“Ladbroke Grove”でのブレイクから数年が経ち、多くのラッパーが現れては消えているような状況のなかで、AJはその威信を高い水準でキープし続けている。セカンド・アルバム『Flu Game』(2021年)からはポップなシングル・ヒットがおもしろいように生まれたが、ジョルジャ・スミスをフィーチャーした“Crush”にそこまでの明快さはないにしてもこのサード・アルバムへの期待が薄まるものではない。不穏でバウンシーな音世界をコントロールするディープなマイク捌きのかっこよさは何者にも変えがたい。トランシーなセルフ・プロデュースの“Jeff Hardy”など今回もトラックの粒が揃った佳作だ。