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まるでホスト? オタク文化の深部に踏み込むユニット

ボカロP的な作風からは少し離れるが、最後はこんな変わり種を紹介しよう。韓国人コメディアンのキム・ギョンウクが演じる〈日本の歌舞伎町出身のホスト〉という設定の人気コントキャラクターTanakaが、BTSのバックダンサーも務めたことがある実力派ダンサーでTikTokerのneedmorecashと組んだユニットであるASMRZだ。

日本で言えば、チョコレートプラネットが演じるコントキャラクターが、SNSでバズって音楽もリリースするような感覚だろうか? 執事がテーマのコンカフェや女性向けゲームのパロディのような世界観と、Pluggnb(ヒップホップにおけるトラップの派生ジャンルPluggとR&Bが合わさったもの)テイストのトラックに、ASMR風に歌われる(語られる?)日本語のセリフ。〈ポケモン・ジブリ・ONE PIECE〉といった典型的なイメージよりも一歩踏み込み、現代の日本のオタク文化の実像(コンカフェ、女性向けコンテンツ、ASMR)に近づいているにもかかわらず、そこはかとなく漂う、このズレた味わい。そして、それがまた、コントキャラクターとしての魅力を際立たせているだろう。

 

K-POP × J-POP、予測不能でユーモラスなキメラ

ドラマチックなコード進行や繊細なメロディ、そしてファン目線のマニアックなギミックなど、ネットネイティブな時代のJ-POPの特徴を巧みに取り入れたK-POPの一部を、駆け足で紹介した。

互いが影響し合い、コピーとコピーが混じり合う中で、思いがけず誕生するキメラ的な存在。そんな偶発の重なりこそが、ポップカルチャーのダイナミズムと言えるだろう。K-POPからJ-POP、J-POPからK-POPと、異なる文化的背景を持ちながらも、気まぐれに入り交じる二つの潮流は、単なる模倣やトレンドの受け渡しにとどまらず、予測不能な美学とユーモアが感じられる。今後、この交差点から、更にユニークで新しい価値観やスタイルが生まれてくるのかも知れない。