©James Marcus Haney

ブームの余波とキャリア最長のブランクを乗り越えて、懐かしくも新鮮なあの音が帰ってきた! 原点回帰だけでは終わらない感動をつれて、3人はふたたび前へ進みはじめる……

もう一度、魂が動き出す

 〈I feel a spirit move in me again(僕の中でもう一度、魂が動き出すのを感じるんだ)〉――最新作となる通算5枚目のアルバム『Rushmere』の1曲目に置いた“Malibu”で、そんなふうに高らかに歌いながら、マムフォード&サンズが帰ってきた。もっとも彼らは解散したわけでもないし、活動休止していたわけでもないから、帰ってきたという言葉を使うのはちょっと違うのかもしれない。

MUMFORD & SONS 『Rushmere』 ユニバーサル(2025)

 しかし、前作の『Delta』(2018年)から『Rushmere』のリリースまでの約7年というインターヴァルはマムフォード&サンズ史上最長であるし、その約7年の間に彼らのサウンドを特徴づけたバンジョーを奏でるウィンストン・マーシャルがバンドを去ったり、フロントマンであるマーカス・マムフォードがソロ・アルバムをリリースしたりしていたことを考えると、結成から10余年を経て、バンドの求心力は、やはりバンドを始めた頃に比べて弱まっていたようにも思う。

 加えて言えば、『Delta』とその前の『Wilder Mind』(2015年)におけるサウンドの変化を考えると、世界中に鮮烈な印象を与えたマムフォード&サンズにはもう会えないんじゃないかと悲観的になっていたリスナーも少なくなかったんじゃないか。そんなふうに想像するのは、筆者もその一人だったからだ。

 だから、あえて帰ってきたという言葉を使ったのだが、『Rushmere』のどんなところがそう思わせるのか、早速聴いていきたいと思う。とはいえ、何と言っても7年ぶりのリリースだ。もしかしたら今回初めてマムフォード&サンズを知るという読者もいるかもしれないから、まずはマムフォード&サンズがどんなバンドなのか今一度振り返っておきたい。