進むべき道
そう、『RUSHMERE』はマムフォード&サンズがフォーク回帰を宣言したアルバムとなった。マーカス・ドラヴスをはじめ、英国人のプロデューサーとレコーディングしてきた彼らが今回組んだのはアメリカ人のデイヴ・コブ。カントリーやオーセンティックなアメリカン・ロック・サウンドを得意として、ブランディ・カーライル、ライヴァル・サンズ、ジェイソン・イズベル、クリス・ステイプルトンらを手掛けてきたプロデューサーだ。
もっとも、そこまでアメリカンと言うか、乾いたサウンドになっているわけではないけれど、カントリーともロックンロールとも言えるウェストコースト・ロック風の“Carolina”や60年代のブルース・ロックを思わせる“Truth”は、コブによるサジェスチョンも大きかったんじゃないかと想像する。
また、ピアノ・バラードの“Where It Belongs”をはじめとするバラードも粒揃いだ。なかでも、シンセをアンビエントに鳴らしながらリヴァービーな音像を作り上げた“Anchor”は、前述した試行錯誤が今回のフォーク回帰と見事な化学反応を起こしたひとつの成果と言ってもいい。また、メランコリックなフォーク・ナンバー“Blood On The Page”は、人気上昇中のシンガー・ソングライター/ギタリストであるマディソン・カニンガムとのデュエットが話題になっている。
全曲通して、メンバー全員で歌声を重ねるハーモニー・ワークも大きな聴きどころであることは言うまでもないだろう。そして、アルバムは60sっぽいと思わせ、歪んだギターが鳴るフォーク・ロック・ナンバー“Carry On”でエンディングを迎える。ここで歌われている、どれだけ非難されても進み続けようという決意は、新たに進むべき道を見据えたマムフォード&サンズによるステートメントに聴こえるのだった。
マムフォード&サンズの近作。
左から、2020年のライヴ盤『Delta Tour EP』、ファレル・ウィリアムズとコラボした2024年のシングル“Good People”(共にGlassnote/Island)
マーカス・マムフォードの参加作品を一部紹介。
左から、テイラー・スウィフトの2020年作『Evermore』(Republic)、デイジー・ジョーンズ&ザ・シックスの2022年作『Aurora』(Warner)、ジョニ・ミッチェルの2023年のライヴ盤『Joni Mitchell At Newport』(Rhino)、ルシウスの2024年作『Wildewoman [The New Recordings]』(Fantasy)
『RUSHMERE』に客演したマディソン・カニンガムの2022年作『Revealer』(Verve Forecast)