田中亮太「Mikiki編集部の田中と天野が、海外シーンで発表された楽曲から必聴の楽曲を紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。今週はビッグなアーティストの新作がリリース間近?ということが話題になりましたね。リアム・ギャラガー……ではなくて、アデルです!」
天野龍太郎「世界各地に〈30〉と書かれたビルボードが登場して、これがアデルの新作『30』の宣伝ではないかと言われているんですよね。2015年の『25』以降アデルはアルバムをリリースしていないので、ひさしぶりの新作として話題作になることはまちがいありません」
田中「それ以外では、2022年2月13日(日)に開催されるスーパーボウルのハーフタイムショーの出演アーティストが発表になって、かなり注目を集めていました。出演するのは、エミネム、ドクター・ドレー、スヌープ・ドッグ、メアリー・J・ブライジ、ケンドリック・ラマーの5人。これは相当いかつい面々ですね!」
天野「ものすごくパワフルなステージになりそうですし、〈全員必見〉レベルの話題になるでしょうね。なんといっても、表舞台から姿を消しているケンドリックの出演が楽しみです。それでは、今週のプレイリストと〈Song Of The Week〉から!」
Wet Leg “Wet Dream”
Song Of The Week
天野「〈SOTW〉はウェット・レッグのニューシングル“Wet Dream”です。ウェット・レッグは6月にリリースした“Chaise Longue”がドミノからのデビューシングルで、この“Wet Dream”が2曲目という超新人バンドなのですが、イギー・ポップやパラモアのヘイリー・ウィリアムズが絶賛するなど、〈ヤバい新人〉として注目されています」
田中「英ワイト島出身のインディーロックバンドで、メンバーはリアン・ティーズデイル(Rhian Teasdale)とへスター・チャンバース(Hester Chambers)の2人。えも言われぬユーモアとポップなメロディー、優れたファッションセンス、初期のストロークスのようにミニマルだけど親しみやすいインディーサウンドなどなど、魅力がたっぷりのデュオですね。“Chaise Longue”は〈今年イチのデビューシングル〉と評判です」
天野「彼女たちが作るミュージックビデオもすごくいいんですよね。特に今回の“Wet Dream”は笑えるので必見。あとは、やっぱり歌詞がいい。〈あなたは言った/『ベイビー、僕と一緒に家に来ない?/『バッファロー’66』のDVDを手に入れたんだ』〉というキザなセリフのラインが印象的ですが、元恋人についての別れの歌なんだとか。ライブ映像を観る限りUKではすでにかなり盛り上がっているようですし、とにかくウェット・レッグは注目のバンドだと思います!」
Mahalia feat. AJ Tracey “Roadside”
田中「今週の2曲目は、マヘリアの新曲“Roadside”。マヘリアはレスター出身のシンガーです。2019年にはBBCの〈Sound of 2019〉の候補に選ばれていて、これまでに2作のアルバムをリリース。2019年には〈SUMMER SONIC〉に出演していましたね。客演も多く、なかでも最近はパ・サリュの名曲“Energy”(2020年)への参加が印象に残っています」
天野「彼女の歌声って凛としているんですけど、柔らかい情感をたたえているのが魅力なんですよね。この“Roadside”はハートブレイクソングで、〈あなたは私を置き去りにした/道端に置き去りにした〉というコーラスがめちゃくちゃ切ないけど、捨てられた恋人に対してどこか攻撃的なのもいい(笑)。さらに、イギリスのプロデューサーデュオ、エレメンツ(The Elements)によるアフロビーツサウンドが抒情性を醸しています。リズムは典型的なソンクラーベのリズムにアフロビーツのニュアンスを加えた感じで、とてもスムーズで心地よいですね」
田中「フィーチャーされているAJ・トレイシーはロンドン出身、グライムの代表的なMCですが、彼のラップもうまくハマっています。AJ・トレイシーの2019年作『AJ Tracey』はカリブサウンドやアフロビーツに接近した内容だったので、この手のサウンドはお手のもの、と言ったところでしょうか。マヘリアはサードアルバムのリリースも遠くないと噂されています。楽しみですね」