この二人は僕らを決して裏切らない! 待望の新作が完成!

 いまや4万人のスタジアムでツアーを締め括る屈指の人気バンドである(その時の演奏は2024年発表の『Live From Wrigley Field』で聴くことができる)。2005年にウェスリー・シュルツ(ヴォーカル/ギター)とジェレマイア・フレイテス(ドラムス/ピアノ)が活動を始めた時は将来のビジョンどころかバンドの名前すら決まっていなかったという。そんな彼ら――ルミニアーズに転機が訪れたのは2010年にブルックリンから家賃の安いコロラド州デンヴァーに拠点を移してからだった。報われない一途な愛を歌った歌詞に加え、当時のトレンドだったフォーク・リヴァイヴァルなサウンドが歓迎されたのだろう。“Ho Hey”のバイラルヒットをきっかけに上昇気流に乗った彼らが2012年にリリースしたセルフ・タイトルのファースト・アルバムはいきなり全米2位の大ヒットになった。続く『Cleopatra』(2016年)は全米/全英1位を記録。2019年の『III』も全米2位となって、彼らの不動の人気を印象づけた。

THE LUMINEERS 『Automatic』 Dualtone(2025)

 その人気の理由は、タフな人生に寄り添うアンセムとバラード、虚飾を廃したサウンドなど、いくつか考えられるが、もしかしたらいちばんはファンの期待を決して裏切らない不変の音楽性かもしれない。3年ぶりのリリースとなる5作目『Automatic』はこれまで以上に音数が削ぎ落とされ、〈ルミニアーズ節〉なんて言ってみたい不変の音楽性がさらに剥き出しになった印象だ。レコーディングには1か月かからなかったそうだ。アップビートでエモーショナルな“Same Old Song”、ニヒリスティックなピアノ・バラードの“Automatic”――リード曲の2曲もさることながら、“Ativan”のうっすらと纏うように鳴らしたサイケデリックな音像がさりげなく新境地をアピールしているところが心憎い。

ルミニアーズの作品。
左から、2012年作『The Lumineers』、2016年作『Cleopatra』、2019年作『III』、2022年作『Brightside』(すべてDualtone)