東海岸ヒップホップへの意識とラップスキルの証明
そんな中、異彩を放っているのが“COCAINE NOSE”だ。ここではアシャンティが2004年にリリースしたシングル“Only U”をサンプリング。唸りを上げるギターに極太ベースとトラップマナーのドラムを合わせたビートに、シャウト気味の発声でラップを乗せたラップロック系の一曲となっている。元ネタを手掛けたのは先日惜しくもこの世を去ったアーヴ・ゴッティで、これはプレイボーイ・カーティなりの追悼なのかもしれない。さらにリリックでは〈これがオピウムだ、ジェイ(・Z)とデイム(デイモン・ダッシュ)のように動く〉とロッカフェラに見立てるなど、サウス文脈が色濃い本作の中では妙にニューヨークへの意識が見える。
しかし、思えばプレイボーイ・カーティはアトランタ出身だが、かなり東海岸ヒップホップへの愛情が強いラッパーである。ニューヨークに拠点を移していた時期もあり、所属レーベルもエイサップ・モブのAWGEだ。前作収録の“Stop Breathing”ではMFドゥームの名前も出している。一見サウスど真ん中のように見える本作もかなり東海岸ヒップホップ文脈が含まれており、フィリーのリル・ウージー・ヴァートやワーキング・オン・ダイングの面々を筆頭に、ジョニー・ジュリアーノ、マーリー・ロー、キャッシュ・コベインら東海岸勢が多数参加。“PHILLY”と題した曲まである。そんな東海岸勢と共に作り上げた作品なのに、鳴っている音はあくまでもサウスっぽい。ここにプレイボーイ・カーティのエイサップ・モブ周辺ラッパーらしさがある。
また、Dos Monosの没 a.k.a NGSが本作を〈カーティの新作はガチラッパーとして認められたいという飢えに尽きる気がする〉と評していたように、ラッパーとしてのスキルをアピールするような姿勢も目立つ。トレードマークのアドリブが以前と比べてかなり減少しており、現行シーンの頂点の一人であるケンドリック・ラマーを3曲で迎えていることもその表れだろう。
プレイボーイ・カーティは2023年、ドイツのメディア「Numéro Berlin」のインタビューで新作アルバムについて聞かれて「自分にとってとても大切なものなんだ。証明するべきことがあると感じているから」と話していたが、それはラッパーとしてのスキルのことだったのではないだろうか。本作はミックステープっぽいムードでラッパーとしてのスキルをアピールし、サウスやエイサップ・モブなど自身を取り巻く環境を反映した王道のヒップホップ作品なのだ。
RELEASE INFORMATION
リリース日:2025年3月14日(金)
TRACKLIST
1. POP OUT
2. CRUSH
3. K POP
4. EVIL J0RDAN
5. MOJO JOJO
6. PHILLY
7. RADAR
8. RATHER LIE
9. FINE SHIT
10. BACKD00R
11. TOXIC
12. MUNYUN
13. CRANK
14. CHARGE DEM HOES A FEE
15. GOOD CREDIT
16. I SEEEEEE YOU BABY BOI
17. WAKE UP F1LTHY
18. JUMPIN
19. TRIM
20. COCAINE NOSE
21. WE NEED ALL DA VIBES
22. OLYMPIAN
23. OPM BABI
24. TWIN TRIM
25. LIKE WEEZY
26. DIS 1 GOT IT
27. WALK
28. HBA
29. OVERLY
30. SOUTH ATLANTA BABY
