FUTURE, METRO BOOMIN 『WE STILL DON’T TRUST YOU』 Wilburn Holding Co./Boominati/Republic/Epic(2024)

Too Many Nights
思わぬ形で今年最大クラスの大熱狂を引き起こすこととなった、フューチャーとメトロ・ブーミンの最強タッグ作品。あれこれが流れゆく日々にあって、『WE DON’T TRUST YOU』と『WE STILL DON’T TRUST YOU』にそれ以上の意味はあるのだろうか?

 トピック的にはすっかり“Like That”におけるケンドリック・ラマーの振る舞い(など)に耳目が集中する格好となったものの、同曲を収めた『WE DON’T TRUST YOU』と続編の『WE STILL DON’T TRUST YOU』がやっとフィジカル化! 諸々の大変そうな状況についてはアイコン主義とカリスマ賛美を好む勢の無様な市場調査に任せるとして、当然ながら主役のフューチャーとメトロ・ブーミンにも改めて注目しておきたいものである。そうでもない? まあ、しっくりきすぎて特に驚きもないコンビネーションなのは確かだが、彼らのキャリアをある程度追ってきた人なら、両者の再会には少なからず感じるものがあるはずだ。

 説明不要のフューチャーは、メジャー・デビュー作『Pluto』(2012年)ですぐに成功を収め、特に3作目『DS2』(2015年)から最新作『I Never Liked You』(2022年)までオリジナル・アルバムが7作連続で全米1位に達している当代きっての売れっ子ラッパーの一人。一方、彼より10歳下のメトロ・ブーミンは、フューチャー率いるフリーバンズ所属だった時期を経てミーゴス“Bad And Boujee”(2016年)などの制作で名を馳せ、自己名義作『NOT ALL HEROES WEAR CAPES』(2018年)と『HEROES & VILLAINS』(2022年)がいずれも全米1位を獲得しているセントルイス出身のプロデューサーだ。メトロの独立後は手合わせの機会も激減したものの、彼の手によるフューチャー曲といえばやはり“Mask Off”(2017年)という最大の成果があり、もちろん“Karate Chop”や“Wicked”、ドレイクを交えた“Jumpoff”など印象的なヒットが多く、トップ同士のタッグという以前に、いわば互いが互いのキャリア構築に大きく貢献し合った盟友にあたる。そんな彼らがオートチューン歌唱やマンブル、トラップの一般化に寄与してこの10年のモード/ムードをセットしてきたコンビでもあるのは言うまでもない。

 そこにきて今回のタッグ作品2連発である。『WE DON’T TRUST YOU』のほうはトラヴィス・スコットとプレイボーイ・カーティを招いた“Type Shit”をはじめ、同じくトラヴィスとの“Cinderella”、ウィークエンドとの“Young Metro”、リック・ロスとの“Everyday Hustle”も収録。モブ・ディープ“Quiet Storm”を用いた“Seen It All”のように全体的に冷たい空気が漂っていて、一定のクオリティで金太郎飴を量産しまくる異様な心地良さには抵抗できない。

 で、続編『WE STILL DON’T TRUST YOU』のほうを強引に特徴づければ、メロディアスな歌心がより前に出された楽曲集という感じ。ブラウンストーン“If You Love Me”を伸ばして敷いた“Luv Bad Bitches”、ボーイズIIメン“End Of The Road”を歌い込む“Right 4 You”、90sアイズレーの様式を象徴する“Let’s Lay Together”を用いた“All To Myself”などフューチャーの世代感が出たベタな90年代ネタが目立っているのもおもしろい。もちろん、そんな区分けなど考えずにどっちも流し聴きしてダラダラ楽しむのが受け手の距離感としてはいい感じであります。