒頭の“Miss possessive”、スナップ・ビートの“Dear god”、幻想的にジャージークラブが走る“Revolving door”など、テダー組の仕事はどれも的確だ。上記の面々も含め、ティンバランドと組んだカナダの先達ネリー・ファータド、あるいはリアーナやジャネットのような名前も浮かぶサウンドは、いわゆる記号的なY2K感とはまた違う2003〜2007年頃のクールな雰囲気。実感を伴った形で彼女らの系譜を受け継ぐ最新の存在がテイト・マクレーなのだ。
他にも名匠エミール・ヘイニーによる情念に満ちた“Purple lace bra”やアコギで披露される“Nostalgia”などの姿もあり、初期に見せてきたナイーヴな感性が内面に偽りなく息づいていることもよくわかる。いずれにせよ、葛藤を乗り越えてまた一歩上昇したテイトの魅力をいまから知ってもまだまだ遅くはない。
参加プロデューサーの作品を紹介。
左から、ライアン・テダーが在籍するワンリパブリックの2024年作『Artificial Paradise』、エミール・ヘイニーの2015年作『We Fall』(共にInterscope)
文中に登場するアーティストの作品を紹介。
左から、ブリトニー・スピアーズの2003年作『In The Zone』、シアラの2004年作『Goodies』(共にJive)、ネリー・ファタードの2006年作『Loose』(Geffen)